第44話 接見(6)
フォウさんの丁寧な説明を聞きながら、
王宮の散策コースをゆっくり、歩いていく。
フォウさんの声は、澄んだシャボン玉のようにきれいで、俺の耳から、すぅっと頭に入ってくる。
いつまでも、聴いていたくなる声だった。
…おっと?話しを戻さないと…王宮の話しだったね。
王宮は、のべ面積 約350000平方メートルほどもある。
俺の感覚でいうと、福岡ドームの約5つ分くらいある。
めちゃくちゃ広い!
敷地内には、森や湖もあり、大自然と一体化…いや。大自然の中に王宮がある…という感じの風景だった。
この王宮は、「グリフィス王宮」と、呼ばれるらしい。
グリフィスとは、伝説の鳥獣で、「不死」を司る神獣だと…。
(日本でいうところの不死鳥みたいなものかな?)
グリフィス王宮は、小高い丘の上に建築されていて、グロリアの町並みを一望できる。
周りは、草原になっていて、乗馬コースにもなっていた。
(俺たちが、歩いている道だね。)
そういえば、ザク王の趣味が乗馬だと、言っていたから、このコースをまわっているのだろう。
(気持ちよさそうだ。)
一方、王宮正面には、入り口のバカでかい門から、一直線に伸びるキレイな石畳で、整備されていた。
距離にして、300メートルくらいか。
その両脇には、美しい花が咲く花壇が設置されていて、訪れる人を歓迎してくれるようだ。
石畳の終わりには、円形の大きな池がある。
もちろん、噴水が気持ちよさそうに、踊っている。
王宮本殿は、まさに中世ヨーロッパのお城のような佇まいだ。
いちばん高くそびえ立つ天守塔を真ん中にして、左右には、一段低くなった天守塔を持つ建築物。
3つのお城が合体したような建築様式だった。
これだけみても、かなりの建築技術があることがわかる。
そして、本殿から、100メートルくらい離れた左右には、それぞれ、二階建ての学校校舎のような石造りの建物がある。
これも、かなり立派な造りになっている。
本殿に向かって右側が、文官棟。
向かって左側が、武官棟だった。
王宮本殿を通り抜けて、小さな森がある。
その森の中に、ジーク様とミカ様の住まう奥の院がある。
王宮周辺を1周して、戻ってきたところですね。
では、もう1度、詳しく奥の院の説明をしましょう。
奥の院は、かわいい感じの別荘タイプの館だった。
バルコニー付きの二階建て。
壁は、真っ白で、屋根瓦は、緑色の。
(これは、絶対にミカ様の趣味だろうね。)
こちらの庭も、西洋式の美しい庭だった。
まだ寒い時期なので、花は、たくさん咲いていないけど…よく見ると、ハーブがたくさん植えてあった。
バジルにミント、ラベンダー、ローズマリー、パセリ、レモングラスにセージまである。
(なるほど~。このハーブを使って、ミカ様がお茶を入れてくれたのか~。おいしいはずだ。)
さらによく見ると、ハチちゃんも、けっこう飛んでいる。
さっき、ジーク様が話していた、ハチちゃんだろう。
ハチちゃんをよく観察すると、西洋ミツバチのようだ。
西洋ミツバチは、黄色が強く、体も大きい。
少し攻撃性が高いけど、蜜を集める力は、ダントツだった。
ちなみに、俺の田舎で育てていたのは、日本ミツバチだった。
日本ミツバチは、体も小さめで、色も黒みがかっている。
性格も穏やかで、おとなしいハチちゃんだった。
(でも…ユリは、刺されたけどね…。)
…で、木陰の方を見ると、ハチ箱が設置されていた。
かなりの数のハチ箱があった。
これだけあったなら、かなりのハチミツが採れるだろう。
聞くと、フォウさんも、ハチミツの採取を手伝っているとのことだった。
「じゃあ、今度は、ホークさんも、いっしょに、ハチミツを集めましょうね!」
と、満天の笑顔で、女神が微笑む。
「その時は、よろしくお願いします。」
と、もちろん俺は、答える。
(みんなで、ワイワイすると、楽しいだろうね~。)
