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第六十九話 ファーストコンタクト

「目的地はこの大陸か?」


「間違いないでしょうね、まっすぐとこちらへ向かっています」


「数は?」


「5体、今偵察用ドローンからの映像を出します」


 モニターに海上の小さな点が映し出され、拡大されていく。


「コレが……敵……」


「トンボ……と蜂みたいに見えるな」


 頭は昆虫、身体は人の形をしているが、節や外骨格のようにテカテカと光っている。

 背中の羽根で空も自在に飛べるようだ……


「殺虫剤は効かないのかね?」


「薬剤には強い耐性を持っています。あれらに有効な濃度の薬剤を使用すると、大陸中の生物に異常が現れる可能性があります」


「ああ、すでに試してたんだな、冗談のつもりだったんだが……

 おおよその到着予定時間は?」


「17時間です」


「よし、現時刻を持って大陸に第一級異常事態宣言、各都市のシェルターへの避難を、防衛軍は情報リンクを構築、オートマタ部隊を全軍敵上陸地方に集結させる」


「全軍……いいのかゲイツ?」


「ああ、敵戦力が予想を超えたた時、総力を奮っていなかったと後悔したくない。

 俺たちも、全員でかかる。

 結局、これを抑えられなければ滅亡だろ?」


「マスターの言うとおりです」


「な?」


「ふむ、儂も若者の未来のために老骨に鞭打つかのぉ……」


「何言ってんだ若い嫁さん見つけて二人も子供作っといて老体とか……

 ま、俺もガキたちの未来のために踏ん張らねぇとなぁ!!」


 ロカとジルバの間には子供は出来なかった。

 どうやら、人間の子を成せるのは人間だけらしい。

 フッコ族とも不可能だそうだ、試したわけではないが……

 その代わり、俺達は遺児の親となった。

 様々な事情で一人となった子供を保護し、立派な成人とさせるシステムを作り、いつの間にか俺のことを社員は社長、子どもたちは親父おやじと呼ぶようになった。

 まぁ、子供は嫌いじゃないので、可愛がっている。

 そんなわけで、俺にも守るべきものが増えている。


「最悪本社で逃げ回って、なんとか再建だな……その時はマーチ、頼むぞ」


「変なフラグ立てないでください」


「絶対に帰ってきてください。まだ、改造したいので」


「ポポ、なんかその言葉はアレだが、ありがとう」


 小型艇に乗って俺たちも戦場へと移動する。

 本社はいざという時のために戦場とは最も離れた場所で待機してもらう。

 戦場の周囲にはドローンや監視システムが配置され、すべての情報は処理されて自動兵達に送られている。有人兵器や俺達のサポートにも利用される。

 すでに、戦いは剣やら銃で戦う世界から変化している。

 それでも圧倒的な力を発揮する人間は居る。

 十本刀も全員集合してくれた。

 魔法部隊も後方で準備を開始している。

 大陸中の人間全てによる総力戦だ。


「この戦いに勝つことが、この星で生きる最低条件だ!

 手を出す気にならないほど徹底的にやってやれ!!」


 俺の檄に社員たちが応える。

 海岸線に展開した戦闘車両、設置された武器には社員たちが配備されている。

 飛行ユニットを装備した白兵戦部隊も準備は万端だ。

 

「間もなく有効射程範囲に敵勢力が侵入します」


「総員戦闘準備!! 戦術リンク起動!!」

 

 バイザーに様々な戦場の情報が表示される。

 気配を探るような名人技を技術によって可能にしている。

 敵との相対距離が知れるだけでもかなりありがたい。

 死角の敵の動きも手にとるようにわかる。

 バイザーの表示が一気にグリーンに変化する。


「撃てぇ!!」


 超長距離狙撃、誘導型ミサイル、魔法兵器が火を吹く。

 魔法は機械テクノロジーの力で魔装兵器と改変されている。

 バイザーに映された敵が突然の砲撃に回避行動を取る。

 

「早いな……どうやら硬い、ウルフほどじゃないし、ゴーレムほどではない……

 対応できるな!」


 弾幕を華麗に避けながら5体の敵はまっすぐこちらへとやってくる。

 

「短距離砲に切り替えろ、白兵部隊も準備しろ!」


「一番うしろのやつに射線を集中させろ、被弾して飛行能力が落ちてるのだ!」


 ロカが指示を飛ばす。

 一斉に銃撃が放たれ、光の波が被弾していた敵を飲み込んでいく。

 回避もままならない圧倒的銃弾に突如襲われ、ようやく一体撃破することに成功する。


「二次ライン突破、白兵部隊出るぞ!」


 飛行ユニットで敵集団へアタックをかける陽動の銃撃は持続しながら高高度より奇襲をかける。

 戦術リンクによって、銃撃を奇襲のタイミングだけ止めることも容易だ。


『ロカ、ジルバ合わせるぞ』『いいのだ』『はい』


 戦争の形は変わっても、鍛え抜いた技は未だに有効だ。

 

「「「至伝 百花繚乱3つ合わせ」」」


 斬撃が混じり合い、敵の頭上で花開く、数万の剣戟が花びらのように敵を切り裂いていく。

 銃撃を回避に手一杯だった状態で頭上から突然の奇襲、羽を切り裂き、手足を切り裂く。


「残り2体!」


「ギギっ!!」


 頭上を取られた振りを察して、急加速して陸上へと向かう。

 すでに飛行能力も長期持続は難しそうだ。


『パリザンそっちに向かった、挟み撃ちにするぞ!』


『了解じゃ』


「短距離魔法重装兵器、発射!」


 必死に陸地を求めていた虫たちに、無数の光球が複雑な軌道を描きながら追尾して迫る。

 被弾した肉体で必死に回避をするも、多数着弾し、墜落するように大地に堕ちる。

 二体のうち一体は受け身も取ることなく地面に叩きつけられ、そのまま動かなくなる。


「グギギ……ギッ!」


 ようやく立ち上がろうとしたした最後の一匹は、背後に現れたパリザンによって首を刎ねられた……


 初戦は、我ら商会の完全勝利だ。

 



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