この人を絶対に護る!
数日後。俺の身体もだいぶ回復したようだ。自力で歩けるまでになった。 さすが隠密機動隊よ!キビしい鍛錬は、ハンパじゃなかったからな。…あとは、装備のおかげか?
(ボロボロになったけど…。)
俺は、痛みをこらえ立ち上がり、窓からの景色を見ると…なんというか……。とてもキレイな風景。緑に茂る草木と、透明な小川。俺から見ても可愛らしい花畑。おまけに蝶まで、飛んでいる。
(桃源郷か?)
実際、童話みたいなところだな。…ほんと、いったいここは、どこだ?…俺の知る現実世界とは、なんか違和感がある。…いや。違和感しかない。
「コンコン。」ドアがノックされて…
「お加減は、いかがですか?」と、ドアが開き、天使…じゃなく、あの金髪金目の女性が入ってきた。あらためてよく見ると、ビックリするほどの美人さんだった。
(ちょっと、緊張するね。)
「おかげさまで、だいぶ回復しました。ありがとうございます。…あなたが助けてくれたのですね?お礼を言います。…えっと、もしよろしければ、お名前を…。」と、俺が行儀よく尋ねると、その女性は、ニッコリ微笑んで…
「わたくしは、フォウ。…サウスランド・フォウと申します。…あなた様は?」
「あっ?すみません。自分は、ホークといいます。」 あっ。思わず素直に答えてしまった…コードネームだけど…。
もしかして敵…ということは、ないだろうな。…その笑顔には、影がなかったからだ。そして、俺は、質問を続ける。まわりくどいことは、苦手だ。ど直球で……
「ところで、ここは、どこですか?」と。
金髪のフォウと名乗る女性は、なんの躊躇も見せずに
「ここは、わたくしの別荘ですよ~。」って。 ほう。なるほど…たしかにいい別荘だ。 …じゃなくって!
「ふつうは、土地名だろ!」
思わず、ツッコんだ。
「ふふふ…。ホーク様って、いいツッコミをされるのですねぇ~。わたくしは、いつもみんなに『天然だ~』と、言われますの~。」って、すっごくいい笑顔で、答える天使。
(めっちゃ、かわいいじゃねぇか!)
って…あれ?俺の性格…こんなんだった?ケガでおかしくなった?
…じゃなくって。もう1度、真顔で聞いた。
「ここは、何というところですか?」
「…失礼いたしました。ここは、ティフブルー王国のブラデンというところですよ。」
天使もマジメに答えている。
(んん~?どこだ~?…知らん!)
俺は、少しパニックになりながら…
「ちなみに。今は、何年?何月?…ですか?」
キョトンと、不思議そうな顔をして、フォウという女性が答える。
「〇△×年。7月20日ですよ~。」
(なんじゃ。そりゃあ!) あっ。待て待て!ちょっと待て! 俺は、頭を抱え込んだ。
(マジっ?あり得ん!)
とにかく…落ち着こう…。
確か…俺たちの作戦日は、20××年3月16日だったはず…。 まさか、4か月近くも意識不明? …いや。それは、ない。この傷は、まだ数日前って、ところだ。一体どうなっている? まったく理解できん!
思考回路もまだ回復していない俺は、あまりの衝撃に耐えることもできず…ただ、呆然としていた。そして、見かねた彼女に促されて、再び床に入った。
ベッドに横たわり、数時間の間…俺は、なるだけ冷静に現状を分析して、隠密機動隊員らしく、最善の打開策を打ち出すべく、思考したが……はっきり言ってムリ!俺の思考限界をはるかに超えたこの状況に、思いを募らせることの無意味さを痛感し。もう、割り切って…ハラを割って…本当に割れたハラは、痛いけど……
「なんとかなるさ!」的な俺の長所?悪癖?なところが発揮されて…
「特別休暇だ!」と思って、しばらくは、このまま流れに、身をまかせ様子を見てみよう。
(はぁ~。ファンタジーは、苦手だぞ!)
俺は、この訳がわからない迷路から、脱出することもできずに、ただ…体の回復を待つだけだった。