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第五十四話 復帰したもの、代償を払ったもの

 剣を捨て一気に間合いを詰める、身を焦がす熱波の渦に限界まで気を高め恐れず飛び込む。

 ファルマの剣に触れれば、防御なんて関係なく燃えると言うか蒸発するだろう。

 剣で受けることも避けることさえ意味をなさない、ならば、無手にて飛び込むのみ。

 胸が高鳴る。

 迫りくる死に自分から向かい、そこにある生を掴む、このスリルは他の全てを凌駕する。

 瞬きよりも短い刹那、一分の隙もない敵の刹那の隙に自らをねじ込む。

 剣が迫り、肉が焼ける。

 灼熱の死が迫り、唯一の生を掴む一番深い場所に飛び込む……

 

(届けぇ!!)





 ごおぉぉぉ……





 強烈な熱波が周囲を焼き払う。

 目の前にはファルマが満身創痍で立っている。

 俺も、全身やけどだらけだが、蒸発すること無く立っている。

  

 ヒュンヒュンヒュン……


 空を舞っていたファルマの剣が俺たちの立つ背後に回転しながら突き刺さる。

 周囲の地面をグツグツとマグマ化させたが、半分ほど埋まって少しづつ冷え始めた。


「……と、んでも……ねぇな……」


「無刀取り、お返しの芸だ」


「はっ……俺の……負けだ……」


 グラリと傾くファルマの身体を受け止める。

 

『悪いマーチ、迎えに来てくれ……身体が動かねぇ……』


『すぐに向かわせています! ペイザン様も重症です』


『ロカ、どうだ?』


『ゲイツ師匠大丈夫なのか!?』


『生きてはいる……助けられたか?』


『大丈夫なのだ……ひどい状態だったけど……今連れて帰るのだ』


『俺もペイザンもしばらく医療ポッド入りだ……

 あとの帝国兵対策は……任せたぞ……』


 通信を終えると同時に膝をつく。

 トレーラーが爆音を上げて近づいてくる。

 あとは……弟子たちに任せる……


 俺は、意識を手放した……


 楽しかったなぁ……








「ごぼっ……」


 俺が目を覚ますと、周囲が慌ただしくなるのが感じる。

 しばらくすると、俺を包み込んでいた液体が取り除かれ、口に入れられていた管を抜かれる。


「ガハッ! ゲヘェ……あー……相変わらず、これは馴れねぇなぁ……」


「ゲイツ様、お目覚めになられて安心しました」


「ポポ、悪いな……ふむ……結構長かったか?」


「はい、今回は丸二週間ほど……」


「肉が落ちたし……なんだか皮膚が突っ張るな……いてて、関節も硬くなってるなぁ……」


「とにかく火傷がひどく、手のひらは大丈夫ですか?」


「ああ、まが……る、曲がる。

 問題ない、また鍛えればいいさ」


「全く、パリザン殿と同じことを……本当に皆さんは……」


「そう言えばファルマやウイジス達は? それと帝国も」


「ウイジス殿はすでに目覚めております。

 ファルマ殿は隣です。熱傷と熱気を吸い込んだ呼吸器の治療がもう少し必要ですね」


「帝国については私から、ゲイツ様お目覚め心からお慶び申し上げます」


「マーチか、いろいろと無茶振りしたけどまぁ、上手くやってくれてると信じている」


「ありがたいお言葉、とりあえずは司令室に」


「わかった」


 ようやく身体に繋がれた管を全て抜いて、身体を拭いて服に着替える。

 歩いてみるとふわふわすると言うか、違和感があるが、直ぐに取り戻すだろう。

 医療ポッド、治療系のアーティファクトの中で最先端の設備だ。

 致命的な傷も、間に合えば間に合う。

 

「ゲイツ師匠!!」


「師匠!」


 部屋に入るとロカとジルバが抱きついてきた……


「心配かけたな……」


「信じていたのだ!」


「よくぞご無事で……」


「ゲイツ、遅かったな」


 現れたパリザン、左肩から先には義手をつけている。

 それ以外にも凄まじい刀傷が見える範囲に無数について、なんというか、凄みが増している。


「おうパリザン……その腕は……」


「うむ、指を半分ほどいかれてな。

 いやなに、正直ポポ殿の義手は素晴らしくてな!

 むしろ以前より思い通りに動くぐらいだから変な同情はいらんぞ?

 たぶん、強くなったぞ儂」


「……はっ! さすがパリザンだな!」


「ウイジス殿の最期の一撃が見事でな……腕一本犠牲にしてなんとか勝てたわい」


「そう言えばロカ、人質は?」


「ちゃんと救出したのだ。

 二人の奥さんと子供……酷い奴隷扱いだったのだ……」


「場所の特定から奴隷解除まで、朧殿のご尽力によるおかげです」


「そうか、世話になったな朧」


「いえ、仕事ですからそれに実行にはお二人を始めパリザン様のご指導の賜物です」


「そうだな。それじゃあマーチ、帝国との戦闘はどうなってる?」


「はい、まずは現状から、我々は帝国領内にいます」


「領内? あの戦いは?」


「記録を見ながら説明しましょうか」


 メインモニターに戦いの記録が流され、それに合わせてマーチが説明する。

 十本刀が倒されたが、こちらの戦力の中心だと考えられた俺とパリザンが倒されたことで、なぜか一斉突撃を仕掛けてきた。

 もちろんこちらは有刺鉄線を含めた防御をしっかりと敷いている。

 数に任せてそれらを破壊している的をうち続ける作業が長々と続き、救出作戦が終わったロカ達が戻ると、ジルバ、朧、霞、幻、焔、巖が率いる部隊に蹂躙されていく……

 なんというか、お粗末にも程がある。

 そのまま反攻作戦に出て、こちらの間者を逃げる敵兵に混ぜることで、帝国との国境に作られた巨大な砦を内部から落とし、そのまま砦を鹵獲して、今に至る……


「って事か、まぁまずは、皆良くやった」


 寝ている間に起きた展開が早すぎて、寝起きの頭ではついてこないので、ちょっとお茶休憩を入れさせてもらった。

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― 新着の感想 ―
[一言] お~飛びましたねぇ! こういう展開も大好きですよ~!
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