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覚醒!

魔法トレーニングを始めて、3日。

だいぶ、自分の意思で「魔法防御」を発動できるようになりました。

それはそれは、悪夢のような…もとい、素晴らしい先生たちのご指導のおかげです。

当初、自分は、メンタルが強いから、魔法トレーニングは、平気だ!と、ぬるま湯のような発言をしていたことを謝罪したい。

シルビアさんとフォウさんからのご指導で、俺は、目が覚めたのだ。

今では、「ドレンさんとのスパーリングが、何倍もマシだ!」と、心の中だけで、言っておこう。

まぁ、そこは、いい。俺も久しぶりに味わう新しい技の修得…となれば、必然的に集中力が上がるというものだった。

そして、日毎に感じる自分の成長を、楽しみに感じるのだ。

(こんなにしごかれるのも、特殊部隊に入って以来だな…。)

と、ふと思い出すあの頃だった。

(今ごろ、みんな元気にしているかな?)

…っていうか、みんな大丈夫だったかな?

あの爆撃で、どれくらいやられたのだろう?どれくらい生き残ったのだろう?…と。

いくら心配しても、俺は、この通り、不思議な世界に迷い込んで、しまったのだ。

俺が、みんなにしてあげれることは、ただ思い出すことしか、できない。

それは……ユリのことも、同じだった。

あの日……俺は…………。

「どうしました?ホークさん?」

女神様の声で、現実に戻る俺。

(…現実? どっちが現実なのだ?)

これが現実?…今、この人の前が現実なのか? 未だに迷路の中を、ぐるぐると……。

「大丈夫ですか~?なんか心配なことがあれば、私が相談にのりますよ~。」

と、笑顔満天のフォウさん。

(ほんとこの人は……。)

「あっ…と。大丈夫です。ただ、ぼ~と、してしまいまして…。」

「ふふふ…。まぁ、そういうときも、ありますよね~。」

そう言うフォウさんからは、やさしい笑顔が、俺にさし向けてくれる。

「ホークさん。いっしょに海に、行きましょう。」と、バケツを見せるフォウさん。

「いいですね。またたくさんとって、みんなで、宴会しましょう。」

「はい。楽しみですね~。では、出発~!」

ノリノリのフォウさんです。

(ほんと、この人は……。ありがとうございます。)

沈む俺を引き戻してくれる……

俺は、その女神様の笑顔に、癒やされる…。


それから俺とフォウさんは、海へと、宴会の食材を調達しに、やって来た。

1時間ほど、漁を楽しんだ俺たちは、たくさんのお魚さんと貝さんをゲットして、別荘に戻ろうかと、していたときだった。

前方の浜辺から、3人の男たちが、近づいて来た。

見るからに「ゴロツキ」という感じの風貌だった。

(…ほう。この世界のヤンキーって奴か?…でも、あまり関わりたくは、ないな…。)

俺は、フォウさんの腕をとり、彼らから離れるように、すれ違おうとした。

「おいおい!いい女じゃねえか!」

右端のいちばん小さい男が、なにか言っている。 …続いて、左側のデブ男が

「姉ちゃん!俺たちと、いいことしようぜぇ~!ひゃっひゃっひゃっ~!」

(……下品極まりない!)

俺は、無視して、フォウさんをかばうようにして、早足で立ち去ろうとしたが…

やはり、おいでになりました。

「おいおい!待ちなよ色男!」

と、真ん中のリーダー的な男が、俺たちの行く手を阻む。そして、右手にナイフをちらつかせながら、俺に向けて、

「女置いて、消えな!そうすれば、痛い目には、会わないぜ!」

……だって。

(うわ~!ベタベタ!時代劇かよ~。)

思わず、ため息が出る。

そのとき、フォウさんが俺の左腕をギュッと握った。 …なにかの合図かと思ったら

「この人…魔法使いです…。」

と、教えてくれた。

(マジか~?。どうりで、そのナリで、強気なわけね…。)

その男は、170センチくらいの中肉で、目つきがちょっと鋭い感じのオールバック。

歳は、30前後くらいか?

 ……さてさて、どうしたものかねぇ~。


 絡まれました!こちらの世界での初体験です!

しかも相手は、「魔法使いとその仲間たち(笑)」 いちばんの問題は、相手のターゲットがフォウさんということ…。

「女置いて、消えろ!」って、…ねぇ~バッカじゃないの?

消えるわけないじゃん!

この御方…第1皇女様よ!

なにかあったら、どうするの?

……というわけで、仕方がない。相手をしましょう。

対「魔法使い」は、初実戦。ちょっとドキドキするね。

…だが俺は、この人を護るのみ!

俺は、フォウさんを背中側にまわして、ヤツらと対峙する。

ボディーガードは、お手の物。

本職だしね…。

ただ…魔法戦闘は、初めて。やるしかない!

…まぁ、でも絶対にフォウさんは、護る!

