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Session03-04 新たな出会いは唐突に

Session02-01でハーレム要員をガツンと突っ込んだのに、新たなヒロイン登場。

……仕方なかったんやぁぁぁ!

 四日目……小規模一群(トループ)を三つ発見、そして撃破した。トロールが含まれており、成果としては上々。流石(さすが)に、”魔法の鞄(マジックバッグ)”のような魔道具は出てこなかった。装備していた武具、素材になる部位を収集。今回は、今までの戦いからの反省点を活かせ、魔法の使用回数を温存した上での撃破ができた。そして、野営の際に確認が出来たことだが、(しめ)られていた狼、水牛、渡り鳥が(いた)んでいない事が分かった。何分、今は夏である。だらりだらりと汗が流れる程の暑さの中で、水でさえも下手すれば腐敗(ふはい)してしまう時期だ。生物を取り出した時点で熱を持たず、腐敗が感じられなかった。この時点で、五人は、『この”魔法の鞄”は絶対に手放さない。』と意見を一致させた。


 五日目……西の方……砦の北側へ様子見(ようすみ)()ねて狩場(かりば)を移す。紅葉(こうよう)の国の西部を縦断(じゅうだん)するように流れるソーキ大河(たいが)。水量も多く、幅も広い大河である。”迷宮(ダンジョン)”指定になるまでは近くに大きめの渡し場があり、隣国と交易をしてもいたが、河口を(やく)するチョトー(とりで)近郊(きんこう)が”迷宮”指定となったため、(すた)れてしまった。しかし、まるっきり流通がなくなるということはないのが人の(いとな)みというものであろう。川賊(せんぞく)とも言うべき者共が渡し場を作り、東西の流通を細々(ほそぼそ)とだが、つなげているのだ。彼らは上流となる北方……ベルンシュタイン辺境伯領にて手に入る品を仕入れ、自分たちで維持する渡し場まで輸送。その後、レンネンカンプ辺境伯領都である、ハルベルトまで運び、金に換えるのである。品としては、石材や木材が中心であった。チョトー砦から来た一群が襲ってくることもあるが、そこは川賊と名乗る者達。返り討ちにすること多々(たた)であった。

 彼らは”青鮫党(あおさめとう)”と名乗っており、荷の一割を要求するが速やかに対岸へ渡すのと、無体(むたい)なことはしない、今となっては珍しい川賊であった。

 そんな”青鮫党”の元に、アイル達が訪れるのは必然と言えよう。

 ソーキ大河に沿って、北へ進むと辺境伯軍が建設した観測所とは違う、建造物が見えてくる。木材と石材を使って、砦の様な壁を作っており、それが対岸にも作られていた。大きい(いかだ)係留(けいりゅう)されており、それを使って荷や人を運ぶのだろう。壁上には数名の見張りがおり、周囲を警戒していた。一群が見つかれば、すぐに連絡が入り、壁を使って迎え撃ち、筏を使って側面から援護(えんご)するような流れなのだろう。


貴殿(きでん)らは何者か!」


「我が名はバーバラ!我らは、冒険者の一党(パーティ)で、”鬼の花嫁”という!ここにおるアイルが党主(マスター)じゃ!対岸に渡るための商談をしたい!」


 誰何(すいか)の声に対し、バーバラが代表して応える。その言葉を聞いた見張りは、確認するように壁の中に声をかけた。その後、反応があったらしく、改めて、見張りが彼女らへ声を投げかける。


「どうぞ、お客人!お入り下さい!」


 その声に従い、”青鮫党”の渡し場へと入っていく。壁の内側に入ると十数名の男共が、各々(おのおの)の武器の手入れをしていたり、訓練などをしており、改めてそこらへんの野盗や山賊とは一線を(かく)していることがわかった。そうこうしていると、五十代半ばと思われる貫禄(かんろく)のある男と、一歩下がって三十代の男と、十代半ばの女が近寄ってきた。


