覚醒!
反省会です。
夕飯が終わり、本日の出来事をドレンさんとシルビアさんに、詳しく報告する。
(ホウレンソウは、俺たちの世界では、常識だからね。)
ちなみに、「ホウ」とは、報告。「レン」とは、連絡。「ソウ」とは、相談のことだ。
複雑多様化した現代社会での、組織をうまく潤滑させる技だ。
要は、勝手なまねをするな…ということだ。
ところで、あのときドレンさんが、現れた理由を聞くと、フォウさんからの「通信魔法」なるものを受けて、ダッシュで駆け付けたということだった。
(ふぅん…。)思念を特定の相手に伝える魔法があるらしい。
なんて、便利な…!
携帯電話の魔法バージョンみたいなものだな。
なんにしても、フォウさんが無事で、なによりだった。
(もし…彼女に何かあっていたら、俺の方が絶対に打ち首だよな!)
事の始まりから、説明する。
そして、対処の方法……そこから、今後の対応のやり方を…。
もっと、的確かつ迅速に行う方法を相談した。
俺は、もとの世界では、その手のエキスパートだったが、やはりこの世界では、新米だ。(特に魔法に関しては、ド素人…。)
ふたりと、いろいろ話し合っていると、ここは、異世界なんだなぁ…と、実感する。
基本的な価値観も、もとの世界とは、ちょっと異なるみたいだし…。
そこで、気になったことがある。
護衛任務の際…俺たちだったら、チームで連係するときには、無線連絡で逐一連絡が取れていた。
なので、離れていても、対応することや、危険回避することも、比較的可能だった。
そこで、さっき聞いた「通信魔法」…これは、使える!…と。
ドレンさんたちには、あたりまえのことだったみたいだが、俺なんかにしたら、反則技だ。
電気もないこの世界での、遠距離通信に関しては、ほぼあきらめていた。
そんな便利な魔法があるならば、ぜひとも習得したい。
そうしたら、護衛任務のときでも、かなりのリスクを軽減できると、思う。
情報収集も……。
まぁ、それは、ドレンさんたち正規の護衛部隊の人たちが、キッチリとしているだろう。
俺が、口出しすることでも、ないか?
(…部外者だし。…異世界人だし…ね。)
もしも俺が部隊を任されたら……いやいや。今は、そんなことは、考えなくていい。
目の前のこの女神様に、安心して過ごしてもらうことが、第一だからね。
…おっと。話しがそれてしまった。
元に戻ろう。
まず、この世界では、弱肉強食が顕著だった。王族は、絶対であり、今日みたいなことがあれば、即座に処刑らしい。
(そういうことも含めて、フォウさんは、王族の中でも、かなり寛大な人なんだろうね。)
ドレンさん曰く。このティフブルー国民の名誉ためだろうけど、ああいう輩は、めったにいないらしい。
それを証明するように、この国の犯罪率は、なんと0.1%を切るらしい。
ちなみにこの王国の人口は、約20万人弱。
ということは、罪を犯す人は、200人弱。
1年365日として…1日で1件あるかないか…ということだ。
(なんてこったい!やっぱり平和な世界だった。……すばらしい!)
でも、やはり犯罪がないわけではないので、ドレンさんたちが、いるのだろう。
最近でも、デモンズという輩も、いるらしいからね。
俺は、この世界に対応できるように、まだまだ特訓あるのみ。
そして、絶対にあの人を護る!
…と、あらためて心に刻む!
さてさて。俺の魔法トレーニングも、はや2週間が過ぎた。
おかげで「魔法防御」は、かなりのレベルアップを果たしている…らしい?
(まだまだ、そのあたりの加減は、よくわからない。)
訓練では、ほぼ完璧に攻撃魔法の無効化が出来た。
それに関しては、自分でも上達を感じる。
訓練に、付き合ってくれるフォウさんやドレンさん、シルビアさんには、感謝の2文字しかない。(ほんとに、ありがとうございます。)
…ただ、シルビアさんが…どうも逆に俺を、実験材料にしているフシがある。
(…そう感じるのは、俺の職業病か?)
