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覚醒!

フォウさんの話しは、概ね理解した。

俺がどうしたいかは、断言できないけど…少なくとも、フォウさんたちと敵対することは、ない!とは、言いきれるかな。

そういうニュアンスのことは、しっかりと伝えた。

(現時点で、すでにフォウさんを護りたい!)と、思っているからな。

俺の話しを聞いたフォウさんも、いちおうは、喜んでくれたみたいだった。

(よかった~。)

とりあえずは、まだしばらくの間、こちらに、お世話になることを承諾してもらった。

そして、差し出がましいことだけど、フォウさんたちの力になりたいことは、ちゃんと伝えた。

力といっても、俺にできることといえば、戦闘と漁師メシを作るくらいのことしか、できないけれど…。

「また、しばらくの間、お世話になります。このご恩は、必ずお返しします。」

「ふふふ。こちらこそ、よろしくお願いしますね。ホークさん。…それに、ホークさんのお料理…とっても気に入りました。」

と、女神様のお許しをいただき、このまま、しばらくは、この別荘生活が続きそうで、一安心です。

でも、お世話になりっぱなしでは、申し訳ないので、さっそく次の日からは、別荘の掃除、洗濯などのお手伝いを致します!

まず最初は、昨日の宴会の後片付けですね。

そして、シルビアさんとドレンさんにも、

「よろしくお願いします。」

と、あらためて、あいさつをした。

(礼儀は、ちゃんとしたいからね。)

後片付けと掃除が終わったあと、隊長…もとい、ドレンさんから対人練習を誘われた。

(…もちろん、よろこんで!)

願ってもないことだ。

俺は、久しぶりの対人練習に…それと、初めての異世界の技を体験できることに、ワクワクしながら、ストレッチを始めた。

 ちなみに、ドレンさん……本当の隊長さんだった。

(よかった~。失礼がなくって……。)


「ドレン・エクシード 41歳 ♂ 193センチ 105キロ 国王直属護衛部隊ロイヤル・ガーディアンズ第3部隊隊長 デロンギ流格闘術師範 趣味 筋トレ 」


「俺…ホーク 本名 柳 鷹志 24歳 ♂ 187センチ 83キロ 日本政府大統領府隠密機動特殊部隊 平隊員 趣味 釣り 」


別荘の裏にある倉庫の前に、なにやら道場らしき広場がある。

きれいにならされた10メートル四方の広場だ。

(めちゃ気になっていたが、やはり、道場だったか!)

広場の地面を踏むと、少しクッション性のある、ほどよい硬さの地面だった。

(いいリングだ!…ロープは、ないけど…)

俺とドレンさんは、練習用であろう、ヘッドギアと、総合格闘技用のフィンガーグローブと脛パッドを装置して、向かい合う。

さぁ、スパーリングの始まりですよ。

ルールは、素手のみのなんでもアリ。

ただし、魔法なんかは、ナシでおねがいした。当たり前だけど、俺は、魔法なんて使えんし。

そこは、ドレンさんも了解済だった。

(むしろ、ドレンさんの方が肉体のみの格闘を望んでいるようだ。)

両者の拳を合わせて~ゴングだ!

(鐘は、ないけど…)

ドレンさんは、ドッシリと両足を地面につけ、両腕を軽く前に突き出し、相手を掴まえるような構えをとる。まるで、柔道家の構えだった。

その構えから、予測できることは、相手を掴まえてからの~投げか?組みか?の攻撃パターンだろう。

いかにも、ドレンさんらしい闘いだ…と思う。

見るからに、ドレンさんは、ヘビー級のファイター。そのパワーで相手を押し切ることが、得意そうだ。

(掴まると、厄介か?)

