第77話 団結
前置きは、このくらいにして。
豪華料理も、完成したので、歓迎会をはじめよう。
では…せんえつながら。
「マウアーくん。ようこそ第6部隊へ! かんぱ~い!」
―――「「かんぱ~い!!」」―――
くぅ~!
やはり、この一杯がうまい!
刺身も新鮮で、ほんとうまい!
賢司も、海鮮料理は、久しぶりらしく、無言でひたすら食べている。
(よしよし。賢司くん、堪能したまえ。)
マウアーは、というと…やはり、海鮮料理には、馴染みが薄く、ちょっと戸惑っていた。
「この料理は、ワシたちの国の料理じゃからな。めずらしいだろう? まぁ、食べてみよ。うまいぞ。」
橘さんが、すすめる。
(さすが師匠。後輩の女子に、丁寧な対応ですね。)
「…わかりました。何事も、経験ですね。」
そう言って、マウアーは、食べはじめた。
初めてのお刺身を一切れ…
パクリ。
「……っ! めちゃくちゃおいしい! 私は、こんなおいしい魚…食べたことがないぞ!」
いたく感動したらしい。
そして、日本酒をくいっと。
「クゥ~。たまらん! ほんとお酒と合うな!」
と、お酒は、いけるクチらしい。
マウアーは、ホホを少し染めて、かなりのご機嫌ですね。
隣に座っていた橘さんが、
「どれ。もうひとつ。」
と、マウアーにお酌しようとしたときに、異変は、起きた。
突然あたふたし出したマウアーは、
「いやいや。橘サマに、夜の蝶をさせるわけには……。」
と、ホホを真っ赤にして、のたうちまわっている。
(なんだと?……)
俺は、反応した。
その言葉に…。
また「夜の蝶」などと、ほざいている。
(あれ? もしかして…夜の蝶って……)
「マウアー。その夜の蝶って、一体なんだ?」
もう一度、あらためて聞くと、マウアーが答えた。
その意味とは………
女の子や男の人が、異性に対してお酌することを「夜の蝶」と、いうらしい。
それは、「愛の告白=絶対服従」のことだ…と。
ある先輩に、教えられたらしく、それ以降、お酌することが恥ずかしくなったんだと………。
あきれた!
要は、その先輩とやらに、からかわれたのだろう。
そのことをずっと、真に受けていたのだ。
「なんだそれ?」
俺は、いらぬ想像をしていた自分が、恥ずかしくなったぞ!
本人にしては、重大だったろうけど……。
まぁ、ナゾは、解けた。
俺とは、関係なく、橘さんと賢司は、大笑いしていた。
たしかにこれは、笑いごとだ!
素直に俺も、笑わせてもらおう!
一堂笑ったあとは、
「お酌に、そんな意味は、ないよ。気にするな。」
と、俺からも、マウアーにお酌をした。
まだ、モジモジしている。
オモシロイやつだ。
(はっ!待てよ!…この世界には、本当にそんな風習があるのでは?!)
一瞬、挙動不審になった俺…。
橘さんも賢司も、頭をヨコに振っていた。
(…よかった……。)
…が、俺まで同類かと思われた?
いかん!
話題を変えよう!
「あっ?ところで橘さん。第4部隊のレクサス総長とセリカさんが、よろしくって、言っていましたよ。」
橘さんが、表情を変えた。
ナイス俺!
見事に話しを、すり替えた!
「おお~。そうか。あやつらも、元気にしておったかぁ~。」
橘さんは、昔を懐かしむように、微笑む。
「私も、セリカ様の元で、修行していたのですが、聞けば橘サマは、セリカ様の師であると。」
「うむ。だいぶ昔の話しじゃ。じゃが…セリカの師は、ミカ様じゃぞ。ワシは、剣を教えただけじゃ。」
(いやいや。それを「師」と、呼ぶんです。)
心の中で、ツッコんだ。
「しかし、第1部隊を引退したと聞いて、ガッカリしていたのですが……まさか、この部隊の副隊長とは! 驚きと喜びで、いっぱいです! …ということは、私にも、剣術を教えていただけると?」
マウアーが、キラキラした目で、橘さんにお酌をしている。
(うまいぞ!マウアー! そのタイミングだ!)
橘さんが、盃を飲み干すと、
「うむ。わかった! ワシの修行は、キビシイぞ!」
「望むところです! よろしくお願いします! 師匠!」
と、またお酌していた。
「よし!では、今は、酒に付き合え!」
「はい!師匠!」
と、またまたお酌していた。
すっかり「お酌」に、慣れたようだ。
(うん。うん。なんとなく、まとまってきたな!)
おもしろくなりそうだ!
…だが、マウアーには、まだ試練があった。
そう…「ナマコ」だ!
橘さんが、からかうように、
「コレの味を理解できん者を、弟子とは、呼べんのぉ~。」
と。
(さすが橘さん! 策士だ!)
「…もちろんです!師匠!」
と、マウアーは、涙目になりそうな感じで
……ひとくち。
「……なんだ?これは?!」
と、誰かと同じ反応をしている。
(やはり、この瞬間が気持ちいい!)
「これがナマコ? あのグロいやつが……
私の人生は、この瞬間、生まれかわったぞ! ありがとうナマコ!」
なんか…叫んでいる。
みていて、ほんとオモシロイやつ。
のちに、
「ナマコを部隊のトレードマークにしよう!」
と、叫ぶバカがいたが、全員で却下された。
今日のうたげも、大盛り上がりをみせる。
まだ、夜も浅い。
さぁ、これからだ!
ちなみに、賢司は、俺がいない間に、弟子入りしていた。
聞くところによると、かなりの試練があったみたいだが………。
がんばれ賢司!
いい感じで、まとまってきて、よかったねぇ~。
これからが、楽しみです。
それにしても、ホーク。
「夜の蝶」のナゾが解けて、スッキリ!
いかがわしい意味じゃなくって、ホッとしました。
…しかし、お酌が、「愛の告白」だったら、宴会が大変なことになりそう……。
まぁ、それは、おいておいて。
無事に、マウアーの「ナマコデビュー」も終わりました。
ナマコをトレードマーク?
さすがは、マウアー。
侮れません。
さて、次回は、真面目に訓練しましょう。
でも……やはり。
では、お楽しみに。




