第38話 出発
ということが、70年前の大戦のあらすじだった。
前半は、アレだが…後半は、やはりファンタジーだな。
おまけに、ヤマタノオロチ…聞いた話しなので、なんとも言えないが、そこまで凶悪には、感じられなかった。
むしろ、「ギャグか?」…と、思えるほど。
でも、実際には、その大戦で、何百人という人たちが、亡くなった。
地形も変わり果て、その復興には、とてつもなく苦労しただろう。
やはり人類にとっては、災厄なのだ。
そして…やはりこの人たちは、タダ者では、なかった。
邪蛇神を相手に、そんなバカげた方法を実際にした…ということの方が、どびっくりである。
まぁ、日本人には、知られている話しではあっても、こちらでは、あり得ない話しだろう…し。
その神話が、本当だったということにも、驚きだった。
もし、現代日本だったならば、超極秘事項だろう…な。
まぁ、話しは、理解した。
俺は、思う…。
案外、うまい酒とうまいメシがあれば、ムダな争い事は、無くなるのでは、ないか…と。
(まぁ…そこまでのことは、いち兵士たる俺が考えても、仕方ない話しでは、あるけど…ね。)
デモンズの真の目的や、この世界の隠された真実とか、一通り理解できた。
ヤマタノオロチは、少し置いておいて…当面の問題としては、俺に対してのデモンズからの「チョッカイ」だろう。
俺としては、デモンズからの招待を受けて、本拠地に殴り込みたい気分だが…。
まだ、それは、やめておこう。
(みんなにも、迷惑をかけるし…。)
そして、橘さんとドレンさんの意見では、敵にこの場所は、バレていると考えられるから、さらなる襲撃があるだろう…と。
(そこは、同感だ!)
なので、防衛機能がしっかりしている王都の方が良いと、いうことだった。
そして、そろそろ俺を正式に、護衛部隊に入隊させてもらえるらしい。
まもなくこの「居候」という立場から、出世できるわけだ。
(この国の王都というところにも、興味があるし…。)
反面…この居心地がいい別荘とのお別れが、少しさびしい。
(半年も住んでいると、愛着も湧いてくるんだなぁ~。)
と、しみじみ感じる自分に気がついた。
そして、次の日。
「王都に出発するぞ!」
ドレンさんから、いきなり言われた。
「いきなりですか? まだなにも用意していないけど…。」
戸惑う俺に…
「ゲートで行くから、必要最小限でいいぞ。」
と、ニヤけるドレンさん。
(俺が、ゲート初めてだと思って、楽しんでいるな…。)
そうなのだ!
「ゲート」ってやつを初めて、体験するのだ。
この世界にやってきて、魔法というものを初めて見た。
魔法は、ファンタジーのかたまりだった。
憧れるけど…俺の脳ミソでは、まだまだムリそうなので、少し距離をおいていた。
そして、魔法の中には、瞬間移動できる技が、あるらしい。
この「ゲート」が、夢の瞬間移動を体験させてもらえるものなのだが…。
俺は、今まで、これを使ったことがない。
…いや、正確に言うと、使えない。
もっと、厳密に言うと、俺にお出掛けする…したい場所がなかった。
(この世界の地理は、まったくの無知だから!)
だから…使う必要がなかったのだ。
決して、恐くて逃げていたからでは、ない!
だが…とうとう、その時がやってきたようだ。
逃げずに、立ち向かおう…。
切り替えるのだ。
これは、「お化け屋敷」ではない。
「フリーフォール」なのだ…「タイタン」なのだ!
ただの絶叫マシンなのだ!
…と。
そう考えると、少しだけワクワクしてきた。
俺は、初めてジェットコースターに乗る子供のようなワクワク感を覚えた。
そして、妄想が膨らむ。
(どんな感じなのだろう?)
昔、テレビアニメでみた「宇宙戦艦ヤ〇ト」や「タイムボ〇ン」に出てきたワープシーンを思い出した。
あの「グニャグニャ感」を体験できるかも?
…と、そんなファンタジーを期待しながら、荷物をまとめていた。
荷物といっても、俺には、このサバイバルキットのリュックサックしかないけどね。
おっと?
肝心のハーモニカを忘れては、いけないぜ!
俺は、バトルチョッキの胸ポケットに、大切にしまって、半年間お世話になった部屋を後にした。
「お世話に、なりました。」
ふふふ…。
ゲートですか?
とうとう、ホークも体験する時が来ましたね。
じつは、瞬間移動に、ビビっていたホーク。
まぁ、ふつうの人間だったら、そうだよね。
でも、切り替えて、絶叫マシンだと、思えば、楽しいかもよ?
あっ?そうそう。
ホークが言っていた「フリーフォール」と「タイタン」だけど…
残念ながら、「スペースワールド」は、閉園したんだよ。
ちょっと、さびしいね。
ああ…また「フリーフォール」に乗りたいね~。
おっと?話しがそれて、すみません。
さて、次回は、とうとう王宮にやってきたホーク。
王様との面会も待っていますよ。
緊張しないで、落ち着いてね。
では、お楽しみに。




