第74話 紹介
夕方近くに、我が隊舎へと帰ってきた。
(ふぅ~。)
なんだか、久しぶりの気分だった。
「ふぅ~ん。なかなかいいところだね。」
このリフォームされた隊舎と、新築された倉庫兼訓練場と、だだっ広い森を眺めながらマウアーが言う。
「だろ?」
「うん。いい感じだよ。静かで、のんびりできそうだ。」
「はぁ…? のんびりできるか! 日々訓練に決まってんだろ!」
「もちろんわかっているとも! 私が先輩に魔法を教える。その対価は、先輩が私に格闘術を教えるんだ! そして、私は、もっと強くなる!」
「お…おうっ。気合い入っているな、マウアーくん。」
「あたりまえだよ! よろしく頼むよ、先輩。」
「こちらこそな。 …あっ?そういえば、おまえの所属とかの変更手続きって、どうするの?」
「……? どうなるのかなぁ~? 私も、わかんない。この部隊って、秘密部隊だろ?」
「秘密というか…隠密だな。」
「まぁ、どっちでもいいけど。私は…また平隊員からのスタートだね。」
…ああ。そういうことか。
こいつは、班長という立場まで、頑張ったんだよな。
別に、降格という立場じゃないけど…ね。
そういうところも、あとで師匠に教えてもらおう。
「…そうだね。平隊員だね。…ん?ちょっと待て? おまえ、さっきサインだけで、道具ばもらってなかった?」
(また、地が出た。ごめんなさい。)
役持ちの兵士だけ…って、言っていたよね?
「うん。まだ班長の肩書きは、残っているみたいだな~。」
「だな~…って、もし、もらえなかったら、どうしたんだ?」
「ああ~。それは、大丈夫。あそこは、私の馴染みの場所だから。なんかあっても、踏み倒すよ。あっはっはっは!」
「踏み倒す…って……。」
まったく、こいつは……。
「それよりはやく、案内してくださいまし。センパイ♥」
なんか、ツヤつけているマウアー。
「ああ~。ちょっと、待ってろ。」
そう言って、俺は、隊舎をのぞく。
「ただいま~。」
「………」
誰もいなかった。
(あれ? いない…。)
この時間だから、訓練は、終わっているはずだけど…。
反対側をみてみる。
(…ん? …なんだ?)
隊舎のヨコに、なんか出来てる?
見るからに、離れの一軒家だった。
しかし、なんかその造りが、この場所に、似合わないほどの可愛らしい一軒家だった。
壁色は、隊舎と同じ色なので、問題はないのだけど…。
屋根が緑色で、めちゃメルヘンチックだった。
…そう。
あの別荘を小さくしたような造りだった。
窓も小さい開き窓で、レンガの煙突もある。
「あなた…。」♪ に、出てきそうな家だな(笑)。
(…もしかして?)
そのメルヘンお家をのぞくと、橘さんと賢司が、なにやら作業をしていた。
「コンコン。」
小窓を叩いて、教える。
気づいた賢司が、振り向いた。
「あっ? 先輩! お帰りなさい。」
(…ん? なんか、こいつまで、先輩呼ばわりになっている…。)
まぁ、いいけど…。
「ああ~。ただいま。ところで、なにしてんの?」
「おっ? ホークよ、早かったな。ナイスタイミングじゃ! ちょっと、手伝え!」
相変わらず、人使いが荒い師匠なことで。
…って、その前に、マウアーを紹介しよう。
「橘さん。ちょっと待ってください。こいつが……。」
マウアーを呼ぼうとしたら……
その本人は、このかわいいお家を見て、プルプル震えていた。
「スゲ~~かわいい! これって、もしかして…私のお家か?!!!」
マウアーは、すっごく興奮していた。
ピコピコ状態で、はっきりと、耳が生えていた。
(マジで、モンチッチ! 笑! )
「うるさい! ちょっと、こっち来い!」
と、こっちに呼んだら、今度は……
「げえぇぇぇ~~~! あ…あなたは、もしかして…橘 康介サマでは~~~!!」
ほんと、ウルサイ!
みていて、オモシロイけど…。
「いいから、ちょっと落ち着け! みんなに、紹介するから…。」
「は……はい。」
やっと、落ち着いたみたいだ。
「え~と。こちら、今日から仲間になるマウアー・ゴルフさん。 バカだから、気をつけてください!」
俺は、キッパリと言った。
おそらく、師匠と賢司も、俺の言葉の意味を理解しているだろう。
苦笑いしていた。
一方、マウアーは、ツッコむどころじゃなく緊張したように、「ピンッ」と背筋を伸ばして、
「マウアーです! よろしくお願いします!」
と、軍隊バリのあいさつをした。
(なんかこいつ…俺のときとは、大違いだな~。)
なんか不満!
「橘 康介じゃ。よろしくな。」
さすが師匠。
大人の対応だった。
「白井 賢司です。よろしくお願いします。」
賢司も、師匠に続いて、大人な対応だった。
…なぜか、俺だけ……
いや。気にしては、ダメだ!
俺は、平静を装った。
まぁ、ひとまずは、挨拶も終わって…
まだ、固まっているマウアーは、放置しよう。
俺は、賢司に質問する。
「これって…?」
メルヘンお家を指差すと、
「はい。先輩が出発したあと、なんか職人さんが来て…あっという間に………。」
信じられないような口調で、賢司が答える。
(うん。その気持ちは、わかるぞ!)
…なるほど、理解した。
「ホッホッホッ! 新入隊員は、おなごじゃからな。部屋は、いちおう用意しとこうと思ってのぉ~。デリカシーというやつじゃ!」
師匠の機嫌が、すごくいい。
でも、マウアーの勧誘に、失敗していたら、どうしたんだろう?
…まぁ、俺の成功を信じてくれていた…と、前向きに考えよう。
かたや、感激最高潮のマウアーは、
「あ、ありがとうございます。橘サマ。 すっごく可愛くて、気に入りました!」
と、師匠と熱く、握手を交わしていた。
さて、これで4人の部隊が出来た。
俺は、希望と期待で、ワクワクのピコピコだった。
(ふっ。マウアーを笑えないな…。)
無事に、マウアーを紹介できたホークは、ホッと一安心ですね~。
でも、マウアーの「天然さ」は、男クサイこの部隊では、重宝しそうです。
そのマウアーは、大の「橘 康介」のファンでした。
前に、ドレン情報で、「橘さんは、モテる」…と、ありましたけど、ほんとだったようですね。
マウアーのために、かわいいお家を用意してあげるところなんて、ポイント高すぎです。
…そして、またホークのオヤジ趣味が炸裂しました。
「あなた…。」
なんで、その歌を知っているの?
絶対に、ホークって、オヤジだよね!
まぁ、いいけど…。
そして、やっぱり、賢司くんも、あの職人さんたちの仕事っぷりに、唖然と、したみたいですね~。
ホークも、共感しているし。
さて、次回は、やっぱり…することは、ひとつですね~。
飲み会です。
歓迎会です。
新歓コンパです。
楽しんでね~。
お楽しみに。
追申。
ドレンのラフ画を「みてみん」さんに、掲載しましたので、興味がある方は、是非見てください。
「ラビットアイ」で検索すると、出てきます。
よろしくです。




