第七十九話 レベルを上げすぎたラスボス戦のようなもの
ヘプトンがロボット形態から宇宙警察モードに変化し、超重力化を普通に移動する。
魔神ゴーデグリスの周囲に分体が転移する。
「時空間固定結界展開」
8体のヘプトンが魔法を展開すると、巨大な結界が魔神を取り囲む。
「ぬ……なんだこれは……次元魔法を人間が!?」
「いつまでも魔人たちしか使えないと思うなよ!
よし、全員もういいぞ!」
俺を含め、全ての兵士たちが超重力の中、何事もないかのように立ち上がり再び戦線を再構築する。
「それも熱いから消えてもらうぞ」
火球に向かって一発の砲弾が放たれる。
火球のそばで、カッ、と展開すると、火球が消え失せた。
「ば、馬鹿な!! この星を3度破壊する力を持つ我が魔法が!!」
「ほほう……」
なにやらラーファンが悪い顔をしている。
ポポと連絡を取り合っているようだが、今は魔神様としっかりと向き合わなければいけない。
「魔神ゴーデグリス、この世界も俺らの世界も貴様の好きにはさせん!!」
さすが勇者様、決まってる。
アイツ専用機も主人公っぽくてかっこいいんだよね。
白がベースは主人公の証だな。
俺のは黒に黄金ラインを散りばめた悪役っぽいが最高に痺れるデザインだ。
ロカは真っ赤、ジルバは真っ青、パリザンは紫、子どもたちもそれぞれ好きな色に染め上げている……なんでみんな派手にするんだか……すげーわかるけどな!!
「いでよ魔界の柱たち! 小賢しい勇者共を皆殺しにせよ!」
魔神の身体から8体の大型の魔物が現れる。
その魔物はそれぞれ小型から中型の魔物を生み出している。
「勇者様は魔神を、俺達はあのデカブツ達をやるぞ!
社員は援助と掃討に当たれ!」
「浄化魔法増幅して放ちますねー」
クラレストが超位浄化魔法を放つ。
それを科学の力で結界内に増幅されて放射する。
一部の悪魔や魔物は抵抗できずに消滅する。
大型魔物も属性によっては大ダメージを受けている。
俺たちのロボが容赦なく攻撃を加えていく。
「ええい! 貴様ら何なのだ! 何だその力は!!」
「他人を利用することしかせず、研鑽を積まぬ貴様にはわからんよ」
次々と柱と呼ばれた魔物が倒されていく、そしてアルテリオは単機で魔神とやりあっている。
矮小な人間相手に戦いになるとも思っていなかった魔神ゴーデグリスの苛立ちは明らかだった。
「人間ごときが! 神を相手に、不敬であるぞ!!
我が前にひれ伏せぇぇぇぇええええ!!」
無数の魔力弾が放たれる。
「任せるのだ!」
ロカの背負う大砲が火を吹き、大量のクラスター爆弾が一斉に魔法陣を描く。
展開した魔法陣が、魔神の魔弾を吸収して、逆に打ち返していく。
「お、お、おのれぇぇぇぇぇぇ!!」
ジルバの長距離狙撃用ライフルが、大口を開けた魔神の喉仏を撃ち抜く。
「ごべっ……ガッ……ぐあああああああ!!」
怒り狂った魔神が、魔力を刀代わりにしてめちゃくちゃに振り回して暴れまわる。
「全く、基礎がなっとらん基礎が」
俺とパルザンが手首からその刀を切り落とす。
「ゴギャアアアアアアア!!!」
ボコボコと無数の腕が生え、さらにおお暴れするが、息子たちが淡々と処理していく。
「ごはっ! ゆ、許さん!! 許さんぞ-!!」
ようやく喉を回復した魔神様だが、攻め手を迷って、それが怒りに代わり、罵詈雑言を浴びせてくるが、俺達は容赦なく攻撃を続ける。
はたから見れば猛烈苛烈な攻撃をこちらが必死に防御してなんとか攻撃を与えているように映るが、実際にはかなりの安全マージンを置いて着実に一歩づつ追い詰めていくような戦いを行っている。それらを統括する戦術システムも素晴らしい。
魔神、悪魔的な存在となっているために、攻撃を受けて魔力を消費していけば、その存在が縮小していく。
始めは巨山の如く大きな体も、既に俺たちのロボより少し大きい程度になっている。
その代わり、狙える的が小さくなったので、結界内を必死に回避運動に努めている。
よく回る口がずーーーっと俺たちの悪口を言っている。
魔法も物理攻撃も全て対処されており、出来うることはそれくらいなのだろう。
「何度も転移を試みていますが、結界に阻害されています」
「なんだ、口先ではべらべら話しながら、胸の内はしっぽを巻いて逃げることしか考えていないのか?」
「ぐぎぎぎぎぎぎ……」
実はこの回避行動、一番現状を解決するのに適した行動であることを魔神は知らない。
俺たちのこの機体は、その強大な力の反動で、非常に消費エネルギーが大きい、この一年間各地のエネルギーを貯めに貯めていたが、結界の維持を考えるとあまり長時間起動させておきたくはない。
「まぁまぁアルテリオ、こちらも大人気がなかった。
このような圧倒的な力で踏み潰されては魔神様も納得がいかんだろう。
以前のように、生身でお相手して差し上げよう」
『総員、エネルギー消費が想像以上だ。一旦ロボから降りるぞ』
アルテリオを殿に次から次へとバトルスーツ姿になり、引き続き魔神と戦う。
最期にアルテリオが合流すると、戦闘エリアを囲う結界が随分と限定されてきた。
「ククク……あのようなおもちゃで我を超えたと勘違いしたか、生身での戦闘となれば、貴様らに万に一つも勝ち目などないわ!!」
魔神様は生き生きしている。
こちらの真意に気が付かれなくてよかった。
と、言っても。
バトルスーツもそりゃーもう凶悪な品だ。
特に俺たちの物は、ロボほどではないが、魔法も、物理も、ほぼ効かない。
身体能力は爆発的に向上される。
少しスケールが小さくなったが、戦闘としては一方的な物になる。
「……分体を放ちましたので、確実に倒してください」
戦闘中にちょこちょこと羽虫程度の分体をどこかに避難させようと分離する。
そのたびにヘプトンが分体を補足し、すぐに俺たちが処分している。
「なんという生への執着……逆にあっぱれなのだ!」
「こんなはずでは! こんなはずでは!!」
魔神の表情から、すっかり余裕がなくなっているのであった。
明日も17時に投稿します