対する俺は、キックボクシングスタイル。

いわゆるムエタイの構えだ。

両腕のガードは、高めで、左足を前衛におき、軽く浮かせる…オーソドックススタイル。(サウスポースタイルでも、できるが、ドレンさんも右利きみたいだから…。)

そして、フットワーク重視のステップで、距離を測る。

俺の体格は、ライトヘビーくらいなので、ドレンさんにとっては、軽く投げやすい体重だからな。掴まっては、マズいのだ。

だからといって、逃げ回るのも、俺の性分では、ない。ここは、ひとつ…胸を借りるつもりで、先制しましょう!

俺は、左足の前蹴りで、自分の距離をつくりながら、手はじめに、打撃からで、様子をみる。

左ジャブからのワン・ツー・フック!

…だが、あっさりかわされて、カウンターのワン・ツー・フック・アッパー!の4連打で返された。

(…速い!しかも重そう!)

フックまでは、かわせたが、最後のアッパーは、マズい!…かわせないか?

そう判断した俺は、クロスガードで、アゴ元を襲う右アッパーをガードした。

(ぐっ!痛っ…グローブ付けてて、これか?やはり隊長!並じゃない!)

おまけにパワーも想像以上だった。クロスガードでブロックして正解だった。

片手だったら、間違いなく、はじき飛ばされていただろう。

しびれる両腕が、その証拠だった。

この男…かなりの手練れだ!

ファーストコンタクトで、十分理解した!

俺は、思わず「フフッ」と、笑った。

そのスピード、パワー…そして、この男の強さに……(マジで行くぞ!)

俺は、高速のワン・ツー・ローキックで、ドレンさんの足を止める。

さすがに、かわせないと思ったか、ドレンさんは、踏み込んで、俺のローキックを受けた。

踏み込んで攻撃を受けることは、カウンターの基本だからな。

ドレンさんは、ローキックを受けると「ニヤリと」笑い、渾身の右ストレートが炸裂した!

「ブンッ!」風切り音がした!

(この人のパンチもハンパじゃないな!)

俺は、その右ストレートを紙一重で、受け流す。左手でさばくように、その拳の軌道を変える。…と、同時に右フックをカウンターで合わせるように、内側から、ドレンさんの右ストレートにかぶせる。そして、ドレンさんの右腕を頬と右肩で挟むようにしてつかみ、左手でヒジのあたり取る!

…そう。関節技だ!

もう一瞬で、ヒジ関節が極まるところで、ドレンさんが強引に右腕を引き抜いた!

(マジか?なんてパワーだよ!)

いいぞ~!熱くなってきたぞ!もっとだ!

こんな相手は、なかなか出会えない!

ドレンさんの表情が「ニヤリと」した瞬間……ブレる! (高速移動の残像だ!)

「ぐっ!」

ショルダータックルがきた!

マジで高速のタックル!しかも重い!

俺は、とっさにブロックしながら、後方へと、飛んだ。

…が、ドレンさんは、これを読んでいたのだ!その勢いのまま、俺を押し出し、右足を取り、地面に押し倒す!

そして、マウントをとった!

(その巨体で、なんてスピードだ!…マジで強い!)

楽しくなってきたぞ!俺も完全にスイッチが入った!

マウントをとったドレンさんは、その馬乗りの状態のまま、容赦なくパンチを繰り出してきた!

俺は、冷静にそのパンチを見極めて、右手で払い、その拳の軌道を変える。

「………!」

ドレンさんは、一瞬驚きの表情を見せたが、また次の瞬間、パンチを繰り出してきた。

俺は、そのパンチをことごとく、かわした。かすりは、してもダメージは、ない。

「ほう……。」

ドレンさんが、声を出した次の瞬間……体重をのせた右拳が、俺を襲う!

たぶん、ドレンさんの狙いは、ヒジ打ちだ!その拳を俺が払うと、予測しての攻撃…。払われたことで、腕を曲げてのヒジ打ち。…だから、さっきよりも前傾姿勢になっている。

俺は、それを見逃さない!

ドレンさんの右拳を紙一重でかわしながら、左手で払い、その軌道を変える。

それと同時に、勢いがついたドレンさんの体が前のめりになる。そして、ドレンさんのヒジ打ちが来る!

