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第八話 街

「よいしょよいしょーっと!」


「頑張るのだゲイツ! ロカも頑張って押しているのだ!」


 大きな砂丘を超えると、巨大な壁に囲われた人工的な建築物を発見する。

 想像以上に、人工的だ……壁も、漆喰……コンクリートに鉄骨も使っているな……

 

「想像より、遥かに近代的じゃないか……」


 その壁の上には大型のクロスボウが機銃のように並べられ、揃えられた装備を来た兵士が周囲を警戒している。

 鉄格子の門は上がっているが、同じように門の前には兵士が警戒している。

 壁には槍が設置してあるし、門部分には馬防柵のようなものがあって、もし侵攻した場合アレが降ろされて門の前を防ぎ、鉄格子が降りてくる。

 そして上からねらい打ちにされるって寸法だ。

 

「考えられているな……」


 俺たちもすでに相手から確認されている。ねっとりとした警戒の視線を感じる。


「アレがディファイの街だ! ガルラだけじゃなく多くの種族が集まる砂漠の入り口だ!」


 確かに、さらに進むと砂漠が終わり荒野に変わっている。

 多少草木も生えている。

 街も想像以上にでかいし、こりゃ楽しみだ!


「よし、ロカ乗れ降りるぞー!」


「わかったー!」


 砂丘の頂点から、街へ向けて一気に滑り降りる。

 一応曲がる機能もつけたけど、たぶん横転する……

 荷運びに作ったソリも色々工夫して下りなら滑り降りて素早く進める。

 もちろん砂地ではソリみたいにしているが、車輪もあるので硬い道も楽に引ける。

 今は俺が引いているが、街では荷を引ける動物も買えるらしい。

 なんにせよ、まずは街に入らないとな。

 5mはありそうな巨大な防壁沿いを進んでいくと、背後から戦いの気配が近づいてくる。


「ロカ、後ろに気をつけろよ!」


「砂跳びを連れて逃げてきている奴が居るよ! このままだと擦り付けられる!」


「仕方ねぇなぁ……街の奴らはやらないのか?」


「入り口に到達すれば一斉に撃つけど、一応ロカ達の安全も考えてくれる」


「それはお優しい、仕方ねぇ、ロカ、荷物見ててくれ」


「わかった!」


 俺は荷台を停めて後ろに回る。

 直ぐにバラバラと逃げ惑う人とすれ違う。


「すまねぇ、早く街まで走ってくれ!」


「気にせず行ってくれ、こっちはなんとかする」


「悪いな! 死んだら荷物は責任を持って貰いに行ってやるよ!」


「死んだらよろしく頼むわ!!」


 その背後から砂跳びがビョンビョンと跳ねてくる。

 防壁は超えられないが、2mくらいはあの巨体が飛び跳ねるんだから、なかなかに恐ろしい。

 俺の姿を見ると標的を変更して飛び込んでくる。


「4匹か……また塩袋が増えるなっと!」


 砂跳ねが着地するのと同時に一匹の首をはね、直ぐに飛ぶ、空中で2匹の首を刎ねる。

 最期の一匹が飛ぼうとしているが、着地と同時に首を落とす。

 

「さすがゲイツ!」


「おお、やるじゃねーか旦那!」


 防壁の上から衛兵に声をかけられたので軽く手を上げて答えておく。

 塩袋だけ回収しているとまた声をかけられた。


「おーい旦那、まさか他の素材はいらねーのか!?」


「あいにく荷物が多くてな、街への挨拶代わりだ!

 衛兵さん達の今晩の酒代にでもしてくれや!」


「おーーー! ありがてえ、おい! 

 旦那が俺たちにボーナスくれるってよ!

 門番に声かけろ!」


「やったぜー! 最高だぜ旦那!!」


「ディファイの街へようこそ! 夜にでも酒場に来てくれよ旦那!」


「愛してるぜ旦那!!」


 門番が数人砂跳びの死骸を解体しに走っていった。

 

 こうして俺たちはディファイの街へと足を踏み入れた。

 上から見た通り、想像よりも遥かに近代的、前の世界の建物と、前世の建物が混じったような、不思議な感じだ。

 街に入ると地面はきちんと舗装されている。


「セメント舗装か……街灯もある、電気だよなあれ……」


 街のいたる所には乱雑に電線が張り巡らされて、建物もあまり規則的ではない、何より街の中が平坦ではないために進みづらい……

 

「スラムっぽくは有るが、活気はあっていいな」


「ゲイツ、前から来る集団がピープの民だ」


 ロカが小声で教えてくれた。

 衛兵は皆ガルラの民だった。

 ピープの民、魔法を使う種族、見た目は……目はトンボのように複眼で大きい。

 耳が長くエルフに近いのか?

 肌の色が薄い緑色で特徴的だ。

 なるほど、魔石をはめた杖を持つものが多いな……

 体つきは細くあまり強そうに見えないが、雰囲気は良いものを持っている。


「魔法か……見てみたいものだな」


「ピープの民は集まるとどんどん強くなる。

 敵にしないほうが良い」


「ま、敵は少ないに越したことはない」


「あ、ここだここ! ここで売れるぞ」


 なんというか、ガレージ? 格納庫みたいな場所が目的地だ。

 半分は商店になっていて、色々なものが雑多に置かれて売られている。

 そして半分は広い空間になっている。

 大きなカウンターにガルラの男が座っている。

 俺のことを訝しげに睨みつけて来た。

 こうしてみると、確かにガルラという種族は皆体つきが大きくたくましい。

 そして、外骨格のような見事な鱗を持っている。


「ガルラのロカだ。素材を売りに来た」


「ガルラのくせにジャッキとつるんでるのか?」


「ゲイツはただのジャッキではない、見ろ、勇者だぞ!」


 ロカは荷物から砂食いの魔石をカウンターに置く。


「おお! すまねぇ、ゲイツ、あんたは勇者なんだな!

 ここは何でも買い取るぜ!」


 効果は覿面、受付のガルラの男は笑顔で対応してくれるようになった。

 それから荷車に乗せた大量の素材と森の収穫物を並べていくと、大声で応援を読んで少し騒ぎになった。


「すまねぇ、これだけの良品は査定に時間がかかる。

 この先に食堂が有るから、飯でも食ってきてくれ、5つ鐘がなることには終わらせておく!」


 順番待ちのプレートを渡されて、一旦荷物は預けることになった。


「少しだけ前金もらえるか? じつは文無しでな」


「ああ、気が利かなくて悪いな、この砂跳びの魔石分を先に……5個で銀貨15枚だ」


 この世界のお金についてはロカに教わっている。

 一番安いのが鉄銭、次が銅貨、そして銀貨、金貨、大金貨となる。

 鉄銭は100枚で銅貨、銅貨100枚が銀貨、銀貨100枚が金貨、金貨100枚で大金貨だ。

 腹を満たすだけの干し肉5切れで大体鉄銭50枚。

 水が2リットル5銅貨くらいだ。


「……そりゃ門番も喜ぶな……」


 魔石だけでも回収すればよかった。

 あの4匹で、大切な水が480リットル……浴びるほど買えるんだな。


「ロカもゲイツと居ると麻痺するが、とんでもないことだったな」


 ロカも気がついて苦笑いしている。

 

「ま、いいさ。さて、食堂へ行こう」


「うん!」


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