第81話 花見(2)
お花見当日。
AM10:00に、現地集合ということだったが、俺たち4人が別荘に着いたときには、もうみんな来ていた。
(あれ? みんな早すぎ。)
俺たちは、会場の設営のために、早めにやって来たのだけど……
すでに、ミカ様たちは、集合していたのだ。
おそらくは、ミカ様たちも同じ考えだったみたいだけど…。
それと同じく、「お花見」が待ち遠しかったのだろう。
俺は、ジーク様たちに、丁寧に挨拶をした。
とくに、第1部隊隊長のドゥーハンさんとは、初対面だったので、くれぐれも粗相のないように、がんばった。
なんてったって、ドゥーハン隊長は、師匠とマブダチらしいからね。
俺たちに、粗相があっては、ならないのだ。
「はじめまして。ホークです。よろしくおねがいします!」
俺は、元気よく挨拶する。
背筋を伸ばして、ピシッと軍人っぽく。
(いや、ほんとの軍人だけど…。)
「ホーク…康介殿の秘蔵っ子よ。なかなかいいツラ構えをしているな。よろしく!」
そう言って、ドゥーハン隊長から、にこやかに「バンバン」と、背中を叩かれた。
(だから、痛いって!…もう、慣れたけど…。)
「よろしくおねがいします!!」
俺は、ドゥーハン隊長に、一礼した。
「がんばれ。なにかあったら、ワシも協力しよう!」
ドゥーハン隊長は、ニッコリ微笑んでくれた。
この人も、器が大きかった。
「ありがとうございます!」
もう1度、一礼した。
このあたりの体育会系の風習は、どの世界でも、同じだった。
俺たちは、ドゥーハン隊長に、認められたようだ。
…というよりも、俺たちの部隊に、興味津々みたいだ。
そのあと、色々と聞かれたが、実際にまだ始まったばかりなので、
「出来てからのお楽しみに…。」
と、またぞろ どこかの悪代官に仕える時代劇のように、あやしく答える。
「ふふふ…。 そうか。」
と、ドゥーハン隊長も、ニヤけていた。
察してくれたみたいです。
その後、簡単に賢司とマウアーを紹介した。
このふたり…完全に固まっていた。
そりゃ、そうだ。
目の前には、伝説の人たちと、この国の軍のトップの人たち……
おまけに、お姫さままで。
どちらかというと、マウアーの方が、ダメージが大きそうだ。
まぁ、このふたりは、ほっとくとしよう……
いやいや。ダメだ!
俺たちが、いちばん下っ端なので、働くぞ!
社会とは、キビしいのだ!
お花見は、俺たち新人の仕事なのだ!
(始まってしまえば、あとは、無礼講だけど…ね。)
…ということで、会場のセッティングである。
この見事な日本庭園の入り口近くにある、
これまた見事な桜のまわりが、メイン会場だ!
その咲き誇る桜は、キレイだった。
満開だった。
全開だった。
ピンクの花びらを全身に飾り付けた桜の木に…俺は……しばらく見とれていた。
「ほんと、キレイですね~。」
その澄んだ声に、振り向いたら……
フォウさんがいた。
(ああ~。なるほど……)
この人は、サクラの妖精だな……。
ふわふわした雰囲気が、とてもマッチしています。
フォウさんの今日のコーディネートは、まさに「桜」。
うすいピンクのふわふわしたワンピースに、白いカーディガンが、とてもかわいいです。
…こちらにも、見とれてしまった。
「お久しぶりです。腕相撲大会以来ですね。お元気そうでよかったです。」
俺は、きちんと一礼した。
「元気ですよ~。でも、あれから一度も誘ってくれませんね!」
なぜかフォウさんは、ホホを膨らませていた。
(あれ? なんか怒ってる?)
俺は、少し焦って、思考回路をフル回転させた。
(…誘ってくれませんね……たしか……)
……たしか…ちょこちょこ遊びに来てください…………
とか、言った記憶があるかも?
…かも……。
「すみません。ほんと忙しくって…。隊長になったばかりで…まだ慣れなくて…ほんとごめんなさい。」
素直に謝った。
謝りまくった。
謝ってすむものならば、何度でも!
「そうですよね~。ごめんなさい。私こそ、わがまま言って…でも、今日 誘っていただいて、とってもうれしいわ。」
コロコロ笑うフォウさん。
機嫌は、なおったみたいだ。
…よかった。
ほんとよかったです。
「でも、ほんとこの桜は、キレイですね。」
「はい。毎年咲くけど、ここ最近でも、いちばんキレイかも~。」
フォウさんも、満開の桜に、感激しているようす。
(そうなんだ。サクラもうれしいのだろう。みんなに、見てもらえて……。)
ふと…田舎の桜を思い出す俺だった。
糸島の桜は、キレイだった。
有名なところでは、「笹山公園」があった。
そんなに広い公園じゃなかったけど、小高い丘の上に、一面の桜があった。
とてもキレイだった。
やはり、キレイなので、人も多かったけど…。
俺の住んでいたところは、深江というところで、糸島でも端っこの方だった。
だから、近所の桜で、よくお花見をしていた。
「一貴山川」という小さな川の土手に、桜の木が、2~30本ほどあった。
そこが、ウチの家族が好きな場所だった。
お弁当を持って、みんなで食べた。
桜の木の下で、みんなで笑いながら……。
そんな幸せだったころを…ふと、思い出していた。
(…でも、今も幸せだな。)
仲間と呼べるやつらもできたし、師匠もいる。
ミカ様たち、尊敬できる人たちもいる。
そして…この人が……
女神様がいるのだ。
俺は、今の現状に感謝したい!
そして、今……この桜を見上げる。
物陰から、ホークとフォウを見つめるふたり……賢司とマウアー。
「ねぇねぇ。もしかして…先輩って、フォウ様にホの字?」
「ホの字って……。いや、どうだろう? たしか先輩は、フォウ様に助けられたって言っていたから、恩人でしょう。それは、ないんじゃない? 相手は、お姫さまだし。」
賢司は、思う…。
先輩って、超マジメだし、戦闘オタクだから 絶対に、恋愛とか興味ないだろうね。
それ以前に、鈍感そうだし…。
少し前に、聞いたときに、
「俺は、モテたことがない。チョコも妹からしか、もらったことがない!」
と、言っていたな…。
一見、モテそうだけど…先輩は、男ウケするタイプだろうね。
本人も、「女の子は、苦手だ!」と、言っているし。
そんなところが、賢司には、共感できることだった。
賢司も、女の子が超苦手だったからだ。
「そっかぁ~。そうよね! あの朴念仁の先輩だもんね~。」
急に、ニコニコするマウアーに…賢司は、
(朴念仁って……先輩に知られたらイジメられるぞ!)
と、心の中でツッコむ。
まぁ、自分もだけど……。
「じゃあ、マウアーさん。さっさと準備しましょう。」
と、切り替えて、お花見の用意を始めるふたりだった。
うんうん。
賢司とマウアーも、いいコンビになりましたね~。
朴念仁って……。
まぁ、いいけど…
ホークに、バレないようにね。
ところで、糸島の桜と福岡の桜って、ちょっと時期がズレるんですよ~。
福岡の方が少し早いかな?
福岡でお花見して、翌週は、糸島でお花見することができるんですよ~。
ちょっと、ぜいたく!
福岡では、やっぱり舞鶴公園とか西公園が有名かなぁ~?
ああ~春が待ち遠しいですね。
さて、次回は、始まります!
お花見が!
みなさん楽しんでねぇ~。
では、お楽しみに。




