第43話 接見(5)
話しが、ひと段落したところで、またあの執事の方が入ってきた。
(ナイスタイミング!マジですごいな!)
心の中で、大賞賛だった。
華麗な仕草で、お茶のおかわりを、注いでくれる。
ちなみに、今日の紅茶は、「アールグレー」です。
ベルガモットのさわやかな香りが、とても好きだね。
「ありがとうございます。」
ひと息つきながら、橘さんとジーク様が談話している。
オヤジたちのたわいもない、趣味の話しだった。
聞こえてくる内容は…どうも、「虫」の話しらしい。
このオヤジ…失礼。ジーク様は、虫が好きみたいだった。
今から、温かくなっていくから、虫たちが活動を始めるのが、楽しみらしい。
橘さんに、楽しそうに語っている。
その姿は、少年のような感じだった。
(いつの時代でも、男って奴は、趣味の話しになると、キラキラだね。)
そして、どうもジーク様は、「蜂」を育てているらしい。
(…ほう~。)
ハチは、俺も田舎のときから、オヤジといっしょに、飼っていた。
ブルーベリーやオリーブの受粉に、とても助けてもらっていたのだ。
「飼っていた。」というと、ちゃんとした養蜂みたいに、思われるけど、別にそうでは、ない。
ただ…庭にあったクヌギの木に、木箱を設置してあげた。
そうしたら、自然とハチちゃんが、住みつくのだ。
ハチちゃんが住みついたら、木箱を増やしてあげると、ハチちゃんが増えていく…ということだった。
そして、ハチちゃんが集めた蜜を、年に1度わけてもらう。
家族みんなで、ハチミツを絞って、楽しんでいた。
その頃のことを、ふっと思い出して、ニヤけていた。
…そう1度…ユリが、ハチミツを採っていたときに、ハチちゃんに刺されて、大騒ぎしたことを思い出した。
(…ほんとユリって、ドジで可愛いかったなぁ~。)
…でも……俺は………。
おっと?いけない!
俺は、戻る。現実に…。
話しを戻そう。
そうそう、ハチちゃんだ。
ジーク様とミカ様も、楽しくハチミツを採取しているみたいだった。
「初摘みのハチミツができたら、分けてあげよう。」
と、ジーク様がおっしゃってくれた。
「ありがとうございます。楽しみです!」
俺は、元気に答える。
そのときだった。
「コンコン。」
ドアがノックされて、
「失礼します。おじい様。」
そう言って、入ってきたのは、フォウさんとミカ様だった。
「おお~。待っておったぞ。」
ジーク様が答える。
俺と橘さんは、間髪を入れずに、サッと立ち上がり、一礼した。
(だいぶサマになったかな?)
ミカ様とは、2週間ぶりくらいだったが、フォウさんとは、2カ月ぶりくらいかな?
相変わらず、女神オーラが、すごい!
ふたりとも、元気そうでよかったです。
「フォウちゃん。 ホーク君は、王宮は、初めてだから、案内してあげて。 私たちは、少しお話しがあるから。」
ミカ様がそう言うと、フォウさんは、うなずいて、俺を案内してくれた。
ジーク様とミカ様、そして橘さん。
(三武神かぁ~。)
さすがに3人揃うと、オーラがすごい!
