第80話 花見
マジで、力尽きた~!
俺は、訓練場にたどり着くと、芝生の上に、「大の字」で、寝転がった。
呼吸を整える。
「スゥスゥ……ハァ~~」
いい風を感じる。
まだ、少し冷たいが、その冷たさが、心地いい。
すっかり春だ。
(…気持ちいいな……。)
そうしていると、賢司とマウアーが追いついてきた。
ふたりも、たどり着くと、芝生に倒れ込んだ。
「ハァハァハァ…………」
訓練をはじめて、1ヶ月。
こいつらも、だいぶマトモになってきたようだ。
(よしよし。)
仕上げのストレッチは、入念に!
「だいぶ、おまえたちも、スタミナがついてきたな。」
「ありがとうございます。でも、まだまだです。 せめて、先輩の背中が見えるくらいには、ならないと…ですね。」
「そうだな! まだまだだ! せめて、先輩のおしりに、タッチできるくらいに、ならないとな!」
相変わらずのバカだった。
まぁ、たしかに、訓練のあとに、このくらいのクチが、きけるようになったのだから。
はじめこそ、話す気力もなく、ダウンしていたからね。
今は、なんとか、ついてきている。
こいつらも、成長しているのだ。
……しかし。
「たわけ! 俺のプリチーなお尻に、タッチしようなんざ、100万年はやい!」
しっかりと、ツッコミは、入れておく。
「すっかり、春だなぁ~。」(ホ)
「そうですね。だいぶ暖かくなりましたね~。」(賢)
「春と言えば、花見だよな?」(ホ)
「…? 花見って、なんだ? 花を見て楽しいのか? 先輩は、乙女チックだなぁ~。」(マ)
「アホか! その花見じゃない! …って、マウアーは、花見を知らないのか?」
「知っているとも! 花ビラでするアレだろ?」
「アホか! それは、花占いだろ! 俺が言っているのは、お祭りの花見だ!」
「なに? 花を見るお祭りがあるのか? なにが楽しいんだ?」
キョトンとした顔のマウアー。
マジで、知らないらしい……。
「いや…花は、みるんだけど…ほんとの目的は、宴会だよ。 桜の木の下で…ああ~今年も、キレイに咲いたね!って、みんなで祝うのさ。」
「ふぅ……ん。先輩たちって、変わっているね。」
「おまえに、言われたくない!」(ホ)
「そうそう。日本人だけですよね~お花見ってやつ。 …そういえば、この世界にも、桜ってあるんですか?」
「ふふふ。一カ所だけ、知っている。段取りは、俺の方でやろう。」
「わぁ~い! やったぁ~! 宴会だ! まかせたぞ!先輩。」
はしゃぐマウアー。
「さすが先輩です。おまかせします。」
賢司も、どこかうれしそう。
「まかせろ!」
「師匠。お花見しましょう!」
「なんじゃ、突然?」
「いや。春だし…桜もキレイに咲いているかなぁ~?って。 あいつら、花見したことがない…って言うし。」
「そうじゃなぁ~。 あそこには、桜があったなぁ~。 ワシも久しくやっておらんなぁ~。 ふふふ…いい機会じゃな。」
師匠も、やる気になっている。
「それじゃあ~久しぶりに、やりますか?」
俺は、「クイッ」と、酒を飲む真似をする。
師匠は、ニヤリと笑い、
「ワシから、ミカ様に言っておこう。」
「よろしくおねがいします。」
ここのところ、ずっと訓練ばかりだったし、あいつらも、いい息抜きになるだろう。
そして…なぜだか……大事になっていた。
俺が「お花見しよう!」と言った。
たしかに言ったが……。
時系列で、みてみよう。
「賢司とマウアーに、お花見しよう!と、提案した俺。」
→ 「そして、橘さんに、お花見しましょう!と、声をかけた。」
→ 「橘さんが、オッケーして、ミカ様に別荘の使用許可をとった。」
→ 「ミカ様も、参加する!と、言った。」
→ 「ジーク様も、行くぞ!と。」
→ 「ミカ様から、お花見のことを聞いたフォウさんも、絶対に参加する!と、言い出した。」
→ 「ならば、護衛隊長のドレンさんも、参加しよう!と、言った。」
→ 「……で、現在。」
…という、経緯である。
少しウカツだった。
こうなることは、予測できたのに……。
まぁ、いいだろう。
お花見は、大勢の方が、盛り上がる!と、いうものだ。
なので、メンツは……
ジーク様、ミカ様、執事のカイトさん、護衛隊長のドゥーハン隊長と、新副隊長のレベッカさん。
そして、フォウさん、護衛隊長のドレンさんと、シルビアさん。
それから、言いだしっぺの俺たち4人。
計12名での「お花見」であった。
いや~。
そうですか~。
マウアーは、お花見を知らなかったのか~
まぁ、仕方ないですね。
異星界だし。
でも、なんか大規模になってしまいましたね。
ちょっと、ホークも驚きました。
だってねぇ……
前王様とか、初対面のドゥーハン隊長とか。
緊張する、ホークとマウアー。
意外と、賢司は、平気みたいです。
まぁ…「王様」…と、言われても、「ふぅ~ん。」という感じでしょうね。
今の日本人としては…。
まぁ、さておき「お花見」の始まりです。
キレイに咲いていると、いいですね~。
どんなお弁当なのかも、楽しみです。
さて、次回は、ホークたち…新人さんのお仕事です。
では、お楽しみに。