たまに、覗きみえる笑顔が、怖い…。
まぁ…俺の気のせいかも?
この人たちは、みんないい人ばかりだから……俺みたいな人間は、逆に疑ってしまうのだろうね。
悪いクセだ!……反省する。
…おっと。また話しがそれてしまった。
元に戻ろう…。
そうそう。特殊能力のことで、気付いたことがある。
「念じる」訓練をしている段階で、自分でも寝る前とかに、練習していた。
そして、それは2日前から異変が起きていた。
「念」を集中するために俺は、いつもなにかしらの物を対象にしていた。(ペンとかスプーンとか。)
昔、テレビで、そういう感じの番組を見たことがあった。
子供頃、よく真似をして遊んだことを思い出したのだ。
2日前の晩も、同じように、スプーンで練習していた。
「コト…」
(…?。なんかスプーンが動いた? おっ…もしかして……)
さらに、集中して念じてみた。
「ズリ…」
明らかに、動いた!
……興奮した……
(…なんだ?もしかして超能力?)
今度は、具体的に念じた!
(動け……!)
すると、「スス~」と、20センチくらい、スプーンが滑るように動いた。
(おお~!)
確信した。…なんかわからんが、新たな能力を取得したぞ!
その日は、興奮して、夜遅くまで、練習を続けた。
…続けること1時間。
いささか、集中力も、切れてきて、けっこうしんどい!
魔法防御を使うときの倍は、消耗している。
休息の大切さも、わかっているので、今日は、このあたりにして、すっぱりと寝た。
やはり、疲れていたのか、すぐに意識が、なくなった。
新たな力を手にしつつある俺は、がぜんやる気になっていた。
昨日は、対象物を代えて…さらに大物へと…。
「テーブル」だ!
直径120センチ。高さ100センチ。重さ10キロくらいの丸いテーブルだ。
フォウさんと、いっしょにお茶したテーブルだ。(壊さないように、気をつけます。)
スプーンよりは、かなり大きいが、できるような感じは、する。
(よっしゃ!いってみようか!)
コツみたいな感覚は、つかんできている。
胸の中にある…なんかの「スイッチ」を入れる?…触る? ような感覚。
「念」を集中する。
テーブルを見えない両手で、持ち上げるイメージで……。
(動け!)………
(動けぇぇぇ~!)
「ふわっ」
テーブルが浮いた!
そのまま集中する……テーブルは、俺の目の高さのところで、浮いている。
不思議な光景だった。トリックもなにもない状態で、テーブルが浮いているのだ。
(よしっ!成功だ!)
意識をゆるめていく……すると、テーブルは、ゆっくりと床に降りた。
「ふぅ~。」と、息を吐き、一休み。
(この質量でも、いけるか!)
やはり、昨日のスプーンとは、大違いで、比べるまでもなく、負荷がかかる。
どこか…脳あたりから…首筋あたり…背骨を抜けて、足まで…なんか負荷を感じる。
そして、軽いシビレ…。
体力消耗とは、あきらかに違う…初めて味わう、精神力の消耗…という体感を、身をもって知った。
そのあとは、テーブルを浮かした状態で、左右にまわしてみたりして、いろいろと、試してみた。
試すうちに、だいぶイメージ通りの動きが、できるようになってきた。
そのワクワク感は、昔の幼いころの子供に戻ったような感じで、とても楽しかった。
…だが、精神的疲労は、かなりきつかった!
(もっと、精神力を鍛えないと……。)
よしっ!明日は、岩とかにチャレンジしてみるか?
新たな力…念動力を手に入れたホーク。そのワクワク感は、子供の頃を思い出させて、純粋に力を磨くことの楽しさを思い出していた。
さてさて。次回は、さらなるレベルアップを目指して奮闘するホーク。
だが…やはり、ホークの感じる通りに、シルビアは、実験材料にしているのか?
では、お楽しみに…。




