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黒雪伝説・略奪  作者: あしゅ
9/9

黒雪伝説・略奪 9

海賊たちと王子は、明け方まで話し合った。

 

船酔いの後の徹夜・・・。

ゾンビのような風情で船室に入ってきた王子を出迎えたのは

壁に片足を立てかけ、もう片足は床へとはみ出し

頭をベッドから落として、ゴオゴオいびきをかく黒雪だった。

 

「そんなあなたも好きですよ。」

王子は黒雪にキスをして、布団の空いた隙間に潜り込んだ。

 

 

翌朝、いや、もう昼過ぎなのだが

ほぼ全員が寝不足の体調不良の中

ひとりだけ12時間睡眠をした黒雪が叫ぶ。

 

「あーーーっ、寝過ぎで頭が痛いーーー!」

こんなに人心を逆撫でする言動もあるまい。

 

 

「黒雪さまに説明したのかい?」

頭領が王子に訊く。

「いえ、まだ・・・。」

 

「何で言わないのさ?」

「奥さまは、あまり気になさらないと思いますよ。」

「あたしらが気にするんだよ!」

 

半ボケでスープをすする黒雪のところに頭領が行き、肩膝を付いた。

「黒雪さま、今日からあなたにお仕えさせていただきます。」

「ああ?」

 

 

王子と海賊の間で決まったのは、こういう事である。

海賊稼業を廃業し、この地に再び村を築く。

村の収入は、漁業と温泉と鉄の採掘。

 

そして、村は “秘密を守り継ぐ村” として

王国に忠誠を誓い、王家直営地とする。

 

 

へえ、上手い事まとめたわね

寝ボケ頭でそう思いながら、黒雪は言った。

「で、何で私に仕えるの?

 こっちのヒ弱い王子にこそ、護衛が必要じゃないの。」

 

頭領は厳かに頭を下げた。

「元海賊として、まがりなりにも武力を誇ってきた我々としては

 強く逞しいお方にお仕えしたいのです。」

 

 

この言葉に気を良くした黒雪は、調子こいた。

「その気持ち、汲み取ってあげましょう。

 ではこれから、妃の親衛隊は代々この村から選出いたします。」

 

「はっ。」

敬礼する頭領に、黒雪が訊く。

「で、どの人を貰って良いの?」

「ご自由に。」

 

「うっひょおーーーーー!!!

 早速みんな、甲板へ出て!」

 

黒雪は、居並ぶ海賊たちの前を何度も行き来した。

途中、筋肉をチェックしたり、乳を揉んだり

どこの人身売買かと疑いたくなるような、やりたい放題である。

 

 

異様に熱心に確認した後、もったいぶりながら宣言した。

「では、まず頭領、おまえ。

 そしてそこのでくのぼうと、そっちの肉団子

 おまえたち3人、良ければ私に付いてきなさい。」

 

「「「 ははっ! 」」」

 

でくのぼうとは、ひと際背が高い

明るいブラウンの髪を三つ編みにした女性で、名はクレンネル

肉団子は、丸々と肥え太ったエジリンという女性である。

頭領の名前は、レグランドと言う。

呼び名はともかくも、3人とも選ばれて光栄そうである。

 

 

その様子を遠目に見ながら、王子は少しヒガんだ。

兵隊ごっこですか、楽しそうですね・・・。

 

 

海賊村の建設は、来年の春を待って着工する予定にした。

それまでは、海賊たちは北西の村に世話になる。

 

「一番近くの村同士になるのですから

 仲良く交流してくださいね。」

 

王子が念入りに仲裁をした甲斐もあって

どうやらこうやら、円満解決へと向かった。

 

 

黒雪は親衛隊を連れて、城へと戻った。

城ではとんでもない事態が待ち受けてるとも知らずに・・・。

 

 

 

       終わり   

 

 


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