ジーク様は、穏やかだが、芯のある強さを感じさせるオーラ。
ミカ様の溢れる慈愛…聖母みたいな、あたたかいオーラ。
師匠の言わずと知れた、達人のオーラ。
(ほんと、伝説に相応しい人たちだなぁ~。)
あらためて実感した。
ということで、俺は、お言葉に甘えて、女神オーラのフォウさんに、王宮を案内してもらうことになった。
この王都「グロリア」は、人口約17万人。
ティフブルー王国の総人口が約20万人弱なので、この王都におよそ8割程度の人が集まっている。
かなりの集約力だ。
大半の人が軍関係者である。
実用部隊の第1~5部隊で、5万人弱。
第1~3部隊は、少数精鋭なので、数は、少ない。
全部で、およそ100人程度。
攻撃主体の第4部隊が、3万人ほど。
防衛主体の第5部隊が、2万人ほどだ。
その軍を支える組織が、7万人ほど。
内訳は、軍直轄…(建築、土木、武器製造など)…の仕事に、3万人ほど。
間接的な仕事…(食品製造、備品製造など)…に携わる人が4万人ほど。
残りの5万人ほどは、その家族関係者だ。
(妻、子ども、引退者の配偶者。)
ちなみに、この世界には、「貨幣制度」がほとんどない…と、いえた。
…いや。ない…と、言っていい。
1部の有力者が、来訪者たちの知識を元に趣味的に芸術作品のたぐいとして、装飾された金貨などを作ったものがある程度。
国民生活は、物々交換で成立していた。
必要品などは、国から支給される。
食事なども、食堂があらゆるところにあり、朝昼晩の3食しっかり食べられる。
酒などの嗜好品も、専門の部署があり、申請すれば、配給される。
食に関しても、地元の料理は、もちろんのこと。
地球にあった、和洋中のバリエーションがあった。
これらは、地球からの来訪者たちの知識を元に、再現されたものだろう。
この世界には、理想的な社会システムが構築されていた。
…で、話しを戻して、人口の続き。
あとの3万人弱の国民が、農業、漁業でティフブルー王国の民の胃袋を満たしている。
王都の周辺(特に南側)は、豊かな穀倉地帯があり、この世界の農業は、魔法効果と融合して、独自の発展を遂げていた。
地球のような、近代的ハウス栽培や水耕栽培などは、ないけど…結界魔法により、温度を一定に保ち、トマト、ナス、ピーマン、キュウリ、タマネギ、ジャガイモなどの主要野菜は、年間を通じて栽培されている。
その他の季節の野菜は、それぞれの気候にあった畑で、栽培されていた。
それと同時に、畜産も進んでいて、牛、豚、鶏の飼育も行われていた。
漁業に関しても、豊かな海があるから、けっこう盛んらしい。
(今度、見てみたいね。)
なので、この世界の食糧事情は、かなり豊かだった。
こういう事情もあり、貨幣制度は、必要ないのだろう。
なにより国家(王国)に、所属して、貢献(労働)していたら、飢えることがないからだ。
だから、この世界の雰囲気(風習)は、いい意味で、ノンビリしているのだろう。
加えて言うならば、ヤマタノオロチやデモンズの脅威が無ければ、ほんとに楽園と呼ぶにふさわしい世界だったのかも?
…いや。デモンズなどの脅威があるからこそ、この平和を守ることの努力を惜しまないのかもしれない。
いや~。執事さんの華麗な仕事は、見てみたいですね~。
ホークじゃなくとも、見とれるかも?
それから意外にも、紅茶が好きなホークがかわいい。
そして、ジーク。
少し少年っぽいところが、ホークには、安心できたところでした。
オヤジ呼ばわりになっているし……。
気をつけてね。
しかも、ハチちゃん…共通の趣味があって、とてもうれしいホークです。
蜂蜜たっぷりのお菓子には、少し遠慮がちだけど…。
蜂蜜の採取は、楽しみですね~。
絞りたてのハチミツは、おいしそうです。
私にも、ちょうだい!
おっと?スミマセン。
フォウから語られるティフブルー王国のことに、感心するホーク。
特に農業に関しては、興味津々ですね~。
ホークも農業人だから。
そして、「お金」がないことには、どびっくりしたホーク。
地球の現在を知るホークは、お金がないことに、ある意味、共感します。
ホークは、思っているのですよ~
「お金がモトで、争いが起こる!」…と。
だから、この世界の幸福感に、ホークは、感動しているのでしょう。
まぁ、ロマンだから…。
さて、次回は、さらに詳しく王宮のことを教えてもらうホークです。
お楽しみに。




