第五十一話 開戦
「帝国兵は驚いているだろうな」
「そうですね、昨日まで何もなかった場所に、突然城壁が現れて大量の銃器が自分たちを狙っているんですから」
「おーおー、慌ててる慌ててる」
「爆炎のファルマ!! 風雷のウイジスもいるのだ! 凄いのだ!」
「なるほど、良い面構えしていますね、他の兵と違って落ち着いていますし」
「……ふむ、なるほど十本刀の名は伊達では無さそうですな」
「パリザンどう思う? 朧で倒せそうか?」
「……刺し違えて良いのなら……」
「なら却下だな、どうやら十本刀は2名かな、よほど上手く気配を消せるならわからんが……
俺とパリザンで相手をする」
「……わかったのだ……」
「悪いけど、兵隊の相手頼んだぞ! なーに予定の3倍になっただけだ!」
「師匠の名を汚さぬように励みます」
「なあに、作戦通り、殺さず動けぬようにして相手の手を減らせば相手するのはもっと少なくなる」
「負傷兵がいれば救助しなければいけません。戦えないレベルで負傷させてとどめを刺さないで相手の人的物資を消耗させる……いやはや恐ろしい考えです」
忍びらしい合理的な考え方だ。
数で劣る我々の取れる様々な戦術を指示してくれている。
「相手が攻めてきて、こちらが守る。
さらにこちらには強固な砦がある。
そう簡単には落とさせぬでござる」
少し興奮しているのか、語尾がおかしくなっている。
それでも俺とパリザンで知恵を出し合って、なんとも悪辣な備えはできている。
これもジルバのおかげだ。
「なんでお二人はいつも攻め込む事を前提に話すんですか、どんな戦争狂なんですか……」
呆れて冷たい目で見られてしまったが、たしかにこちらから攻め入る段階ではない、まずは降りかかる火の粉を振り払うことに注力すればいい。
トレーラー要塞という利点を最大に活かせば、我々は不利どころか有利に戦える可能性だって十分にある。
「どうやら、来るみたいですね」
「よし! 予定通り対応するぞ!」
特に特殊な合図があるわけでもない、帝国兵が隊列を組んで前進してくる。
『十分にひきつけろよ、絶対に勝手に打つなよー』
騎乗兵の突撃速度は早い、ビビって誰かが銃撃をはじめてしまっては、せっかくの準備が無駄になる。全ての兵には通信機付きのヘルメットが支給されている。
司令室からの命令は即座に全兵士に伝えられる。
そして、戦場の様子は上空に浮かぶドローンによって司令室にリアルタイムで閲覧している。
敵がどれほどの事をやってきているかはわからないが、聞いてる分にはこんなやり方はオレたちしかしていないらしい。
『よし! A地点通過した! 馬防柵を起こせ!! 有刺鉄線を引けー!!』
パリザンの号令で、地面に掘った穴に隠された馬防柵が引き起こされる。
目の前に突然槍衾の壁が現れ、騎乗部隊は足を停めざるを得ない。
そして、その背後に紐で引かれた有刺鉄線の壁が現れる。
騎乗兵の足を完全に殺す間が一瞬で完成する。
後続の歩兵隊が急いで間に合わない。
塹壕から射撃部隊が射撃、トレーラーからの一斉砲火も騎乗兵たちに降り注ぐ……
隠された塹壕の背後で構えていた部隊も武器を銃器に持ち替えて銃弾を浴びせる。
左右に展開して逃げようとするが、その先にはロカとジルバが率いる歩兵部隊で作るファランクス、槍衾によって阻まれる。
狭い空間では騎乗兵の足も活かすことができない。
さらに、騎乗魔物はとどめをさすが、兵士はわざと生かしておく。
戦うには重症だが、命の別状はない、もちろん運悪く亡くなる兵も多い。
『敵後詰めが鉄線に取り付いた。もたもたしているみたいだからケツを叩いて助けてやれ!』
歩兵隊は有刺鉄線をどかして味方を助けに行こうとするが、手間取っている。
その場で手間取ればいい的になる。だからといって味方は生きて救助を訴える……
「完全にこっちが悪役だな……」
「戦争なんてそんなもんですよゲイツ様」
「とにかく、最初の作戦は大成功だ。敵のやっかいな足を潰せた。
馬防柵裏の鉄線を展開して引きこもるぞ」
『第二作戦開始!』
同じように紐を牽引して有刺鉄線による壁がトレーラーの近くに構成される。
ご丁寧に3層が組み合わさって、より排除が大変になっている。
ところどころ最初の有刺鉄線を抜けた歩兵が騎兵部隊の兵を救出し連れ帰る。
その途中にも容赦なく歩兵部隊に負傷兵を増やしていく……
「さて、そろそろ……動いたな……」
予定通り、10本刀が動き出した。
貧弱な有刺鉄線の壁なんて二人の力で一瞬で吹き飛ばされるだろう。
帝国と亜人である十本刀が密な連携は取るはずはないと読んでいたが、読み通りに二人は単独で行動している。
そして、帝国兵も十本刀を快く思っていないことは明らかだ……
「さてと、お楽しみの時間だ」
「よく見ておれ皆の衆、行って参る!」
二人が最前線の有刺鉄線を吹き飛ばし、敵軍の撤退が進む。
そのままトレーラーまで破壊されてはかなわないので、俺とパルザンが二人の前に立つ。
必死に救助作業を行っている帝国兵は俺たちや十本刀は無視して作業を続けている。
戦場には二人の十本刀と、俺とパルザンが立っていた。
「帝国に味方するとは落ちたものだな……」
「貴様らが王の顔に泥を塗ったからだ……」
「まだ根に持ってるのか? あの森からアクワンを除いてやっただけでも感謝されていいと思うんだが……」
「お前らが去って程なくして森は砂漠に沈んだ……ある程度は実りを得たことは事実だが……」
「だからといって、あの帝国と手を組むとは……ガルラ族の誇りはどこかに忘れてきたのか?」
「……どうとでも言え……こんな胸糞悪い仕事はさっさと終わらせる。
俺の爆炎で後ろのハリボテもふっとばしてやるよ!!」
「我が風の刃で引き裂いてみせよう!」
ファルマが巨大な大剣を振るうと火柱が発生し、地面を疾走って向かってくる。
ウイジスの大剣からは無数の鎌鼬が広がっていく。
「初伝 土波」
「忍術 砂壁」
地面をえぐって火柱に大量の土砂をかぶせてやる。火柱は大量の土砂に呑まれ、爆発を起こしたが、そのまま土に潰されてしまう。
鎌鼬もペイザンの砂の壁に吸い込まれるようにかき消されてしまう。
「ほう……小細工ができるじゃねーか」
「ファルマ遊ぶなよ、こいつら出来るぞ」
「わーってるって!」
「ほんとにわかってるのか? 本気でかかってこいよ、おじさんが遊んでやるよ」
「……調子に乗ってんじゃねぇ!!」
ファルマの持つ剣から巨大な炎が沸き起こる。
「さあ、かかってこい!」




