第30話 激突(終)
敵のあとを追った橘さんの気配をたどり、なんとか間に合ったようだ。
(あの鬼神と化した師匠の戦闘が見れるかも?)
だが…俺が見たのは、戦闘ではなく、蹂躙だった。
師匠の繰り出した斬撃は、まさに一閃!
一閃だが…ほんとうは、違う。
その一瞬のうちに、師匠は、幾度となく敵を斬った。
その数…13回。
そして、最後の一太刀には、「なにかの力」が、込められていた。
その「なにかの力」によって、敵の体は、塵と化したのだ。
「なにかの力」…は、まだ、今の俺には、理解できなかったが、師匠の「強さ」は、充分に理解できた。
(恐るべし! 橘 康介!)
免許皆伝をもらったといえども、やはりまだ、師匠の足元にも及ばない…。
そして、刀を収めた師匠に、
「すみません。まだまだ未熟でした。そして、ありがとうございます。」
と、一礼した。
(敵を逃がすとは、なんたる失態。…でも、いいものを見せていただきました。)
「いやいや。初めての刀での戦闘にしては、よくやった。78点…というところじゃ。それに…最初にヤツの体に、傷を付けてくれたおかげだしのぉ~。
はっはっはっ!
さあっ。帰って、飲み直そうぞ!」
笑う橘さん。
俺の失態など、気にする素振りも見せず、豪快に笑う。
「師匠には、かないませんね。」
俺も微笑んだ。
(……?)
少し疑問。
「傷をつけたおかげって、どういうことですか?」
橘さんに聞くと、俺が最初にマグナムでつけた傷のおかげで、俺のオーラ?念?みたいなものが、敵さんにマーキングされた感じらしい。
…で、そこから、そのオーラをたどって、逃げた敵を補足できたらしい。
(…なるほど。そういう技もあるのか?)
ちょっと、できれば俺も、その技を習得したいと、考えたのだった。
それと、もうひとつ。
「わざと逃がして、敵さんの情報を掴む~という作戦は?」
と、尋ねると。
「あんな小者では、たいした情報は、得られんじゃろ。…それに、ヤツは、この地を汚したしのぉ~!」
と、恐ろしく冷たい笑顔の師匠。
(おお~!怖っ!)
この件については、おしまいにしよう。
大人の判断をした俺だった。
こうして、なんとか無事に、この世界での初戦闘を終えた俺なのだ。
後日談。
俺と橘さんは、別荘に戻ると、ほんとうに飲み直した。
…が、その前に、やるべきことがあった。
掃除だ!
土人形の襲撃だったから、部屋の中が泥だらけ…。
(…てめえらのせいで~!)
この時から、俺も本気でデモンズのヤツらを恨んだ!
許さん!
敵認定だ!
キレイに片付けてから、確認する。
別荘に損害は、なかった。
(よかった~。壊れなくて…。ミカ様が悲しむところだったね。)
あっ?なるほど…。
師匠のあの怒り…いたく納得した。
掃除を終えて…ゆっくり、のんびりと温泉に入って…
「はあ~癒されるねぇ~。」
そして、お待ちかねです。
「お疲れさまでした~!」
と、冷えたビールで乾杯だ!
男ふたりの宴は、まだ終わらない。
橘の戦闘シーンを見れたホークは、だいぶ幸運だったね。
でも…13回って…いったい?
一瞬で、13回も斬る橘もすごいけど…
それを認識できるホークも、やっぱりただ者じゃないね~。
じつは、この戦闘シーンのおかげで、ホークには、ある考えが、浮かび上がるんですね~。
まぁ、この話しは、まだ先のことです。
しかし、やはり戦闘に被害は、つきもの。
ホークたちも、例外ではなかった様子。
…で、やっぱり酒好きの師弟関係。
まぁ、ほどほどに…ね。
さて次回は、久しぶりにドレンが登場です。
元気だったみたいですね。
お楽しみに。




