この人の笑顔を護る!
月もだいぶ真上にきたころ、宴会も終わり、俺は、ひとっ風呂浴びて、部屋へと戻った。
(ほんと、ここのお風呂は、気持ちいいね~。ありがとう温泉。)
部屋の窓からきれいな星空を見ながら…少し物思いにふける。
…ほんと、楽しかった。こんな感じは、いつ以来かな?なんか家族団欒って、感じがして……。
へへへ…俺、ニヤけてる?
ドレンさんがお父さんで、シルビアさんがお母さん(?)そして…フォウさんが……
って、いやいや。何考えてんだ!
みんなに失礼だ!
…それに、俺にはもう…家族なんて、いないからな…。
そんな感じで、感傷に浸っていると、ノックがした。
「コンコン。」
「…はい。どうぞ。」
と、返事をすると、ドアが開いて、
「こんばんは。こんな夜更けに、ごめんなさい。その…ホークさんに、お話しが…。」
フォウさんが入ってきた。
「ドキッ?」と、した。彼女は、清楚な感じの真っ白いネグリジェみたいな、ふわふわした着物を着ていた。
(…まさか…夜這い?)…いやいや。そんなことをする人じゃ、ない。
俺は、平静を装うようにして
「どうしました?」
と、答えて、テーブルについた。
フォウさんが用意してくれた、ハーブティーといっしょに…。
(長い話しに、なりそうだな。)
俺は、空気を読んで、話しを聞くことにした。
そして、フォウさんは、いつになく真剣な眼差しで言った。
「今日は、ほんと楽しかったですね~。ホークさんの料理も、たいへん美味しかったですよ~。」って。
(………ガクッ!話しって、それかい!)
拍子抜けした俺をよそ目に、フォウさんは、続けた。
「ごめんなさい。あの…お話しというのは、じつは………。」
やはり本命は、マジメな話しだった。
それは、やはり俺に関すること。そして、ある勢力のことだった。
俺のような人間…この世界の人からみると、
「異世界人」のことだった。
なんでも「異世界人は、たまにいる」という話しだったな。
そして、10年に、2~3人くらいの割合で、現れるらしい。
その原因は、定かでは、ないらしい…が。
ただ、その異世界人は、かなりの確率で特殊能力を持つらしいのだ。
(これだから、ファンタジーは…。勘弁してほしい。)
そこで問題なのが、やはりその能力を使って、悪の道に走ることらしい。
(まぁ、そうだろうな。こんな訳のわからない世界に、迷い込んでしまって、まっとうな人生とは、オサラバだ。おまけに特殊能力なんて、持ってしまったら…そりゃあ道を踏み外すだろうね。まぁ、何をもってして悪というのかは、俺には、判断しづらいが…。)
確かなことは、この世界の人たちが困っている…ということは、悪で間違いないだろう。
ここ500年近く前に、「災厄の7日間」という大戦があったらしいが、どうやらそれを機に、異世界人たちを中心にした悪の組織…「デモンズ」というものが出現したらしい。(ネーミングセンスなさ過ぎ!)
やはり、その中には、現地の人たちも多数いるみたいだ。
要は、異世界人の悪影響を受けた人が多いって、ことだろうな。人は、低きに流されるものだから。
そして、ふつうの人…一般市民がその行為に恐怖しているのが、現状だった。
この世界にも、警察組織…(こちらでは、衛士と呼ばれているが、ほぼ軍隊と同じ。)…があるが、ヤツらには特殊能力があるから、なかなか捕まえることが出来ないらしい。
(生温い!捕まえることが出来ないならば、殺せばいいだろう…に。)
あっ?その特殊能力のせいで、それもなかなか難しいのか?…っていうか、特殊能力ってなんだ?やっぱり念力とか、そういうたぐいのものだろうか?
