第七十一話 敵
弾幕をかいくぐり、もしくは被弾し墜落するように大地に堕ちる。
一部は超低空を飛行し、まっすぐと白兵戦部隊へと突っ込んでくる。
ちょうど単体行動になった一体に狙いを定め、一気に縮地で間合いを詰める……
「ほう……やるじゃないか」
一刀の元に切り捨てようかと思っていたが、その一撃は腕の外骨格によって受けられた。
受けた腕ごと切り落とし二の刃で逆袈裟に切り捨てた。
ギチギチとしばらく鳴いていたが、そのまま息絶えた。
既に他の場所でも戦闘が起きている。
基本的に白兵戦、今回は圧倒的に数が多いので3マンセル以上で当たらせている。
防御に長けたものが敵を抑え、残り二人で攻撃と補助を行う。
そのチームをいくつもつくり、問題が発生すれば別の部隊がすぐに救助、交代を行えるようにして犠牲を減らすように努力している。
「次!!」
分断された仲間に加勢しようとする敵を見つけて一気に近接する。
基本的に早いもの勝ちだ。パリザンも張り切っているので、今晩の酒のつまみは何体倒したかになるのは間違いない、負けられんのだ……
飛び込んでくる俺に気がついて、まるでカマキリの鎌のように腕が変化して鋭い突きを繰り出してくる。
剣で弾いて見ると、速さ、強さ、鋭さ、どれをとってもかなり高いレベルにあるのがわかる。
超強化された俺の剣でも敵の武器を切断することは出来なかった。
返す刀は盾のような甲羅にうまく流されてしまった。
眼前を敵の刃がかすめる。予想通り、刃が変化して間合いを変えられた。
先発隊を解析した情報がなければ見誤った可能性があった……
敵も避けられると考えていなかったのか、大ぶりの一撃を放ったのだろう。
脇下から首を刎ねられて、こちらが侮れない存在だと気がついただろう。
「死んだか……」
腕や足、場合によっては上半身と下半身がばらばらになっても生きる可能性も提示されたので、完全に死んだことを確認するまでは安心できない。
「次は……」
バイザー上の単独の敵は存在しない。
「状況は?」
「けが人は出ていますが、重傷者は出ておりません。
制圧は時間の問題だと思います」
「油断しないよう繰り返し伝えてくれ……」
「はい」
それから十数分後、最後の一体が逃亡を図り、銃弾によって破壊され戦闘は終了した。
「どうやら、2体でおあいこじゃの」
「流石に敵が少ないからな」
「万全を期したが、それでも被害が出たのぉ……」
「さすがに、誰一人傷つくことなく、ってのは甘いと弟子に教わった」
「じゃが、あまり絞りすぎてもついてこれんもんが出てくるからな……
この間のようなことは程々にな、本気で嫌じゃが、儂らだけにしておけ」
「わかった……」
「繰り返すが、やりたいわけじゃないからな儂らも、もしも万が一またやるのなら、万が一じゃぞ」
「ああ、期待しておいてくれ」
「お主は馬鹿じゃな」
「ああ……」
ものっすごい大きなため息をしてパリザンは帰っていった。
「高速偵察機から情報が届きました。二度の敵襲で敵本土の方向が確定されました」
メインモニターに大きな地図が現れる。中央の島が大陸だ。
「現在も地図の範囲は広がっていますが、現状はこのような位置関係です」
西に大きな島が存在する。
うちの大陸に比べるとかなり巨大だ……
「この星は……大きいんだな……」
現在高速飛行艇で大陸内の移動は2時間ほどで横断も縦断もできる。
海上を移動して10時間ほどで別の大陸に移動できると予想されている。
「敵はなんで正確にこちらの位置を把握できるんだ?」
「レーダーににた感覚器でこちらの存在を把握している可能性が示唆されています。
ステルス機能付き高速偵察機も敵勢力から攻撃を受けていますので、かなり高性能なものではないでしょうか?」
「それと、なかなかおもしろい素材も手に入ることがわかってきました。
さらに研究が必要ですが、なかなか素晴らしい生体素材ですよ……」
最近ポポが怖い。
「過去に居た個体と比べて戦闘力の向上が認められますが、我ら兵器単体と比べると皆さんとの共闘によって、計算以上の戦闘力向上が起きました。私は驚きに満ち溢れています」
「ふふふ、我らの可能性は無限大なのだ!」
「だれだロカに酒飲ませたの……」
「ほらほら先輩戻りますよ-……失礼しました-」
「そうか、祝勝会中か……はー、偉くはなりたくねーなー……」
「それではゲイツ様、早く意思決定をして行きましょう。
このまま防衛していくか、打って出るか」
「打って出るしか無いな、この大陸の物資は限度がある。
いち早く広い領土から物資を回収して戦力増強を狙う」
「戦力構成はゲイツ様らを中心に機械兵を多く出す布陣にしましょう。
防衛可能戦力をしっかりと残しても、侵攻できる戦力は用意できます!」
ポポがノリノリだ。
「とにかく本格的に準備に入ります。
会社としての全体方針は、大陸進出で決定ということで」
「大陸支社開店だな」
この日から、全ての工房が侵攻作戦に向けて火を絶やすことが無くなった。




