第32話 伝説
デモンズからの襲撃事件の翌日。
ドレンさん率いる調査隊が別荘にやって来た。
昨日の夜に橘さんが王都の方へ、連絡・報告をしたみたいだ。
(ホウ・レン・ソウは、組織内では必須だね。もちろん俺もそのことは、叩き込まれている。)
やって来た調査員は、4人チーム編成だった。
ドレンさんとは、ちょっと違う軍服の4人。
それぞれからは、やはりただならない気配を感じる。
…そう。例えるなら…まさに警察官!
ビシッとした、まさに警察官!!
傭兵の俺たちとは、違う雰囲気。
魔法使い特有の雰囲気だろうか?
シルビアさんに似た気配を感じる。
(同じ魔法使いでも、フォウさんは、ちょっと違う雰囲気だけど…。)
まぁ、仕事ができる人の雰囲気に間違いなかった。
みんなと、軽く挨拶を交わして……
俺と橘さんは、ドレンさんに昨夜の出来事を詳しく話した。
まぁ、橘さんがおもに話してくれたけどね。
(俺は、口下手だから…。)
一方で、調査隊の方は、戦闘現場をなにやら魔法で、鑑定・分析しているみたいだった。
(日本でいうところの科捜研だろうか?)
なかなかに洗練された部隊のようだ。
皆テキパキと、作業を行っていた。
よくわからないが、緻密さを感じる魔法陣がいくつも出現していた。
さすが魔法大国ティフブルー王国だと、あらためて感心したのだ。
後日聞いた話で、襲撃してきた「ヤザン」という男は、デモンズ内の「七曜の星」と呼ばれる7人の幹部のウチのひとりで、「土師の星」の異名を持つ男だということを知った。
そして、思い出す…橘さんが言っていた言葉を…。
「あのような小者」って。
確かに、格闘戦は、それほど強くないように感じたけど…魔法に関しては、シルビアさんクラスの力があるように感じた。
(俺も、魔法に関しては、よくわからないけどね…。)
それを小者とは…ちょっと焦った。
(さすが師匠!)
おっと?
話しが、それてしまった。
もとに戻ろう。
調査は、2時間ほどで終わり、この情報を王都にある専門機関?…(たぶん。ミカ様あたりかな)…で、分析して、デモンズの動向が判明するらしい。
いや。ほんとすごい技術だ!
調査隊が戻ったあと、久しぶりにドレンさんと個人的に話した。
あの戦闘の中でひとつ…ヤザンの言葉で気になっていたことがあったので、聞いてみた。
それは、「伝説の三武神」というやつだ。
その内のひとりが橘さんで…「抜刀の橘」と、呼んでいた。
「伝説の三武神」に、「抜刀の橘」…とは、いかにも興味をそそる言葉じゃないか?
隠密の血が騒ぐとは、このことですね。
……が、ドレンさんは、あっさりと教えてくれた。
(なんかの機密情報かと、気にし過ぎだったようだ。なまじ自分が隠密だったりしたからな……思い込みは、厳禁…と。)
「三武神」…70年くらい前に起きた大戦の英雄たちの称号。
「金剛力の王」 「叡智の女神」 「抜刀神」の御三方だ。
「金剛力の王」とは、先代の王「サウスランド・ジーク」その人。
何ものにも、屈することのない、真の強さを持つ王。
「叡智の女神」とは、その金剛力の王たる者の相棒~妻である「サウスランド・ミカ」その人。
溢れんばかりの慈愛と、その美貌。
そして、万物の理を知る女神。
「抜刀神」とは、そんなふたりを護る最強剣士。
神刀「クサナギ」を振るう剣士「橘 康介」その人であった。
先代の王は、さておき…(まだ会ったことないし…)…橘さんとミカ様……このふたり、ただ者ではない…と思っては、いたけど…本当に伝説とは……。
どびっくりである!
そんなふたりに対して、俺は、気軽に親戚のおじちゃん、おばちゃんのように接していたことに、冷や汗だ!
…が、今さらだろう。
(気にしては、ダメだ!)
ドレンさんも、そこは、同感らしく…
「あまり気にしなくていい。今のままで大丈夫だ。」
と、俺の肩を持ってくれた。
でも…
「公の場では、ちゃんとしないと。」
と、クギは、さされた。
(もちろんです。わかっておりますとも!)
前王には、もちろんのこと…ミカ様には、絶大なる支持者…いや。信者といっていいほどの人が敬愛しているらしいので、気をつけよう!
橘さんは、アレだ。
まさに剣の鬼なので、体育会系の野郎どものカリスマだった。
もちろん弟子も多く、弟子志願者があとを絶たない状況なので、俺が現在マンツーマンで鍛えられていることがバレると、いらぬ嫉妬を受けるかも?
そこも注意しよう。
あと、意外にも橘さんには、女子の隠れファンが多いらしい(ドレンさん情報)。
…なるほど。あのシブさが「オジサマきゅん!」を刺激するのだろう。
そのあたりも要注意だな。
(特に女子は、苦手だからな!)
そんな感じで、伝説を知った俺は……
変わらず、橘さんの地獄(修行)を受けるのだった。
この世界の科捜研か~。
なんかスゴそう~。
さておき、伝説の三武神のことを知ったホーク。
そりゃあ、伝説に対して、親戚のおじちゃん、おばちゃんのように接していたら、ちょっと焦るよね。
まぁ、気にしないホークの性格は、ある意味大物だね。
さて、次回は…やはり格闘オタクが集まると、やることは、ひとつみたいですね~。
まぁ、死なないように、気をつけてね。
では、お楽しみに。