「お主らが”鬼の花嫁”か。ワシが”青鮫党”党主、ケーマ・ヨース・ツーシュウじゃ。後ろが、ワシの息子のソーヤ・ケーマ・ツーシュウと、孫のイーネ・ソーヤ・ツーシュウじゃ。ワシらで商談の相手をさせていただこう。」


「”鬼の花嫁”の党主、アイルだ。左から、バーバラ、フィーリィ、ピッピ、ルナ。冒険者として、チョトー一帯の”間引き”を行っている。向こう岸の方でも間引きを行いたいので、商談をしたい。」


「承知いたした。イーネ。皆様を客間(きゃくま)へ案内なさい。すぐに、ワシとソーヤも参ります。」


「”鬼の花嫁”の皆様、こちらへどうぞ。」


 イーネが丁寧(ていねい)にお辞儀(じぎ)をした上で、先を歩いて行く。先導(せんどう)するイーネを追いかけてアイル達は母屋(おもや)へ入っていった。それを見送る様にケーマとソーヤが見ていた。そして、ケーマが何事かを(ささや)くと、ソーヤが離れていった。



 ◆◆◆◆◆


 母屋に入った後、客間に案内されたアイル達は、板張(いたば)りの(ゆか)に用意された座布団(ざぶとん)に腰を下ろし、ケーマとソーヤを待つ。その間に、イーネがお茶を用意し五人へ提供した。それは緑色(みどりいろ)濃厚(のうこう)な茶であり、ハルベルトで良く飲まれる紅茶(こうちゃ)とはまた違った味わいであった。アイル、バーバラ、フィーリィは苦もなく飲み、ピッピとルナは苦味(にがみ)を強く感じたのか苦手(にがて)なようだった。それを(さっ)したイーネが、合間(あいま)に口にするように黒い粉を皿に盛って差し出した。問題がないことを示すように、自身でそれをひと(つま)み分、摘んで口に入れた。それを見たピッピとルナが真似(まね)をして、ひと摘み口にした。


「「……砂糖だ!?」」


 二人は驚きの声を上げた。その声にまだ口にしてない三人も驚いた。”黒い”砂糖は見たことがなかったのだ。精製(せいせい)の度合いが高い程色が白くなり、そして高級品となる。最下級品ともなれば出涸らしで、色が残って茶がかかった様な物が存在する。……しかも、量を誤魔化(ごまか)すために、砂を混ぜるのだ。違和感を感じても、甘味は感じる。だから、売れる。同じ様に量を誤魔化される物として、塩がある。こっちは生活上(せいかつじょう)必需品(ひつじゅひん)のため、砂が混ざっていても、おかしい値段でなければ買わざるを得ないのだ。なので売れる。紅葉の国では、塩商人は認可制(にんかせい)であり、二年毎(にねんごと)更新制(こうしんせい)をとっている。あまりにも評判が悪い場合、認可取消などもあり得る。そのため、あくどい事はあまり起こっていない。

 三人も黒い砂糖をひと摘み口にして、顔を見合わせて頷いて見せた。


「……砂糖だな。」


「……砂糖じゃな。」


「……砂糖ですね。」


 まず、今まで口にした砂糖とは違った甘さであった。これは流通できれば、既存(きぞん)の砂糖と別物として販売できると思えるものであった。

 そんな砂糖が、この場で初めて口にできるということは、流通していない事が理解できる。では、何故、これを出してきたのか。その理由を三人は考えたが、ピッピとルナは、砂糖を摘んだ後、茶を口にした。苦味が抑えられた上で甘味が広がり、苦もなく飲み干した。

 皆が一服(いっぷく)終えたのを見計らった様に、ケーマとソーヤが客間へ入ってきた。そして、ケーマが上座に座り、ソーヤがケーマから見て左手側一番手前に座り、その隣にイーネが座り直した。