俺は、かすりながらも頭をひねり、ヒジ打ちをかわすと…。

ドレンさんの左脇下に右手を入れ、体を浮かせる。と同時に、俺の腹筋を使い…さらに、ドレンさんの体を浮かせる。

俺は、ブリッジする格好になるまで、エビ反りになり、仕上げに右腕で、ドレンさんを払いのける。

その勢いで、ドレンさんの体は、俺を乗り越える格好となった。

ドレンさんの体重から、解放された俺は、素早く立ち上がり、まだ体勢を立て直していないドレンさんの後頭部に、ローキックを入れた!

ヘッドギアを付けては、いるが、いささかダメージは、あるだろう?

俺は、さらに追撃しようとした……。その瞬間……

「ギブっ!」

ドレンさんは、両手を上げた。

俺は、2発目のローキックを止めた。

(なぜに…?まだ、それほどのダメージは、ないはずだが……。)

「ふぅ~。」

と、息をはきながらヘッドギアを脱いだドレンさんが、

「とんでもない強さですな。ホーク殿。」

と、笑って言う。

俺は、右手を差しだして、ドレンさんを引き起こした。

「あなたも大概ですよ。ドレン隊長。」

思わず出た言葉だったが、ドレンさんは、気にする素振りも見せなかった。

「…でも、あそこでストップとは?」

俺は、尋ねてみた。

そう、あの場面…ドレンさんは、確実に俺の2発目のローキックを読んでいた。

そして、俺の足を取り、反撃に移れたはずだった。

しかし、ドレンさんの答えは…

「あれ以上続けると、もう練習では、なくなる!」と。

そして、俺の強さを確かめたかっただけだ…と。

(いやいや。それは、こっちのセリフですよ。)

あなたの方こそ、化け物ですよ~。40過ぎのおっさんのパワーとスピードじゃないって~!

そんな俺をよそ目に、

「わっはっはっはっ~!」

ドレンさんは、笑い、またしても俺の背中をバンバン叩いた。

(だから…痛いって~。)まったく隊長には、かないません。

…確かに、俺の方が優勢に見えていたが、はたして実戦ならば、どうなっていたやら…。

俺は、あらためてドレン・エクシードという男に、感服した。

その後は、ライトスパーで軽く流して、お互いの技を確かめあった。

(やはり、このおっさんただ者じゃない!)打撃系は、もとより寝技が、ハンパじゃなかった。極上のレベルだった。

俺も格闘技には、かなりの自信があったが…はっきり言って敵にしたくない!

そう思わせる、片鱗が見えた。

そして、理解する…この世界の格闘技術のレベルを…。

…と、同時に、感じたことは、ドレンさんの技は、真っ直ぐだった。愚直だった。

いわゆる正攻法だったのだ。

練習というわけでも、ないようだ。

この愚直さは、この世界の正直さ…というか、この人たちを信じられる根拠なのだろう…と。

フォウさんが前に言った「デモンズの連中は、すごい!」と、表現した理由がわかったような気がする…。異世界人…俺も含めてそうだけど、勝負事には、シビアになれるから…冷徹までに。

対人練習も終わり、ルーティンである筋トレも終わり、なぜか男2人でお風呂に入った。(ドレンさんと、こんなに意気投合するとは…。)

基本的にドレンさんも格闘技オタクだったみたいだ。

俺は、ドレンさんとスパーリングできたことが、かなりうれしかった。

あとは、そう…男同士の話しだ。どこかの機会に語ろう。

ちなみに、この別荘には、内湯と半露天風呂のふたつがあった。もちろん、今俺たちが入っているのは、露天風呂の方だった。

ほんと気持ちいいです!

ありがとう温泉!




ドレンとスパーリングして、その強さに感服したホーク。さらにこの世界の格闘技術のレベルにも。 そして、さらなる強さを求めるホークだった。格闘オタクに終点は、ないのだ。さらにその先へと、強さを求めるホークだった。 さてさて、次回は、シルビアも参戦しての……新しい特訓が始まるのです。

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