これは、何をおいても最優先事項だ!

俺は、今日までの魔法トレーニングを脳内で反復しながら、意識を集中する。

―――絶対に護る!―――

「キンッ!」と、空気が固まり、魔法防御を発動する。

(これで、攻撃魔法は、防げるはず…。あとは、あのナイフだな。どう使ってくる?そして、あとのふたり…。)

俺は、様々なパターンをシミュレーションしながら、戦闘態勢へと入る。

男は、右手のナイフを揺らしながら、威嚇している。

(右利きだな…では…。)

次の瞬間、男が一歩踏み出して、ナイフを突き刺してきた!

(遅い!)

「バシッ!」俺は、左手で、向かってくるナイフをはたき落とすと同時に、男が踏み出した左足モモに、渾身の右ローキックを入れた。

「ぐあっ!」

俺の右ローキックが、ヤツの太ももにめり込む!もちろん、この時に俺が放ったローキックは、粉砕型のローキックだった。

ふつうのローキックとの違いは、その力の加わり方だ。

インパクトの瞬間に、ヒザから先をひねるようにして、蹴り出す。

要は、コークスクリューブローのキックバージョンだ。

ひねることにより、力を逃がさず、衝撃が100%相手の太ももに伝わる。

太ももを破壊して、相手の動きを封じるローキックなのだ。

ただ欠点もある。

ヒザ関節にかなりの負荷がかかるから、多用できない。まぁ、当たれば、相手の動きを封じることができるから、そこまで、気にしていないけど…ね。

このローキックが入った男は、呻きをあげ、痛みに耐えきれず、その場に倒れ込んだ。

「この野郎!」

と、小さい男が、ここぞとばかりに、殴りかかってきたが、何のことはない。

俺は、その男の顔面を前蹴りで、吹っ飛ばした。

「ぶふっ!」

まともに俺の前蹴りをくらった男は、鼻血をまき散らしながら、大の字にぶっ倒れた。

あっという間に、ふたりが倒されたのを目のあたりにしたデブ男は、恐怖したか…

「あ…兄貴…。」

ただ、ぼう然としていた。

自分たちが、負けるなんて、思いもしていなかったのだろうな。

反撃を諦めさせるように、俺は声を低くして、威圧を込めて…

「ムダだ!もうやめろ!」

そう言った瞬間だった。

魔法使いの男は、まだ諦めていなかったのだ。

火玉弾ファイヤーボール!」

と、自身の最上攻撃魔法を発動した。

そう叫んだ男の手のひらから放たれる火の玉(弾?)を見た!

俺は、「カッ!」と、両目を見開いて、集中する!

「ガキッ!」と、鈍い音と、ともに、火の玉は、掻き消えた!

「…てめぇ…死にたいのか!」

始めての魔法戦闘で、気が立っていたのか、俺はつい…そんな口調で、言ってしまった。(あっ?下品だったか…?)

俺の殺気で、男たちは、完全に沈黙していた。

…まぁ、結果オーライだ!だが…このままでは、終わらせない!

キッチリと、落とし前は、つけてもらおう!

そう思う俺が、一歩踏み出そうと、したとき…うしろから、まわされた手に「はっ!」と、我にかえった。

(そうだった…フォウさんを護ることが…)

「フォウさん…大丈夫ですか?」

俺は、平常心を取り戻して、優しく言った。(言えたかな?)

「わたくしは、大丈夫ですよ~。ありがとう。ホークさん。」

と、微笑んでくれたフォウさんだった。

(強い女性だ!)と、心底思った。

そのときだった…「ガサガサ~」と、すぐうしろの林の中から、ドレンさんが飛び出してきた!しかも右手に斧を持って…。

「フォウ様!お怪我は、ありませんか?」

そう言ったドレンさんは、辺りを見渡し、理解する。

「ふぅ~。なるほど…。」

そして、盛大に叫んだ!

「無礼者!この御方は、ティフブルー王国第1皇女 サウスランド・フォウ様にあらせられるぞ!」…と。

(なんか圧がすごいぞ!ドレンさん。)

男たちは、ドレンさんの言葉に、なにかを気づいたか…みな一様に顔面蒼白して、震えはじめた。

そして、さっきとは、別人のように、かしこまり、土下座して…

「も、申し訳ありませんでした!い、命だけは、ご勘弁して下さい!」

…だって。3人とも、まっ青になりながら。

俺は、ちょっとあ然とした…あらゆることで…。

しかし、そこは、大天使たるフォウさん。

すがすがしい笑顔で…

「今日は、許してさしあげます。」

相変わらずの女神っぷりを発揮して、この場が治まった。

(ほんと女神様だね~。でも、ほんと無事でよかったです!)




なんとか、フォウの危機を護れたホーク。

でも、課題も多く見つかりました。さらに精進しようと、決意するホーク。頑張ってね。

さてさて、次回は、さらなる向上のために奮闘するホークに…あらたな……。

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