第35話 史実
橘さんから、唐突に聞かれた。
「ヤマタノオロチを知っているか?」
…と。
(???…。)
まぁ、知っていると言えば、知っている。
「日本神話の話しで、スサノオノミコトに退治された…というくらいかなぁ~?」
と、俺は、答える。
「それくらい知っておれば、充分じゃ。」
「…で、そのヤマタノオロチが何ですか?」
「うむ。…その話しには、続きがあってのぉ~。退治されたヤマタノオロチは、封印されて、ある場所に移されたのじゃ。」
「……って。もしかして、ある場所というのは、ここですか?!」
「うむ。そうじゃ。」
……ヤマタノオロチ…実在したのか!
やはり、ファンタジー!
しかし、それって、何千年も昔の話しじゃあ…。
いや。ちょっと待てよ。
では、現在は、どうなっている?
まだ、封印されている?
それで…デモンズが、どう関係している?
…いや…。
「デモンズが封印を解こうと、している?」
「おおむね正解じゃ。」
「概ね正解…ってことは、まだ何かあるんですか?」
「うむ。」
と、うなずいて、橘さんは、話しを続けた。
真相の核心に向かって…。
そもそも「デモンズ」という名前は、ここ最近2~300年の間に、呼ばれるようになった新しい名前だそうだ。
その母体となるのは、さらに千年以上前に遡る。
その昔、ある男とその従者の男…ふたりの男がこの世界に、来訪してきた。
その男は、「悪意の根源たるヤマタノオロチ」の残留思念に同調しうる能力を持っていた。
もともと、この世界に封印されていたヤマタノオロチだったが、長い年月の間に、封印で抑えきれなかった巨大な妖気…凶悪な妖気が、漏れ出していた。
そして…その男は、契約を結ぶ。
ヤマタノオロチの封印を解くことを…。
その対価は、「力」。
封印されても、なお漏れ出している凶悪な妖気を扱える力を。
契約を結んだ男…それが「龍山」。
デモンズの総帥となる男だった。
それから、何百年かの時を経て、その契約が実行された。
いや。実行されそうになった。
それが「70年前の大戦」だった。
70年前の大戦を語る前に、ある史実がある。
それは、この世界…「ゼクセル」の成り立ちに関わる物語。
各王国に残されている文献に書かれている史実だった。
太古の昔…日本神話の頃。
スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治した。
退治は、したが…その妖気の巨大さで、消滅までは、できなかった。
スサノオノミコトは、封印して、どこか遠い地に隔離することを考えた。
その命を受けたのが、スサノオの子である「大年神」(オオトシノカミ)と、その妹の「宇迦之御魂神」(ウカノミタマ)だった。
2神は、「カグヨヒメ」(オオトシノカミの妻)と「オホカグヤマトミ」(オオトシノカミの子)を従者として、同行させた。
この4神によって、ヤマタノオロチは、流刑されたのだった。
スサノオより与えられた神舟「土舟」(ツチフネ)は、光より速く航行する能力があり、次元の壁さえも越える能力を持っていた。
まさに神に等しい力を持つ舟だった。
その「土舟」によって、ヤマタノオロチは、「ゼクセル」に流刑されたのだ。
その頃の「ゼクセル」は、生まれたての惑星で、海しか存在していなかった。
そこでオオトシノカミは、土舟を使って「大地」を創造した。
そして、大地と化した土舟の中に、ヤマタノオロチは、封印されたのだ。
その「封印の地」を護るように…
西に、「オオトシノカミ」。
北に、「ウカノミタマ」。
南に、「カグヨヒメ」。
東に、「オホカグヤマトミ」。
…が、それぞれ4方から封印を守護したのだった。
その4方が今現在の王国へと、移っていった。
ひらたく言うと、それぞれの神の末裔が、その王家にあたる…ということなのだ。
西の「ティフブルー王国」は、オオトシノカミの末裔。
東の「ノビリス王国」は、オホカグヤマトミの末裔。
南の「ブライトウェル王国」は、カグヨヒメの末裔。
北の「チャンドラー王国」は、ウカノミタマの末裔…となるのだ。
そして…その中心たる「封印の地」は、霊峰「オニール」(9372メートル)だ。
余談だが、「オオトシノカミ」と「ウカノミタマ」は、食物の神、女神として、知られている。
この「ゼクセル」の食物が地球と、さほど変わらないことに、納得いく。
あと、「オオトシノカミ」は、別名「来訪神」とも呼ばれるように、あらゆる地域を自由に往来したと、考えられる。
しかも、神舟「土舟」を使って、惑星「ゼクセル」との「道」を作ってしまった。
その影響で、地球からたまに「来訪者」が現れると、考えられる。(一方通行だが…)
あと、魔法などの超常現象は、4神と土舟の神通力の影響だと、考えられる。
さらには、地球からの来訪者が強い特殊能力を持つ理由としては、この「ゼクセル」にある結界を通り過ぎる際に、その力が肉体…あるいは、精神に宿る…と、推測される。
魔獣に関しては、ヤマタノオロチが発する妖気によって、突然変異した獣だった。
このような影響を後世に残すとは、当時の神様たちも、思いもよらなかっただろう。
いや~。
橘から語られる、史実には、ホークも、どびっくりだね。
半分以上、聞き流しているみたいだけど、しっかりと聞いていてね。
それにしても、ヤマタノオロチとは…。
そんな化け物に、人類は、どう立ち向かうのでしょうか?
そして、この惑星の成り立ち。
地球からの来訪者は、古代神の影響でしょうか?
まぁ、そのあたりは、はっきりとは、解明していないので、あくまで推測の域によるものでしょうね。
さて次回は、さらなる激闘が始まる予感です。
お楽しみに。




