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四話

前半はミリアム視点です

後半は主人公に戻ります

「使用人になるぞ」


 パパが大きな布包みを担いで離れに入ってきた。


「なんでよパパ、伯爵はどうするのよ!それに私の婚約者はどうなったの!?」


 この前お姉さまに婚約者をもらって学園に入れるようにしようと思ったのに、全く相手にされなくって、仕方がないからパパに頼んだのに、一向に話が進んでない。そんなに贅沢は言ってないのに、なんでよ!


「だからそのために、非常に不本意だが使用人になるんだ」


 パパは包みを下ろし、広げて見せた。そこにはお屋敷の使用人の制服が入ってた。


「今、あの屋敷に入れるのは、あの娘とあの屋敷の使用人だけだ。だからこれを着て、使用人のふりをして屋敷に入るんだ。なに、入ってしまえば、こっちのもんだ。あっという間に屋敷はわし達のものになる。元々、わしが主だからな」


 なんだ、そうだったんだ。パパてば、頭良い!

 じゃぁ、私も使用人になってお屋敷に入って、そのままお姉様の部屋に行ってしまおう!だって今お姉様は学園に行ってるから、今のうちよ!

 ふふ、どんなドレスがあるかしら。こないだの白いドレスは綺麗だったから、まずはあれからもらっちゃおう!


 ウキウキしながら使用人服を取り上げる。シンプルな白いエプロンと、濃紫の長袖のワンピースだ。でも……


「パパこれ、どっちも女物だけど…?」


「仕方ないだろう。使用人用の出入口の側の木に干してあったのを、持ってきたからな」


 そう言ってパパは着替え始めた。私も着替えるが、ブカブカだし、何だかかび臭い。

 パパを見ると、こっちはパッツンパッツンで、前のボタンがはじけそうになってる。しかも膝から下が丸出しで、脛毛が見えてて何だかみっともない。


「し、仕方ないだろう、今だけだ!着替えたのなら、行くぞ!」


 長すぎるスカートに足をとられないようにしながら、お屋敷の横手にある使用人用の出入口に向かう。前を歩くパパは、動く度に服がミチミチいってる。


 周りの様子を窺い、誰もいないのを確認して出入口のドアに手をかける。


 パパとうなずき合い、


「いいか、行くぞ」


「いつでも!」


  バンッ!


「「ぶっで!べべべべっ!」」


 ちょっと、何で入れないのよ!使用人は入れるはずでしょう!!




 ****




「うぁぁぁ!お嬢様、大変です!このお屋敷に変態さんがいます!!私の制服が盗まれたんですぅ!きっと今頃は、変態さんに素肌のまんま着られたり、臭いをスーハーされたりしてるんですぅぅ!」


 学園から戻った途端、ハウスメイドのジジが叫びながら走ってきました。叫んだり走ったりするのは、はしたないと注意したいところですが、このように涙目で縋られると怒りづらいですわね。とりあえずは、話を聞く事にしましょう。


「それって、あなたの部屋から盗まれましたの?」


「違いますぅ、寒くなる前に冬用の制服を出しておこうと思ったら、何だかかび臭かったので、お日さまに当てようと木に干してたのを、盗まれたんですぅ」


「なら、内部犯とは限りませんわね」


 そこへ執事のマルソーが来て、こっそり耳うちしてきました。どうやら、お父様と連れ子さんが、盗んだジジの服で侵入を試みたようですわね。単純というか、おバカさんというか……セレスティンの魔法が、そんな事で破れる訳がありませんのに。

 今、二人は着ていた制服をひっぺがされて、簀巻き状態で離れに放り込まれてるそうです。



 さて、返事は想像できますが、一応ジジに聞いて見ましょう。


「ジジ、どうやらその変態さんから制服を取り返すことが出来たみたいですが、どうします?いる?」


「ひぃぃぃぃ!ひぃやぁれぇすぅー!そんなの、気持ち悪くって着れませんー!」


 やはりと思いながら、執事に回収した制服の破棄と、ジジへ新しい制服の支給を頼み、部屋へと戻ります。最近ほんと、毎日賑やかで困ります。明日こそは静かに過ごしたいものです。




 自室のテーブルには報告書が置いてありました。この前頼んだものですね。椅子に座り目を通します。その内容は………


「やはり側妃様ですか……」


 まだしばらくは、静かな生活は無理なようですわね。





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