まぁ、そのあたりのことは、後回しにして…
なんにしろ、市民が恐怖で、困っているのだ。
だが、ここ数年間は、ヤツらの行動も、かなり沈静化しているらしい。…おそらくは、力を溜めているのだろう…と。
…で、そんなときに俺が現れたのだ。
そりゃあ、敵かも? と、考えるよな。
(保護されたときは、なんせズタボロの戦闘服で、重傷だったからね。)
しかし、意外にもフォウさんたちは、俺がデモンズでは、ないと、思ってくれたようだ。
ありがたいことだ。でも俺は、そこまでの悪ではないだろうが…かといって善…正義でもない。ただの傭兵~隠密部隊だ。命令があれば、平気で殺生もする。
…しかし、そのデモンズという他の異世界人には、興味があるな。
強いヤツらなら、1度……おっと、また悪いクセが出てしまった。
まぁ、それは、置いておいて、どうやら俺に、白羽の矢が立ちそうだ!
んん?でも、ちょっと待て…この世界には、魔法なるものが、あるって、言ってなかった?
その魔法とやらで、デモンズの連中に対抗できないのだろうか?…尋ねてみると、
同じ魔法でも、なんか異世界人が使う方が強力らしい…特殊らしい。
あと、なんて言うのか…何しろ手段がすごい…と。勝つためには、手段は、選ばない!とか。
なるほど…。あっちの世界の人間は、悪魔よりもタチが悪いかも……恥ずかしい。
そういう俺も、戦闘においては、勝つためには、手段は、選ばない。…というよりは、勝つために、あらゆる手段を使う!と、言った方がいいかな?
フォウさんたちをみると、みんな素直で、真っ直ぐで、スレていない。
ほんといい人たちだもんね。
こんないい人たちを悪の恐怖で脅かすことは、許せんな!
同じ異世界人として、ハラが立ってきた!どうも話しを聞く限り、デモンズというヤツらは、危険思想集団。
俺が今まで戦ってきたテロリストみたいなもののようだ。
俺にとっても、テロリストは、敵なのだ!
敵は、潰すのみ!
……おっと、いかんいかん。過激になっていた。冷静なろう。
まぁ、俺のハラは、ほぼ決まっているが…。
そして、もうひとつ。
俺にとっての衝撃事実があった。
なんと、この女神様…本物のお姫様だった。
このティフブルー王国の第1皇女様!
「マジでぇぇぇ―――――――――!!!」
おお~。驚きのあまり(脳が)3周して、正気になった。
高貴な家柄のお嬢様だとは、思っていたけど…本物のお姫様だったのは、ね。
でも、俺みたいなやつと、こんなに気軽に接しても、いいのだろうか?
…て、いうか。俺って、かなり失礼なこと、していないよね?
もしかしたら…打ち首?!
(いつの時代だよ!アホか?)
恐る恐る聞いてみた…。
「……すみませんでした。失礼ばっかりだったでしょう?」
「ふふふ…。大丈夫ですよ。ホークさんは、十分に紳士的ですよ~。」
って、笑顔満天で答えるフォウさん。
その笑顔は、反則的に可愛かった。
…まぁ、いちおうは、大丈夫だったみたいで、一安心したが、今後は、少し気をつけよう。
でも、俺みたいなやつにも、ふつうに接してくれるこのお姫様…ほんと「うつわ」が大っきいね。ほんと、感謝します。
(誰か俺に、礼儀作法を教えてくれ~!)と、叫んだことは、内緒だ!
「サウスランド・フォウ 23歳 ♀
173センチ ?キロ ティフブルー王国第1皇女 金髪金目が特徴 精神魔法と精霊魔法の使い手 」
フォウの話しで、おおむねのことを理解したホーク。ただフォウが本物のお姫様と、知って、かなり驚いていたね。まぁ、ふつうは、誰でもそうだから、安心しなさい。さてさて~これからは、さらにこの世界の人たちと、関わっていくホーク。その熱いハートに、どう応える?