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第14話 出逢

「サウスランド・ミカ 123歳 ♀ 160センチ ?キロ ティフブルー王国前王妃 各魔法に精通しており王族機関の御意見番 趣味 家庭菜園 」


 気付けば、夏の陽射しもだいぶやわらいできた。

この世界に来て2カ月が過ぎた。

…早いものである……。

この日も、いつもと変わらず、体力トレーニング、魔法トレーニング、そして、念動力トレーニングを終える。

俺自身も、この別荘での生活に、馴染んできたと感じる、今日この頃です。

 そして、なんか日課に近くなってきた「海の幸」の採取を終えて、フォウさんと別荘に戻ってきたのである。

この金髪金目の女神様とも、だいぶ親しく話すように、なってきた。

(女の子が苦手で、陸自に入ってからは、全く、話したことがなかった俺が…だ!)

フォウさんは、第1皇女という立場でありながらも、とてもやさしい人だ。

外見は、見ての通りの美人さん。

背も高く、アスリート選手のような佇まい。

それでいて、上品で優雅さがある。

外見の完璧さから、少し近寄りがたい感じを受けるが、実際に話してみると、どこか天然で、すごくかわいい人だった。

そんな天然のフォウさんだが、やはり王族のお方らしく、芯がしっかりした、強い女性だった。

(妹みたいに、思えることもあるけど…そのギャップが、なんとも……)

おっと失礼!こんなことを思うのは、フォウさんに失礼かもね。

 そんな彼女を、俺は、いつからか…「絶対に護る!」…と、言うと、少しおこがましいけど…「この人を護りたい!」…「この人の笑顔を護りたい!」と、思っているのだ。

そして、俺は、こんな風なひとときを過ごせることを、感謝できるようになっていた。

これも、フォウさんやドレンさん、シルビアさんのおかげだと思う…。

 傭兵をしていた頃が、遠い昔のような感じだ……。

ほんとうのところは、仲間だったみんなのことが、気になる。

俺は、こうして生きながらえたが……いや。実際には、もう死んでいるのかもしれない。向こうの世界には、俺というやつは、存在していないのだから…。

 この世界のことは、どこか夢…のような感覚もある。

事実…いまだに夢を見る。

あのとき、地対空ミサイルで、施設ごと葬られた…どれくらいの仲間が生き残ったのだろう?…と。

 いくら過去に、縛られないように…とは、考えるが、やはり今のホークである、俺の存在は、あの場所から始まったのだ。

いまだに、ホークの名を名乗っているのは、過去に縛られているだけでは、ないのだ。

ホークというコードネームは、すでに俺の1部となっているのだ。

言わば、あだ名みたいなものなのだ。

「柳 鷹志」という名を捨てたわけでは、ない。

 ただ…柳 鷹志という男を知っているのは、もう故郷にいるわずかな知り合いと、ひとりの友達くらいだろう…。

そして、もう…故郷の人たちも、俺のことなど忘れていても不思議では、ないだろう…ね。

 だから俺は、前を向くことを決めた。

この人を護ることを決めた。

たまにウジウジと、昔を思い出すかもしれないが、俺は、ここでやっていくことを、心に刻むのだ!

 ひとつ許してほしいのは、ユリのことだ。

ユリにしたことは、決して忘れない。

忘れては、いけないこと!

 これが、俺の贖罪なのだから……。


 おっと、だいぶ話しがそれてしまった。

元に戻ろう。


 別荘に着くと、見るからに、極上の…白く気品漂う馬車があった。

(おお~!絶対に高貴な…というか、王族関係者だろうね。)

さっそく白い馬車を確認したフォウさんが

「あの馬車は…ミカおばあ様…?」

と、つぶやくと、かけ足で別荘の方へ。

「やっぱりミカおばあ様!お久しぶりです~!」

と、フォウさんが、そのご婦人に甘えるように抱き付いている。

黒髪の艶やかなストレートのロングヘア。

そのすべてを包み込むような笑顔。

そして、そのご婦人にぴったり!というくらいの上品な和服。

なんとも日本人形…いや。俺の感覚では、博多人形のような…かわいい30代?いや20代くらいの純日本女性だった。

(あっ?なんかフォウさんの話しの中で、出てきた…えっと…あの日本庭園を作った人?)

なるほど~その身なりと、あの日本庭園は、ベストマッチだ!

……って、あれっ?

「ミカおばあ様」って、百いくつかの歳って言ってなかった?

俺は、驚愕したが…表情には、出ていないはずだ…!

女性の歳は、トップシークレット!

国家機密なみに、不可侵である!

(昔…ユリに、こっぴどく言われた記憶がある。)

そして、ミカおばあ様との再会をよろんだフォウさんは、護衛の方とおぼしき人と、挨拶を交わしている。

栗毛色のショートカットが、よく似合っている…まさに宝塚の女優さん……しいて言うなら、ベルばらの登場人物みたいな白い騎士の制服を着た、美人衛士さん。

名は、「レベッカ」。

あとのひとりは、なんでここに?というくらいのサムライスタイルの老年の男性。

たぶんドレンさんと、同僚…うわさの護衛部隊…。

ドレンさんと、仲良く話しをしているから、間違いないだろう。

(…っていうか、この人も、ただならぬ気配を感じるんですけど…一体何者?)

見るからに武士…達人!そして…間違いなく俺と同じく日本人だ!

…と、けっこうな衝撃を受けて、玄関前で棒立ちしている俺に、ミカおばあ様が…ニッコリ微笑んで…(ああ~この人も女神系か…)

「こんにちは。あなたがホークさんね?はじめまして、わたくしがフォウの祖父母のミカといいます。よろしくね。」

折り目正しく、見事な佇まいでの挨拶に俺は、緊張しまくりで…

「そんな…丁寧にありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。」

とりあえず、噛まずに言えた。

ああ~めちゃ緊張した。王侯貴族様の対応なんて、いち傭兵の俺なんかが、わかるわけもなく…せめて、失礼がないように…。

気持ちが…ね。

俺は、念願のミカおばあ様なる人と、対面したわけだが…俺の想像していた人物像とは、かけ離れていた。

(おばあ様じゃなくって、お姉様だろ!)

思わず、心の中で、ツッコミを入れる俺だった。


とうとう念願のミカおばあ様と出逢えたホーク。

想像していた人物像とのギャップに、かなりの戸惑いが…。

まぁ、それは、仕方ないね。

だって、フォウのおばあ様だもん。

それくらい受け入れる器がないと…ね。

さてさて。次回は…戸惑うホークと、それを楽しむミカおばあ様。そして…気になる人も…。

お楽しみに。

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