第51話 始動(4)
さて、作業開始だ。
柱の次は、屋根の部分にとりかかる。
足場のてっぺんには、滑車が取り付けられて、ものすごいスピードで、角材が上げられる。
上げられた角材は、職人さんたちの手で、次々と組まれていく。
あれよあれよ…という間に、屋根の三角形の骨組みが、出来上がった。
見ていて、惚れ惚れするほどの作業効率だった。
(さすがは、職人さん。)
気付けば、もうすぐお昼ご飯だな。
今日のメニューは、「アジフライ定食」。
昨晩のうちに、下ごしらえは、終わっているので、あとは揚げるだけ。
ご飯は、炊けているのでOK。
キャベツも、刻んでいる。
みそ汁も、アジのアラでダシをとって完ぺきだ。
では、どんどん揚げていこう。
…と、その前に…
「みなさ~ん。ごはんができましたよ~。」
と、声かけしておく。
ご飯、みそ汁、キャベツは、セルフだ。
好きなだけ、おかわりしてください。
アジフライも、出来上がったものから器に盛っていく。
これも好きなだけ食べてください。
…って、やはりみなさん、食欲旺盛だった。
アジフライが揚げたそばから、なくなっている。
揚げたてのアジフライを頬ばる職人さんたち…あちらこちらから…
「うめ~ぇ!」
と、聞こえてくる。
ちょっと、ドヤ顔になった。
(さあっ、どんどん召し上がってくれ。)
俺の手も、どんどんスピードアップしていく。
「昨日もそうだけど、今日のメシもめちゃうまいぞ!」
職人さんたちから、大好評だった。
(前の部隊で、かなり鍛えられましたので…。)
心の中で、答えている。
…だって、それどころではないくらい、忙しいんだもん!
午後の作業は、屋根のパネル貼りです。
パネルは、材木をタテ2メートル、ヨコ1メートル、厚さ2センチに加工されたものだ。
(地球でいうところのコンパネだな。)
このパネルを屋根の骨組みに貼っていく。
いわゆる軒天ですね。
もちろん、このパネルにも防腐処理がされている。
軒天が完成したら、瓦を貼っていく。
使用するのは、西洋式の瓦だった。
一般的な瓦というよりは、タイルという感じのものだ。
なにせ体育館くらいの広さだから、日本瓦だと、完全に重量オーバーなのだ。
だから、軽い西洋瓦を使用するのだ。
(やはり、この世界の建築技術は、高い。)
感心する俺だった。
そして、屋根が完成した。
屋根がつくと、「建物らしさ」も出てくる。
もちろん瓦には、熱遮断の魔法が施されている。
夏は、涼しく…冬は、温かい仕組みだ。
(しかし…2日目で、ここまで出来るとは……。)
「本日もお疲れさまでした~!」
ということで、乾杯です。
夕食のメニューは、「シシ肉の塩こうじ漬けステーキ」。
ミカ様お手製の塩こうじに、昨日から漬け込んでいたシシ肉。
塩こうじのおかげで、いい感じでお肉も柔らかくなって、味も濃厚になっています。
このシシ肉を、森で見つけたハーブと一緒に、ステーキする。
お肉は、厚さ5センチ、500グラムのビッグサイズ!
もちろん、焼き加減は、「ミディアムレア」だ。
表面には、網目の焼き印が入って、パリッと。
中身は、ジューシーに火が通っています。
とても、美味しそう!
満足してもらえるだろう。
そして、もう一品ある。
「あばらの骨付きリブステーキ」。
こちらは、コショウを効かせたリブステーキ。
豪快にかぶりついてほしい。
…と、能書きは、このくらいにして、
「乾杯~!」
(くぅ~! この一杯がたまらん!)
「うまい!」
「なんだこれ? めちゃくちゃうまいぞ!」
「俺、大好き!」
などと、職人さんたちから、歓喜の声が上がっていた。
「さあっ、どんどん焼いていきますよ!
たっぷり召し上がれ!」
ワイワイ。
ガヤガヤ。
今日の宴会も、盛り上がっていく。
ふと、空を見上げると、ここでもきれいに星が見えた。
「いい夜だなぁ~。」
3日目。
本日の作業は、壁板の貼り付け。
屋根で使っていた木板を、ひたすら釘で打ち付けていく。
壁と平行して、出入り口と窓も仕上げていく。
扉は、スライド式だった。
正面入り口は、ヨコ2メートル、高さ2.5メートルの両開きタイプ。
左右の側面には、資材などを運び込むために、ちょっと大きめのヨコ3メートル、高さ2.5メートルの同じく両開きタイプの扉を設置してもらった。
窓は、昔ながらの木造校舎に使われていたものと似た感じのものだった。
棟梁さんが、知り合いから集めてくれたものだ。
大きめの窓なので、光がよく入ってきて、気持ちがいい。
風通しも、かなりいいですね。
(さすがだ!)
外壁には、さらに表面を保護するように、伐採した木の皮を均一に伸ばして、乾燥させたものを貼り付けていく。
湿気の侵入と、熱遮断の効果があるらしい。
さらに、火災にも強いとのことだった。
(なるほど…勉強になります。)
もちろん、防腐処理の魔法が施されている。
外壁と、窓と扉が完成すると、すっかり建物らしさが…全容が見えていた。
かなり「カッコシブい」倉庫に、なってきました。
ほんと、棟梁さんたちに感謝です。
陽も傾いてきた頃だし、今日の作業は、終了です。
さて…と。
夕食の準備をしましょう。
ちなみに、今日の夕食は、「シシ鍋」。
野菜たっぷりで、健康にもいいし、シシ肉は、赤身部分が多いので、タンパク質も豊富です。
疲れた体の回復に、もってこいですよ。
それに、体もあったまるし…。
冬は、やっぱり鍋だね。
…ということで…
「みなさん。 今日もお疲れさまでした~。 乾杯~!」
みなさんのおかげで、順調に進んでいます。
よく働き、よく食べて、よく飲んで…
まさに、人としての意義を成しているこの世界に……
俺は、敬意を払いたい。
ふぅ~。
お疲れさまでした。
ほんと、みなさん働き者ですね~。
ホークも、すっかり職人さんたちと、馴染んでいるようです。
…というか?
職人さんたちが、ホークのサラメシに、胃袋が鷲づかみされているみたいですね~。
…だって、美味しそうなんだもん!
私も食べたい!
…おっと?失礼しました。
でも、アジフライ…ほんとおいしいですよね。
ウスターソースをかけて…そのソースがキャベツに染みて…なんとも言えない!
ウスターソースの次は、マヨとウスターソースのミックス。
これが、たまりません!
最高です!
みなさんは、どんな食べ方が好きですか?
…おっと?話しがそれました。
さて、次回は、新隊舎建設も大詰めです。
では、お楽しみに。