「遅れてしまい、誠に申し訳ござらん。イーネのもてなしはいかがじゃったろうか?」


 ケーマが好々爺(こうこうや)(ぜん)とした感じで、イーネの対応についての質問をしてきた。それに対し、アイルがケーマに向かって顔を向けて答えた。


「イーネ殿の御点前(おてまえ)美事(みごと)でございました。()れておりませんものにも甘味(かんみ)御用意(ごようい)いただくなど、お気遣(きづか)素晴(すば)らしく、感服(かんぷく)致しました。」


 胡座(あぐら)を組んで座ったアイルが、イーネに向かって身体を倒すように頭を下げた。その言葉に応えるようにイーネも頭を下げる。それを見たケーマは「フォッフォッフォ。」と白髯(はくぜん)()で付けながら笑い声をあげた。


「さて、では、商談と参りましょうかの? 皆様は”間引き”で渡りたいとのことじゃが……”只の”間引きであれば、そこまでされる必要はないと思いますが……。」


 チラリと五人に視線を送る。それを受けて、バーバラが身体の向きを変えて答えた。


「されば、今回の理由じゃが……我らはチョトー地方の”解放”を目的にしておる。そのためには、川向うに渡り様子を見る必要があると考えておりましてな。”間引き”のついでに偵察をしようと思っておるじゃ。」


「ほほぉ……チョトー地方の解放とは大きくでましたな。……冒険者の一党を向こう岸へ渡すことはございましたが、そこまで大風呂敷(おおぶろしき)を広げる方は、ついぞいらっしゃいませんでしたなぁ。」


 フォッフォッフォッと笑い声を上げるが、ケーマの瞳は笑っていなかった。値踏みをしているような視線である。それを理解して、アイルは続けて答えた。


「……私は個人的な理由で、名声を上げる必要があります。……叙爵(じょしゃく)を受けられるぐらいに。」


「……その個人的な理由とやらを聞かせて頂いても宜しいかな?」


 アイルが、皆に視線を向ける。それに、皆が頷くことで応えた。それを見たアイルは、今回の理由を順番に説明をしていく。有力者の幼馴染(おさななじみ)(めと)る為に名声を得ないといけないこと。一党を組み、徒党(クラン)も組んでいること。自分たちなりに解放へ向けて考え、それを補強するために調べていること。人材も集めていること。……メンバーがハーレムであることと、自分が”両性具有(ふたなり)”であることも……ケーマの瞳をしっかりと見つめながら、伝えた。

 それを聞いたケーマは、白髯を撫で付けながら瞑目(めいもく)する。ソーヤとイーネは瞑目しているケーマを見つめ、沈黙を(たも)つ。そして、少しの(あいだ)沈黙が場を支配したが、ケーマがその口を重々(おもおも)しく開いたことで破られた。


「……お主らは、ワシらの出自(しゅつじ)を知っておるかね?」


「……残念ながら。しかし、辺境伯からあなた方の話が出なかったのは、その出自に関係しますか?」


 アイルが代表して答えた。それを聞いたケーマは一つ頷き、ソーヤが続けて答えた。


「……ツーシュウ家は、チョトーに(きょ)を構えた元商家(しょうか)だ。この川を使って商いをしていてな。あの時、船を持っていた事で一族郎党(いちぞくろうとう)の大半は逃げることが出来たのだ。……大半はな。」


