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第20話 確信

 そこからは、他愛ない世間話をしているミカとフォウだった。

そんな中、池の方からホークがやって来た。

ホークは、女同士の話しで盛り上がっているふたりを見つけると、邪魔をしないようにと、その場で黙礼した。

「あら?いいのよ。こちらにいらっしゃいホークくん。」

ミカ様が、俺を誘う。

天使のささやきのように聞こえるほどの済んだ声に、導かれるように俺は、あずま屋の縁側に足を向けた。

「お話しの途中に、すみません。お邪魔します。」

「ナイスタイミングよ。話しの「肴」になりなさい。」

相変わらずのミカ様に、紅茶までいただいた。

本日の紅茶は、「ダージリンティー」。

その爽やかな香りは、この庭園に合いますね。

「ありがとうございます。いただきます。」

俺は、ミカ様がいれてくれた紅茶を、おいしくいただいた。

「ふふふ…。何か用があったんじゃないの?」

(あっ?そうそう…。)ミカ様の神対応のおかげで、すっかり目的を忘れていた。

(お礼を言いに、来たんだった…。)

「この度は、俺…わたくしを護衛部隊に加えてくださり、ありがとうございます。誠心誠意を持ってミカ様、フォウ様を御守りしたいと思います。」

折り目正しく、噛まずに言えた俺だったが……ふたりの反応は、ビミョーだった。

(あれ?なんかおかしかった?)

???の俺をよそに、ミカ様とフォウさんは、笑いだした。

「あはははは~。なにかしこまっているのよ~。ふだん通りで、いいわよ~。」

「そうですよ~。ホークさん~。ヘンですよ~。」

……笑われてしまった……なぜに…?

「今まで通りに「フォウさん。」でいいですよ~。」

「私のことは、「ミカちゃん。」…で、いいわよ~。」

なんか双子みたいに、息ビッタリです。

かわいいけど……。

(いやいや。「ちゃん」は、マズいでしょう!)心の中で、ツッコんだ!

でも、今まで通りの方が、俺も助かります。

なにせ、王侯貴族様に対する礼儀作法なんて、知りませんし…使ったことさえ、ありませんから…。

ヘタな薄ら知識で、やってしまうと、その方が失態になりそうで…心配です。

「ありがとうございます。作法は、疎いので、甘えさせてもらいます。しかし、今後は、頑張って勉強したいと思います。」

と、一様なカッコつけをした俺だったが…

「だから、肩肘張らなくていいのよ。ホーク殿。」

「そうですよ~。ホーク殿。」

(……!ショック!)

なるほど…そういうことか!

「殿」なんて、付けられると気持ち悪い!

それは、ふたりにしても、同じことなんだな…。

またひとつ、お勉強させてもらいました。

「すみませんでした。じゃあふだん通りで…。あっ、でも俺のことは、呼びすてでいいですよ。その方がしっくりきます。」

「うんっ。よろしい!では、ホーク。これからもフォウちゃんを護ってあげてね。」

ミカ様のあたたかい言葉に、もちろん俺は…

「了解しました。」

と、体育会系で返事をすると、同時に、心の中では、しっかりと、誓った。

「ホークさん。これからもよろしくね!」

と、「さん付け」のままのフォウさんだったが、100点満点の笑顔の前では、そんなことどうでもよかった。

そんな笑顔を向けられたら、「おまかせください!」って、なりますよね!

この人の、そんなところに、俺は、なんともいえない悦を感じるのだった。

 ふたりからすれば、今さらだったのだろうけど…俺としては、今日初めて、その事実を知ったわけで…。

ケジメは、つけたかったのだ。

(男として…。)

まぁ、そんな俺のくだらないミエさえも、包み込むふたりのウツワの大きさに、今は、甘えておこう。

 それからは、本当に「肴」にされた俺だった。

(さすがミカ様!)

 

 話しの最中、突然のサプライズが!

フォウさんが、取り出したのは、ドレンさんが複製した「ハーモニカ」だった。

俺に、「練習した曲を聴かせたい!」っていうことらしい。

そして、始まるフォウさんの演奏会。

突然のサプライズに、フォウさんの演奏を聴けることに、感謝する。

もちろん、その曲は、知らないけど…すっごくいい曲だった。

(やっぱり、音楽に国境?次元境?は、ないね!)

そして、フォウさんのハーモニカの音色に合わせて、ミカ様が歌った。

それは、やさしくて…あたたかい演奏会だった。

この美しい日本庭園に、こだまするハーモニカの音色と、天使の美声。

まるで、精霊たちが音楽にのって、遊んでいるように……。

木々たちも、サワサワと楽しそう。

フォウさんのハーモニカは、まるでシャボン玉のような…すごく柔らかい音色。

ミカ様の歌声は、そのすべてを包み込むようなあたたかさ。

まさに「天使の歌声」だった。

(聴く人を、ここまで魅了するのか!)

その音色と歌声に、俺は、かつてないほどのやすらぎを感じるのだった。

(すごい!)

俺は、トリハダがたち、頬をつたうものを感じた……。

(これは、……涙?)

バカな!俺が涙だと?

あの日から、一度も泣いたことなど、なかったのに………。

でも…この「涙」は、あのときの「涙」とは、違うものだと、感じた。

そして、この胸を締め付けるような感覚は?

……感情を切り捨て、殺戮マシーンに徹してきたつもりだったが……俺にも、まだ人としての感情が…心が…あったのか?

だが、決して不快ではない!

むしろやすらぎを覚える…はるか昔に、置き忘れた何かが……。

 曲が終わり…俺は、無心で拍手を贈った!

(そうだ!俺は、これを護るのだ!)

はっきりと、心の中に浮かんだ!

この人たちを護る…この笑顔を護る……この幸せを護るのだ!

この平和で、あたたかい雰囲気…これが「幸せ」なのだ。

こんな気持ちいいものを、何人たりとも邪魔は、させない!壊させたりは、しない!

俺のワガママだろうが、関係ない!

(この人を護るのだ!)

俺は、心に固く誓った!






 美しい庭園に広がる、心地よい…フォウのハーモニカとミカの歌声。

ホークは、かつてないほどに感動したのですね。

自分は、幸せになっては、いけない!

などと、たわけた妄想が、次第に消えはじめたホーク。

それでいいんですよ。それが人なのだから。

そして、感動したら、素直に泣いていいんです。

ホークは、そんなあたりまえのことを教えてくれたフォウとミカに感謝感激するあたり、もう人としてのソレを取り戻したと、言っていいですね。

頑張って、自分のしたいようにしなさい!

 でも、そんなホークに、戻してしまう、フォウたちの演奏を聴いてみたいね。

さてさて、次回は、ちょっとマニアな話しです。

では、お楽しみに。

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