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第七話 とりあえず、足場づくり

「ここは最高だな! 食事は旨いし水は豊富だ!」


 塩のおかげで食事がぐっと美味しくなった。

 コオロギもどきの砂跳ね、あいつらには感謝だな。

 砂喰いもそうだけど、砂漠の生物も厳しい環境に適応しようと必死になっているから、役に立つ物が多いんだろうな……

 そしてここは砂漠の中にありながら、作物が、いや、森も作れる土壌と、水も豊富に存在する。

 

「そういえばロカは村に帰らなくて良いのか?」


「……ロカは……砂喰いに追われた。縁起が悪い。

 それに、ロカは枯れ枝、村に居場所はない……

 ロカはここにいたら迷惑か……?」


「いや、ロカがいいならいればいい。

 もうこの森にはあの猿もいない、ただ、このままだと何もせず老いていくだけだろ」


「老いて死ねるのは幸運。殆どのものは飢えか魔物にやられる。

 力強き勇者たちは、砂漠を渡りいろいろな場所を移動して多くの名声と富を得る」


「いいなそれ、世界を旅しながら好き勝手生きていければ一番だな」


「ゲイツなら伝説の星渡りのように名を残せる! ロカが保証する!」


「星渡り?」


「ああ、様々な場所の生命の大樹や遺跡を発見して、多くの都市の礎を作り上げ、逃げ惑い移動しながら暮らしていたこの大地の民に安住の地を作った。多くの人や旅人に希望と夢を与え続けている伝説の勇者だ! 子守唄代わりに小さな頃から数々の冒険譚を聞かされている。今も存命な英雄だ!」


 星渡り……星間移動の認識がこの世界にあるとは思えない……もしかしたら、この宇宙船の関係者なのかも知れないな……覚えておこう。


「大都市もあるのか?」


「ああ、大きな生命の樹の元には大都市が作られる。

 この森の樹位あればかなり巨大な都市になるぞ!

 集まれば魔物にも対抗できる!」


「砂漠にも有るのか?」


「ああ、砂漠には4つの街と1つの王都がある。

 我らガルラの王ガルラが住まわれている」


「うーん、地図でもあればなぁ……」


「地図は街に行けば有るだろうが、とても高い……

 だが、砂喰いの干し肉と皮、それと石があれば良いものが買える!」


「なぁ、たとえばこの場所、誰の持ち主かとかどうやって決めるんだ?」


「基本的には最初に見つけた者の物だ、ここはアクワンの森と呼ばれて誰も近づかないから大丈夫だと思うぞ」


「なんかジャッキなら倒せるかもって言ってなかったか?」


「ああ、砂漠におびき寄せればジャッキの武器で遠くから倒せる。

 ただ、アクワンは賢いから森深くから出てこない。

 森でアクワンを倒すのは……ゲイツ以外には不可能だ!」


 何故か誇らしげに胸を張る。

 ふむ、なかなかいい形だな。


「なんにせよ、一度は街に出て生活に必要なものを増やしていかないとな」


「ここからなら、太陽が出る方向に街があるぞ、ディファイの街だ」


「よし、しばらくここで出来る事がすんだら、ディファイの街を目的地としよう!」


「ロカも手伝うぞ!」


「そうだな、それじゃあ早速やっていくか!」


 最初の目的は住居、次にプラント周りの整備、森の間伐をしながら木材を利用して建築を行っていく。

 ロカには細かな革の加工などをお願いする。

 

 家は木材を組み合わせて組んでいく、組木づくりは頑丈だし寸分も違わず切り出して組み合わせればかなりの強度が出せる。

 ちょっと肉体強化しながらホイホイと家の外回りを組み上げていく。

 窓や扉なんかも細かく切り出して組み合わせて作り上げていく。


 家が終わればプラント周りだ。

 宇宙船を利用した頑強な壁、土壌改良のために地面に直置きで、排出される水を木製の水路を通じて拠点の中心に水を貯めて排出させる流れを作る。

 家の中にも引き込んで、自由に水が使えるようにする。

 排泄物もきちんと下流に流せるようにする。

 いずれは水車なんかも作って動力としても利用したい。


 それから数日は、切り出して組み立てる作業に没頭した。

 ベッドなどはロカが毛皮を加工して作ってくれた。

 いくつかの森の中の生物も確認している。

 鳥は多く存在しており、羽毛は素材としても非常に重要だ。

 猿はアクワンが呼び出したのが全てらしく他に見つけられなかったが、イノシシのような生物や馬というか鹿みたいな生物も見つけた。

 ロカもみたことがないというイノシシに似た動物は、味もいいし脂が多く取れるし、水筒代わりの膀胱、革も使いやすく、家畜化を試みるために捕獲した。


 土を深く掘り、丸太で地面も周囲も囲っておいた。

 始めは暴れたが、豊富な餌と清潔な空間、それと、俺の威圧に屈して馴れていってくれた。

 鳥も飼い始めた。

 卵の確保と繁殖してくれると嬉しいなぁ……


 畑も作った。

 いくつかの作物や果実を移動させて、効率よく栽培させていく。

 酪農によって出る有機物も堆肥としてきちんと利用していく。

 生きるための術はジジイとババアにこれでもかと叩き込まれているから、感謝……するしかねぇな。

 ロカと二人、毎日、日が出れば働き、日が沈めば眠って整えた。

 俺のワガママは出来る限り通してもらい、風呂なんかも作ったりしたが、そんな日々もあっという間に過ぎていく……

 こうしてようやく俺達の居場所が完成した。


「お疲れ様でしたー!」


「お疲れなのだー!」


 二人だけだが、今日は随分と料理を頑張った。

 オーブンと竈が二口、調味料も色々と発見している。

 塩も随分と溜まってきた。

 生活基盤としては安定した。


「さて、家畜たちも牧場でしばらくは世話をしなくても大丈夫になったし……街へ行くか!」


「ああ、ロカも革とか頑張ったぞ!」


「そうだな、砂喰いの巣を潰したり、色々とやったからな」


「ロカはもう自分を卑下しない、ゲイツのおかげでガルラとしての誇りを取り戻した!」


 ロカには短剣や細剣の使い方を指導した。

 やはり、適正のある武器で戦えば、身体能力と合わさってかなりの使い手になれる素質を感じた。

 ただ、巨大な魔物相手には戦いにくいので長物も少し教えている。

 今の所薙刀が一番使いやすそうだ。力は有るにこしたことはないが、技でカバーできる。

 魔物相手には薙刀、小型の魔物や人間相手には細剣と体術を指導している。


 宇宙船やアクワンの骨で武器やら防具を作ったり、俺の武具も砂喰い達とアクワンの魔石で強化した。おかげで使いやすいロングソードにして今は身につけている。

 胸当てだけだった鎧も肩と小手、ブーツへと成長している。

 序盤の方が楽しいんだよな、育てるの……


「結局最終的にはフルプレートに二刀か両手剣になるんだよなぁ……」


「両手剣を持つゲイツは……その、かっこいいのだろうな……」


 別に装備したわけでも無いのに、少しロカは照れている。

 自分の価値は理解しても、男性の趣味はそっちらしい……

 可愛かったので頭を撫でてやったら真っ赤になって自分の部屋に帰ってしまった。


 とりあえず、明日は街へと向けて出発する!

 

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