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黒雪伝説・略奪  作者: あしゅ
4/9

黒雪伝説・略奪 4

急に打ち合いを止めた頭領に

打ち込みかけた黒雪が、勢い余って甲板に転げる。

 

「あ、すまない、何やら緊急のようだ。

 あんたら、船を降りて良いよ。

 勝負はまた今度、って事で。」

 

頭領は、仲間の危機だというのに

“黒雪に勝たない” 理由が出来て

ホッとしている自分の心理が不愉快だった。

 

 

操舵室に入ろうとする頭領に、王子が訊ねた。

「“救助要請” という、重大事件に驚きもしない。

 あなたには3号船に何が起きたのか、わかっているようですね?」

 

へえ? と、うがつ表情をする頭領に黒雪がノンキに言う。

「この人、頭脳担当だから。」

 

 

「実は数年前から、ここら近辺の海で怪物の目撃情報が多発していて

 あたしたちはそいつを、“シーデビル” と呼んでいる。

 3号船は、多分そいつに襲われている。」

 

「She Devil? Sea Devil?」

「海の方だよ、海の悪魔。 どこぞの映画ではない。」

 

「それはイカなの? タコなの? エビなの? カニなの?」

「寿司ネタかい!

 よくわからないけど、とにかく化け物らしい。」

 

王子と黒雪は目を合わせた。

「これは・・・。」

「ですよね・・・。」

 

 

王子が甲板から身を乗り出して、軍の隊長に叫んだ。

「ちょっと事故が起きたので、調査に行ってきます。

 あなたがたは、1週間はここで待機

 だけど雪で道が封鎖される前には、首都に戻ってください。」

 

黒雪がヒョイと横から顔を出す。

「あ、私たちが死んで、こいつらが生きてた場合

 王族殺害の見せしめとして、こいつらを根こそぎ退治してねー。」

 

手を振りながら無邪気にそう叫ぶ黒雪を見て

海賊たちはゾッとした。

それを知ってか知らずか、黒雪が微笑む。

「さあ、協力して3号船を助けましょう。」

 

 

「ちょっと待て!

 何故おまえらも行く?」

 

「それは多分私たちじゃないと、やっつけられないからです。

 その海の悪魔は。」

頭領がいぶかしげに訊く。

「どういう事だ?」

 

「王族には、国を守る義務と力が与えられていて

 あなたたちも国民だ、と言う事よ。

 さあ、さっさと出港して!」

タルをガンと蹴る黒雪。

もうシビレを切らしたらしい。

 

 

冬間近の北の海を、ふたりはナメていた。

ザッパンザッパンと上下左右に揺れ動く船に

ものすごい船酔いで、王子が完全にダウンしたのである。

 

「ああ・・・、足の下に地面がない・・・。」

王子はうなされにうなされている。

 

「あんたは大丈夫なのかい?」

様子を見に来た頭領に、黒雪は笑った。

「あはは、知恵が回るから目も回るのよ。」

 

 

頭領がジロジロと黒雪を見る。

「何かしら?」

「あんたみたいな女が、何故あの弱っちい男と結婚したわけ?」

 

黒雪は即答した。

「北国を豊かにしたい気持ちが一緒だったからよ。」

頭領はバカにした笑いをした。

「それは表向きだろう?」

 

黒雪は仁王立ちで腕組みをした。

「今から遭う化け物を退治できたら、あなたにも理解できるわよ。

 キレイ事だけでは命を張れないのよ!」

 

 


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