この人の笑顔は、俺が護る!
ターゲットは、国境付近の海岸沿い。
岸壁の上にその施設は、あった。
東側と北側は、深い森林。
西側は、断崖絶壁。残る南側だけが、唯一のアプローチコース。
しかし、俺たちは、西側の断崖絶壁から潜入する。
なぜならば俺たちは、隠密機動隊だからだ。
政府の特務機関である隠密機動隊は、あらゆる部門のエキスパートの寄せ集めの部隊だった。
だが、その能力は、非常に高い。
おまけに最新鋭の装備や、まだ市場に出回っていない試作段階の装備や武器などが配備されている。
まぁ……ある意味、実験材料にされていたが、それは、微々たる問題だった。
これ以上ないほどの装備や武器を使用できたのだから…。
そして今日も、その最新鋭の装備を駆使して、任務遂行中だ。
その任務とは、ある政府要人の裁判における証人を奪還、救出する。
それが今回の作戦内容だ。
AM2:00ジャスト…突入開始!
俺たちは、「AIM」と呼ばれる最新鋭のヘルメットを装備していた。
この「AIM」とは、ヘルメット自体がパソコンみたいな小型AIを搭載していた。
機能としては、特殊回線による通信機能は、もとより…あらゆる周波数の通信…及び他の無線通信の傍受。
そして、GPS機能による周囲警戒装置。
さらにヘルメットの前頭部分にあるセンサーによる、暗視装置とエックス線装置が搭載されていた。
これらから得られた情報は、ヘルメットのシールド内側に表示される。
言えば管制塔を被っているようなものだ。
そのおかげで俺たちは、情報戦において、ほぼ無敵と言っていい状態だった。
特に暗闇の中での戦闘においては、右に出る者は、いなかった。
そして……今日の作戦が始まる。
「タタタッ!」
サイレンサーの銃声とともに、一気に緊張が走る!
AIMのスクリーンに建物内のマップが映し出される。
情報だと、2階のいちばん奥の部屋……そこに囚われている証人がいるはずだ。
作戦通りに俺は、その部屋の前に到達した。
センサーは、オールグリーン。
危険物は、ない。
ドアロックを銃で破壊して、一気に部屋の中へ………
(おやっ? 対象がいない!)
…その瞬間!
AIMから警告音が鳴った!
(…まずい! 罠か?
情報が漏れていた!
退去する…!)
………だが、遅かった。
AIMのスクリーンに高速で飛来する物体が表示された。
それは、ステルスヘリによる地対空ミサイル―――!
着弾まで―――2秒!!
(……くそっ!)
「お兄ちゃん…。」
「…ユリ?
どうしてここに…?」
(ああ……
やっとユリのところに行けたのか?)
…いや。
夢?
「チチチ~。」
小鳥のさえずりで俺は、目を覚ました。
(…ん? どこだ?)
目覚めた俺の視界に映るのは、見慣れない木造建築の部屋の天井だった。
窓からは、暖かい日差しが……
次第に意識が………
記憶が、はっきりしてきた。
(生きているのか?)
とっさに体を起こそうとした。
(痛っ!)
全身に痛みがはしる!
……どうやら生きているらしいな。
しかし、ここは…?
病院では、なさそうだが…。
その時、耳元から………
「まだ、無理をなさらないように…。」
女性の声が…。
(…ユリか?
…いや。違う…
それは、夢だ!)
目線を移すと、そこには、きれいな金髪金目の女性がいた。
(誰だ?
…そして、どこだ?)
うっすらと記憶が………
俺は、作戦に失敗して…
ミサイルに吹っ飛ばされたはず…
あとの記憶は、ない。
…この女性が助けてくれたのか?
…もしかしたら、俺は、捕虜か?
…他の仲間は?
疑問は、いくらでもあるが、まだ、体中の痛みで、思考がまとまらない。
…まぁ、とりあえずは、生き残ったのだ。
今は、よし!……としよう。
(ごめんな。ユリ………)
俺は、再び意識がなくなった。