第27話 激突(2)
敵の存在を認識した瞬間に、俺は、マグナムを3発…連射した。
俺は、特殊部隊であらゆる殺人術を身につけた。
その中でも、得意なのが格闘術。
俺は、幼いころからオヤジに空手…みたいなものを教わった。
空手みたいなもの…俺が育った田舎には、道場なんてものは、なかった。
だから、オヤジから教わる術が、すべてだったのだ。
そして、部隊に入ってから、オヤジの古い知り合いの人から、その技が「キックボクシング」ということが、判明した。
(オヤジよ。せめて、そういうことは、教えていて、欲しかった。)
まぁ、それを言っても、仕方ない。
オヤジには、「決して、ケンカなんかで、使っては、ダメだ!」と、言われていたからな。
俺が、格闘術をしていることは、妹のユリしか知らないことだった。
…で、部隊の訓練で、本格的に技を叩き込まれたわけだ。
技の下地は、あったから、すぐに俺は、格闘術でのエキスパートになった。
それと同時に、得意だったのが、「スナイピング」だ。
これも幼いころから、オヤジに漁を教えてもらっていたおかげだろう。
モリで魚を突くことで、ターゲットに対する反応などの感性が、身についていたのだろう。
俺は、射撃の腕も、他人より秀でていた。
おっと、話しがそれてしまった。
元に戻そう。
…で、射撃だが、俺は当時の教官から、「常に初弾は、2発~3発撃て!」と、叩き込まれた。
その理由は、簡単だった。
「確実に敵を仕留めるため。」
初弾を回避、又は外した時のためだ。
俺は、忠実にその訓練をこなした。
指に何度も血豆をつくり、何度も潰しては、またつくり…。
そして、身につけた技だった。
3発…。
初弾を中心に、2発目を少し右に。
3発目を少し左にずらして撃つのだ。
そんな訓練の成果が、今まで俺の命を守ってきたのだ。
そして、今もその訓練の賜物だった。
俺が放った3発の弾丸は、敵に全弾命中したみたいだ。
まわりの操り人形が、一斉に崩れ落ちた。
操り人形は、崩れ落ちたが、その元凶たる人物は、まだ健在らしい。
「クックック。なかなかですね~。さすがは、生ける伝説…三武神がひとり。抜刀の橘殿。」
男は、そう言いながら、暗闇の上空から、ゆっくりと、降りて来た。
そして、俺たちの3メートルほど前に、降り立つ。
その男…身の丈は、170センチくらいの痩せ型。
年齢は、40才前後。
髪は、黒色のオールバックの長髪。
真っ黒のロングコートに身を包み、その眼は、鋭く冷徹で残忍さを思わせる。
そして、邪悪に微笑む口から、発する言葉…
「挨拶が遅れて、すみません。わたくしは、デモンズがひとり…名をヤザンと、申します。以後、お見知りおきくだ――――」
「キンッ!」
俺は、長々と話している男を左下から斬り裂いた。
「左逆袈裟斬り」だ!
真っ二つに、斬ったと思ったが、男の右腕が、切断されただけだった。
「チッ!」
なかなかに、油断ならない相手らしい。
不思議なのは、切断面からは、出血が見られないことだった。
おまけに、痛みも感じていないようだ。
ヤザンと名乗った男は、何の動揺も見せずに、話しを続ける。
「やれやれ…。ちゃんと、人の話しは、最後まで聞かないと、いけませんよ。 柳ホーク君。」
おどけて見せる男だった。
「…!。馴れ馴れしく呼ぶんじゃないよ!」
(それに…俺の名前は、「柳 鷹志」だ!)
俺は、続けざまに銃を撃とうとしたが…
「そいつは、本体じゃない!」
橘さんが、制止して、俺の前に出た。
そして、ゆっくりと刀をヤツに向ける。
「おやおや…?あっさりと、バレてしまいましたねぇ~。まぁ、いいでしょう。本日は、挨拶代わりに、参上しただけですので…。では、わたくしは、このあたりで、失礼させていただきます。」
男は、優雅に一礼すると…
「ドサッ」
…瞬く間に、土に戻った。
申し訳ありません。
ちょっと、お仕事が入ってしまいました。
次回に、決着をつけます。
では、お楽しみに。




