第七十二話 明かされる世界
情報は力だ。
その方針で世界中に偵察機を飛ばしている。
そして、ようやくこの星の全貌を知ることになった。
「しかし、思ったよりも虫人達の勢力図は狭いんだな。
そりゃこれ以上攻めて来ないわけだ……」
「確かにこんな小さな島に固執するより魔物と戦っていくらでもある大地を勝ち取ったほうがいいな」
「虫人達の住居は……そのまま巣だな……」
「魔物は強そうなのが多いのだ!」
「虫人は虫人で生き残るのに必死なのかもな」
「だからといって捕食されてやるわけにもいかんでな」
「文化技術を発展できなかったのが、我々との大きな違いですね」
すっかり発言が人間よりになっているなヘプトンは、見た目も真面目な青年のような見た目になっている。個人的には以前のメカメカしい外見が好きなんだけど……
「戦闘時は変身します」
前言撤回です。最高です。
「現在大陸出店計画は70%ほど、海中の魔物や空の魔物対策も完成しましたので、あとは船艇の完成を待つだけです」
「ゲイツ商会調べで人口は右肩上がり、経済成長も鰻登りです」
「医療の拡充と教育の拡充は最優先で頼むぞ」
「大陸に進出しても、住む人間が居なければただの素材採取場ですからね」
「先人たちの知恵である機械と、今の俺らの知恵と力で、この星の生存権を勝ち取るぞ!」
「おー!!」
結局、虫人たちが再び襲ってくることはなかった。
半年後、ついに大陸上陸部隊の準備が整う。
総勢1000人を超える社員が新大陸に支社を作りに行く。
各国の新天地で一旗あげるつもりの新進気鋭の人々も多く参加している。
俺たちにも大きな変化が起きた。
パリザンは今の大陸に骨を埋めるということで、様々なことを一手に押し付けることになった。
「ま、子どもたちが広い世界が見れるように頑張ってくれ」
今度生まれてくる子供のことも有るし、教えることは全て朧に教えたと、顧問という立場で大陸側の管理を引き受けてくれた。しかし、野球チームでも作るつもりなのだろうか……元気だなぁ……
「新たなる人類の第一歩だ! 出港!」
大型船舶とそれを護衛する船舶が取り囲み、上空からも護衛部隊が見守る。
無人哨戒艇や飛空艇が周囲を幅広く監視している。
海中にも無人偵察潜水艦を配備している。
「……暇だな……」
「魔物が苦痛を与える電波を発しているシステムが上手く稼働している証左ですね」
「大陸側、虫人達も動きはありません」
「ゲイツ師匠! でっかい魚が釣れたのだ!!」
「おー、さばいて食おうぜ」
「ヘプトン氏がさばいてくれています」
「あれ? ヘプトンはここに……」
「分体です」
「なるほど……」
「まだまだ釣れそうならみんなにもわけてあげてくれ」
「了解いたしました」
海の旅は、始めの覚悟と反して、とても快適だった。
漁をしながら進むので、毎日目新しい魚介類を楽しみながら、時にお酒も交えつつ、進んでいく。
そして、本当に順調に大陸が眼前に広がった。
「結局釣り上げた巨大がに以外、特に戦いもなかったな」
「あれは美味しかったですね」
「確かに……いずれはああいった物を安定して供給できる漁も作りたいな」
海の幸は本当に美味しかった……
「上陸地帯までの海上、海中、上陸地帯周囲共に異常ありません。
小型艇で上陸予定地点に上陸部隊を上陸させます」
「何回上陸言うんだよ……」
「妙なところにこだわりますね」
「すまん、気になってつい口から出た。皆は真面目に仕事をしているのにすまない」
「大丈夫です、後ろのお弟子さんはツボったようで、その様子を見て社員たちの緊張も和らいでいますから」
「ちょ、なんで言うのだ……プフフ、酷いのだマーチ……ぐふっ……」
「ふはっ! 何だその顔はッハッハッハ!」
真面目な顔をしようとして余計に笑いをこらえる顔が歪みきって、我慢がしきれなかった。
おかげでブリッジは笑いで包まれて、緊張した空気が一掃された。
「よし、ロカのおかげで緊張も解けたな。上陸するぞ!」
「先輩良かったですね、皆様のお役に立てましたよ」
「そうなのか? それなら良かった……のか?」
更に大きな笑い声が響いた。
ロカのおかげで、緊張することなく上陸した部隊は、急襲揚陸艇から特殊車両と大量の資材を利用してあっという間に防衛拠点を作り上げていく。
「周囲の調査と探索に行ってくるぜ」
「まったく、社長がなんでそんなところに混ざるんですか……」
「身体を動かさないと死んじまうからだ」
「真面目な顔してアホなこと言わないでください。危ないことはしてはいけませんよ」
「マーチはお母さんみたいだな」
「言われたくないならきちんと安全を第一に考えてください」
「わかってる」
「それでは、お願いします」
「よし、行くぞ!」
新たな大陸の未知の場所、久しぶりに胸が高鳴っている。
情報としてではなく、肌で感じてわかることも多いんだ!