「……犠牲(ぎせい)になった方々がおったのじゃな?」


「……弟夫婦(おとうとふうふ)の一家だ。それも、”緑肌(グリーンスキン)”共じゃない。隣国の”乱取(らんど)り”にあったんだ。」


 ソーヤは手を固く握り締め、床板(ゆかいた)を強く叩いた。”乱取り”は軍隊の略奪(りゃくだつ)行為(こうい)のことを()す。特に人を指すことが多い。当時、辺境伯軍と隣国の軍が衝突(しょうとつ)。衝突の最中(さなか)横合(よこあ)いから”緑肌”共に(おそ)いかかられ、両軍は戦闘を中断し撤退した。辺境伯軍は川を渡って撤退をする必要があり、渡る前に追撃を受け、その際に避難民(ひなんみん)の一部が(さら)われたのだ。辺境伯軍としても、攫われた人々を取り戻したかったが、”迷宮”指定地域が間に存在していることと、法外(ほうがい)な料金を上げてきたこともあり、交渉は決裂(けつれつ)慣例(かんれい)であれば、乱取りとして攫われた人々は奴隷(どれい)として売られたであろうことが予測された。


「……辺境伯軍は守れなんだ……。故に、ワシらは(しん)を置くことができん。……あれはどうしようもなかったとわかってはおる。……わかってはおるが、納得なぞできん!……なぜ、なぜ、息子夫婦が犠牲とならねばならんのじゃ!!……ワシら以外に犠牲になったものもいるのはわかっておる……じゃが、それだけで納得なぞできるか!」


「それに、辺境伯軍は二十年()つが解放できていない。信じられるものではない……ということもある。貴殿らにそれができるかも怪しい。」


 ソーヤはアイル達五人に厳しい視線を向けた。それはそうだろう。二十年。それは普人族(ヒューマン)としては一生(いっしょう)の三分の一に(あたい)する。希望が欲しい。解放できるという希望が。それが、”青鮫党”という、チョトーに住んでいた者達の願いであった。


「……今、あなた方に明確(めいかく)な答えを伝える事は出来ません。……しかし、俺は生き残りの一人であるクリスさんに約束をしました。必ず解放すると。俺は()してみせます。」


 アイルはその言葉を口にするとともに、ケーマ、ソーヤ、イーナの瞳をしっかりと見つめた。三人も、アイルの瞳をしっかりと見つめる。そして、ケーマが立ち上がり、アイルの手前まで進むと、改めて胡座を組み直した。


「……アイル殿。頼みがございます。……イーナ、隣に来なさい。」


 ケーマの隣に、呼ばれたイーナが並ぶように座った。黒髪に黒い瞳。黄色い肌。髪を後ろに、馬の尻尾の様に(まと)めていた。川賊として動き易い服装をしており、メリハリのあるボディラインを持っていた。そんな彼女が、祖父に呼ばれ、アイルのすぐ斜め前に座った。


「ワシら”青鮫党”は、辺境伯軍に力添(ちからぞ)えすることはお(ことわ)り申し上げる。……が、アイル殿。あなたになら力添えしたい。その意志(いし)として、こちらのイーナをあなたのハーレムにお加えいただきたい。剣術、薙刀(なぎなた)術、弓術、格闘術を始め、若干の秘術呪文、会計などを仕込(しこ)んでおります。お役に立てるかと。」


 そう言って、ケーマはアイルに対して頭を下げる。イーネもケーマの動きに合わせて頭を下げた。それを見たアイルは、二人に頭を上げるよう伝える。


「……お二人とも、頭をお上げ下さい。……イーネ殿。あなたはそれで宜しいのか?どなたか意中の方はおりませんか?」


「……意中の殿方はおりません。お祖父(じい)様の言葉に従います。……ただ、一つお願いを聞いていただけるのであればお願いがございます。」


「これ、イーネ!」


「……ケーマ殿、構いません。俺で叶えられることであればよいのですが。」


「簡単な内容です。」


 イーネはそう言うと立ち上がり、アイルを見下ろして続けて言った。


「私とお手合わせをお願いいたします。」

※作者からのお願い※


この度は、ワケあり女オーガの冒険譚をお読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ、下部にあります ☆☆☆☆☆ を押していただき、率直なご意見をいただけるとありがたいです。

少しずつではありますが、ブックマーク、評価もいただけており、感謝しております。

今後も頑張ってまいりますので、是非とも、宜しくお願い致します!


加藤備前守

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