はやくも、妄想する俺だった。
さらに、フォウさんの話しを聞くと、彼女は、甘いものが大好きみたいだった。
(まぁ、女の子たちは、そうだろうね。)
ユリも、同じだったし…。
ミカ様といっしょに、ハチミツたっぷりのホットケーキや、ハチミツをたっぷり練り込んだクッキー。
ハチミツたっぷりのアップルパイ…などのお菓子を作ることを、楽しそうに話してくれた。
(おいしそうですね。…でも、少し甘いものが苦手な俺です…。)
奥の院をさらに抜けると、小さな畑があった。
小さいといっても、一辺が30メートルくらいの正方形の畑だ。
(日本でいえば、1反くらいかな。)
家庭菜園には、十分すぎる広さだろう。
その畑には、色んな種類の野菜が育っていた。
正方形の畑は、さらに4つに別けられていて…葉物、実物、根物、茎物のブロックに別けられていた。
通路には、モミガラが敷き詰められていて、ウネもキレイに立てられていた。
まるで、トラクターで立てたウネのように…。
農家出身の俺からみても、「お見事!」というくらいの…。
ミカ様の趣味なのだろうが、完全に趣味のワクを超えていた。
(ミカ様も、本職ですか?)
……なんてね。
いろいろな説明を受けながら、フォウさんと、散策中も、なんだか久しぶりで、ドギマギしている俺…。
なんだか、中学生みたいだな。
そんな俺とは、対象的に、元気ハツラツ笑顔いっぱいのフォウさん。
そのフォウさんから、
「ホークさん。2カ月ぶりだけど…なんだか逞しくなりましたね~。」
と。
「えっ? そうですか? 自分では、よくわからないですけど…ありがとうございます。」
フォウさんに、そう言ってもらえると、うれしいです。
「橘さんの修行は、かなりキツかったでしょう?」
「ええ…。それは、もう……地獄の……。」
思い出したくない、光景が……
「ふふふ。大丈夫ですよ~。 ここだけの秘密にしておきますね~。」
笑顔満天のフォウさん。
めちゃかわいい!
「じつは、私も橘さんから、剣術を習っているんですよ~。護身程度ですけどね。」
(…なんと!)
「では、フォウさんは、姐弟子ですね~。これはこれは、失礼いたしました。」
と、おどけて一礼してみせた。
すると、フォウさんも胸を張るポーズを決めて…
「うむ。苦しゅうないぞ~。」
…だって。
めちゃくちゃかわいい!
ほんと、あなたには、参りました!
「では、これからは、姐さん…と、呼ばせていただきます。」
と、また一礼してみせた。
「うむ。よろしい!」
フォウさんが、しめた。
「あははは!」
ふたりで、笑った。
まるで、演劇をしているみたいに…。
畑のすぐそばの溜池のところで、少し休憩を取りながら、今回決まったことを話した。
「もちろん、極秘ですよ~。」
と、念を押したけど…フォウさんは、王族だから、すでに概要は、知っているかな?
ドレンさんあたりから、報告があるだろうね。
…でも、
「橘さんが、副隊長???」
って、驚いていた。
フォウさんからみても、橘さんは、生涯第1部隊に所属するだろう…と、思っていたらしい。
(やはり…そうか。)
ザク王や、先ほどのジーク様の反応をみても…ね。
橘さんの覚悟を、俺は、しっかりと受け止めて、橘さんの決意が正しかったと、証明できるように、しっかりとがんばることを再度、心に刻んだ。
きゃあ―――!
昨日…投稿していたら、最後の方で、スマホを持つ手が、滑り………
入力していた文章が全て消えました……
ショック……。
今日、やっと立ち直り、再度…投稿しました。
無事に終わって、よかったです。
投稿するみなさんも、くれぐれもご注意ください。
さて…フォウのやさしい声で、ティフブルー王国の説明を受けるホークは、幸せそうですね!
よかったね!
…ちょっと、八つ当たり?
すみません…。
さて、次回は、ある人の初登場です。
フォウも、少し……
では、お楽しみに。




