幕間02 一方その頃
Session04につきましては、少しプロット練り直しを致しますため、今しばらくお時間をいただきます。
女性関連の描写表現を今後、修正する可能性がございます。
変更しました場合は、活動報告にて報告させていただきます。
今後とも宜しくお願いいたします。
◇◇◇天界◇◇◇
天界のとある間。
そこには二人の人影が存在していた。
一人は男性、一人は女性。
執務用の大きな机に様々な書類を積み、確認をしては書き込みをしたり、判を押したりしている。
また机の上には他にも、休憩の時のためにであろう、ティーポットとティーカップが並んでおり、男性の机の上では紅茶が注がれて、湯気が立つのが見えた。
「アテナ君、アテナ君。」
そんな中、トーガを着込んだ壮年の男性が、同じくトーガを着込んだ妙齢の女性に声をかけた。
アテナと呼ばれた女性は目を通していた書類から視線を離し、名を呼んだ男性に向かって顔を向ける。
「首座神殿。いかがされましたか?」
「いやね……ちょっと気になる事があるんだよ。」
そう言って、首座神と呼ばれた男性は、執務に使う万年筆を手にして宙に文字を書くように動かした。
アテナはこう言った時に、首座神が口にした内容は核心を突くことを経験として知っていた。そのため、口にすることを書き留めるために、白紙と万年筆を取り出して手にした。神の中ではボールペンの方が楽だと言う者も多いが、アテナと首座神は書き心地に魅了され、永年執務の際には愛用している。
「気になる事と申しますと?」
「ロキ君の件だよ。」
「ああ……両性具有の件ですね。」
「そう……あれがずうっと引っかかっててね。もしかしたら、あそこで下界への一時追放処分自体が、彼の狙いだったんじゃないかなって思ってるんだ。」
そう言って宙に文字を描こうとするのをやめて、紅茶の入ったティーカップを手に取って、口にした。アテナはそれを見て、箇条書きでメモし始めた。ロキの真意は?追放処分は狙いのうちか?
「一つ思ったのですが……首座神殿はあのとき、”両性具有だけで終わらせるとは、困った事に考えづらい”と仰り、加護を授けることにされました。……両性具有が魔法ではなく、加護だったとしたらどうでしょうか?」
アテナの疑問の声を聞いた首座神は、自身の額を手のひらでピシャリと叩いた。しまったと言うように後悔しているような声をあげる。そして、手にしていたティーカップを置き直して、顎に手を当てて考え始めた。
「……そうか、加護という可能性があったか。もしも、加護だったとしたら、彼女は三つの加護持ちか!」
「今の所、前代未聞ですね。確か過去に……悪魔の王の迷宮討伐でしたか……亡国の王子に首座神殿と戦神連の加護で二つが最大です。今回の件が二例目となるはずでした。」
「それが……記録更新になるのか……。いやぁ……一杯食わされたかな。」
頭に手をやり、ポリポリと掻く。そして、また万年筆で宙に何かを書こうとする。他にもないだろうかと考えているのだろう。アテナも倣って思い返していると、そう言えばロキが下界に降りてからの行動報告書が上がっているのを思い出した。特におかしいところはなかったはずだが、今の話の流れから別の見方ができるかも知れない。
「首座神殿。私が確認した限りでおかしい所はなかったので上げておりませんでしたが、ロキの行動報告書が上がってます。……もしかしたら、参考になりませんでしょうか。」
アテナはそう言って、報告書を首座神の机へ提出した。置かれた報告書をペラリ、ペラリとめくり始めるが、途中から報告書自体を手に取り、じっくりと目を通し始めた。
それを見たアテナは、ああ、これが鍵だったかと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。アテナで判断を止めず、首座神へ上げていればもっと早く気づいたかも知れない。
「……アテナ君。」
「はい。」
「君は間違っていないよ。前提条件が間違っている所に上がってきた報告書で答えにたどり着けるはずがない。その点については、私に罪がある。君が罪悪感に苛まれる必要はない。……それ以上に、君には感謝しているよ。いつもありがとう。」
「恐縮です。」
「……ああ、やっとロキ君の狙いがわかった気がするよ。」
そう言って、首座神は地図を広げ、万年筆でロキの足取りを描いていく。
そして、その先の予定を書き加えていく。
その予定を見てアテナはハッとなった。
「これはもしかして……彼女の下へ向かっているのでしょうか。」
アテナの出した答えに首座神は頷いて見せた。
「報告書によると、ロキ君は女性になったようだ。職業としては吟遊詩人……風の吹くまま、気の向くまま、英雄譚を探して旅をしているそうだよ。しかし、足取りを描くと、道に沿ってだが、順調に彼女の拠点としてる地域に向かっている。多分だけれども、両性具有と共に加護を授け、しかも、下界に降りた自分が知らぬ間に惹かれて行くように仕向けたのではないかな。」
「……目的は何でしょう?」
「……自分自身が加護持ちの英雄の側に侍り、英雄譚を紡ぐ。そして、死んで天界へ戻ったら自身の一生がオンエアーされた時に、自身が手がけた英雄の放送が流れて、皆がそれを見る……エンターテイナーとしては冥利に尽きるんじゃないかな。」
そう言うと、首座神は大声で笑い始める。
それは、面白いと言うような響きが多分に含まれていた。
「オーディーン殿の裏をかいただけの事はあるよ。まぁ……神であることを忘れてる今、手を出すわけには行かないから、様子見だね。アテナ君、すまないけれどもロキ君の足取りも報告お願いしても良いかな?」
「承知しました。……彼女の最近の動向の報告書が上がって来ていますが、ご覧になられますか?」
アテナは抱えた報告書の中から、彼女に関する報告書を抜き取って見せる。
それを見た首座神は相好を崩しながら、手を伸ばした。
「おっ。報告書が上がったのか……どれどれ……ん?嫁が更に増えて、十一人だって?……更にそこに幼馴染みが増えるんだろ?……アテナ君はどう思うかい?」
アテナは振られた質問の内容を沈思してみた。思い当たるのは父ゼウスと兄アポロン。他にもギリシャと分類される神々の行状から考えると……。
「……私も嫉妬深い方ではありますので、強くは言えませんが……彼女たちが嫉妬に駆られないで欲しいとは思っています。……彼女次第ですね。」
「……そう、自分で言えるなら大丈夫だよ。私も、姦淫さえしなければ言うことはないからね。特に、彼女の今の所の態度は素晴らしいと思うよ。……まぁ縁を維持したまま、輪廻転生したら、修羅場だろうけれどもね。」
そう言うとアテナに向かってニッカリと笑って見せた。アテナもその言葉に頷いて見せた後、「最後のは余計ですね。」と苦笑いを浮かべた。その反応を見た首座神は「違いない。」と言って、二杯目の紅茶を口にするのだった。




