第68話 新人(10)
勝負は、決まった…
いや。勝負すらにも、至っていないのかな?
力の差は、歴然だった。
その拳を見て……
「私の完敗だ。 好きにするがいい。 夜の蝶でもなんでも…好きに…な。」
と…しか 私は、言うことができなかった。
降参したマウアーを感じた俺だったが、
…やはり、思うことは、そっちの方だった。
(だから、「夜の蝶」って、なんだよ?!)
その時、背後から
「パチパチ。」
と、拍手が聞こえた。
(……誰だ!)
「見事です。ホーク殿。」
振り向くと、セリカさんがいた。
全然、気がつかなかった。
(恥ずかしい…。)
と、同時に、このセリカという魔法使いに恐怖した。
(やはり、上には、上がいるな。)
俺は、あらためて実感した。
まぁ、背後を取られたことは、反省して…その原因が知りたい。
いくら、マウアーとの格闘に集中していたとは言え……。
(教えてくれるかな~?)
…という、俺の懸念とは、ウラハラに、セリカさんは、あっさりと教えてくれた。
しかも、すっごくいい笑顔で!
(この人も、器が大きいな…。)
俺は、さらに、反省する。
…で、答えは、「ブラインド」という隠蔽魔法のひとつらしい。
(なんと!気配を遮断する魔法だと…?)
素晴らしい!
隠密に、使えるかも?
…まだ、到底 俺には、魔法は無理だけど…。
いつかは…きっと。
…で、こちらの魔法少女は……というと。
「セリカ様……?」
キョトンと、している。
マウアーも、感知できなかったみたいだ。
内緒だけど、俺だけじゃなかったことに、少しホッとした。
…いやいや。違う!
まだまだ、修行が足りないことを猛烈反省した。
それにしても、さすがは、「長」が付く実力者だった。
このセリカさんという人も、ただ者ではなかった。
(やはり、三大魔女のひとりか?)
「ホーク殿。マウアーをよろしくお願いします。バカな子ですが、可愛がってくださいね。」
と、ニッコリ微笑んだセリカさんは、とてもキレイだった。
…でも、その内容は、なんか違う意味のように、聞こえるんですけど……。
まぁ、そこは、気にしない。
「わかりました。おまかせください。」
と、さわやかに、返事を返す俺だった。
なぜか、マウアーが赤い顔をして、もじもじしているが、これも、気にしない。
俺は、少しわかった。
「こいつは、バカだ!」
……と。
とりあえずは、勧誘は、成功した。
しかし、問題が残っている。
「なぁ、マウアー。 夜の蝶って、なんだ?」
俺は、ストレートに、聞いてみた。
「あんた、ほんとに知らないのか?」
マウアーが、さらに赤い顔をして、言っている。
俺は、正直に話した。
「俺は、異星界人だよ。まだ、この世界にやって来て、1年も経っていないから、こっちの風習なんかは、よく知らないんだよ。ごめん。」
と。
「あっ?そうなんだ! ……どうりで……。」
と、マウアーは、自分の中で、何かを納得していたが……
俺の質問には、答えてくれなかった。
「…そうか。異世界人か……ふふふ……。」
マウアーが、俺を見て笑っている。
…が、ようやく、素直な感じの笑顔を見せてくれた。
(笑うと、こいつもかわいいんだな。)
思わず俺も、微笑んだ。
とりあえずは、勧誘成功!
「セリカ・アクセル ♀ 31歳 168センチ ?キロ 第4部隊魔法班 総班長。隊員たちの間では、「三大魔女」と呼ばれるほどの魔法使い。「水」と「風」の魔法を得意とする。師は、ミカ。レベッカとシルビアの後輩。マウアーとは、幼なじみ。おしとやかな人物で、隊員たちからの人気も高い。趣味 ガーデニング。」
お疲れさまでした、ホーク。
無事に、任務完了だね。
ホッとしたホークだけど…
「背後をとられるなんて……」
ちょっと、落ち込むホーク。
あんたは、ゴ〇ゴ13か?!
私が、ツッコミを入れてあげよう。
しかし、セリカも、こっそりとのぞき見するなんて、人が悪い…。
まぁ、彼女は、マウアーの保護者みたいなものだから、とっても心配だったんだよ。
許してあげてね、ホークくん。
では、次回は、ふたりのプチ旅です。
よかったね~ホーク。
念願の温泉に行けるみたいだね。
でも、マウアーを覗いちゃダメだよ。
お楽しみに。




