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第三十九話 戦いの匂い

「それにしても、多種多様な品揃え、しかもそれぞれにも驚くほどの量を確保されている……

 正直名のある商会でもこれ程の行商隊を見たことがありませんが、お名前もないと……」


 今はマーチが村長的な人と話している。

 俺は少し下がって偉そうに座って、話は全てマーチがしている。

 マーチは言葉巧みに情報を引き出して、この村の不満点などを洗い出して分析して、響く言葉で村人を勧誘していく……うーん、言葉は悪いけど、宗教の教祖とかやらせたら恐ろしいことになるんじゃないかな?


「結局5日でしたね、一週間くらいかかるかと思ったんですが……」


 村人40名が商会へと参入した。

 まず数名を口説き落とし、我々の生活をさせた後に説得に加えさせ、あれよあれよと懐柔していく様は、外から見ていても少し怖いぐらい、見事だった。


「新生活だヒャッハー!」


 と、喜んで村人たちは商会へと参加を決めていった。

 しかし、マーチは全員に寛容なわけではない。


「あなたは薬物中毒に陥っている。辞める気がないなら受けいるわけにはいかない」


「う、うるせぇ! 関係ないだろそんなもん!」


「薬は組織にとって猛毒、絶対に侵入させない。

 あなたが強い意志を持って克服するのなら協力は惜しみませんが、あなたからはそんな気概は感じない。それどころが、自らの快楽を求めるために家族に犯罪まがいなことまでさせている。

 ……同じ村に暮らす人を、売っていることも調べがついています」


「なっ……」


 いつの間に……と思ったが、口には出さなかった。

 マーチは個人で情報収集のためのチームを作っている。

 情報はこの世界で非常に強い武器になる。

 商会のそして俺の知識から様々なツールを作って情報集に役立てている。


 命までは取らないが、村からは退去させられた。

 と、言っても村は必要なものを以外は放棄するので、再びここをねぐらにして、浮浪者のたまり場になる可能性もある。


「ま、集まってくれるなら後で処理すればいいんですよ」


 マーチの言う通り、この湿地帯、ろくでもない輩も多い。

 自分たちを愚連隊などと名乗って好き勝手やっているブラックタイガーとレッドドラゴンというチームには多数の不届き者が所属して、一般市民に迷惑をかけている。

 ときには略奪、強盗なども働き、非常に困っている。

 ピープが中心の地なのにそれらの族を構成しているのはフッコ族やフォクシ族が多い。


「それと、人さらいの本拠地もあります」


「西の海岸線には人食いの溜まり場も散在しております……」


「魔物も泥這いの巣が最近増えていて……相変わらずこの地は厳しいですね」


 この地も平穏とは程遠い。


「泥這いってこの間倒したヌメヌメしたワニみたいなやつだろ?

 まぁまぁ上手いし、皮は頑丈で使えるんだよな?」


「そうですね、ただ普通はゲイツ様のように泥に潜む泥這いの位置を事前に把握して一刀のもとに倒したりは出来ませんから……」


「ロカももう出来るぞ!」


「もちろん私も……」


「お二人とゲイツ様が凄いだけで……隊員の方々だって、歩いていて急に襲われれば抵抗する間もなくやられるのです……普通は……」


「ポポと話していた装置はもうすぐ実用化出来るんだろ?」


「はい! 小型化の目処も立ってきたので、これで魔物対策は随分と楽になります。

 この湿地帯は擬態する魔物が多いですからね」


 今開発しているのが、いわゆるサーモグラフィーを応用したレーダーだ。

 これによって暗がりに潜んでいる魔物を誰でも事前に発見する手助けになる。


「あんまり機械に頼りすぎずに心の目をだなぁ……」


「お三方みたいに天才ばかりでは無いのですから……」


 確かに訓練に一生懸命、皆ついてきてくれているが、ロカやジルバのように直ぐに気の扱いや存在を掴む者は出ていない。


「足りない部分は、道具で補いますよ!」


 ポポは様々な道具を作って商会の安全をより確かなものにしてくれている。


「最高の研究環境ですから!」


 もともとポポはそういった方面が大好きで、今ではほとんど戦闘には参加していないが、本当に充実している笑顔を見せる。

 ピープの民では珍しいらしく、研究員の多くはフッコの民だ。

 魔法と科学はベクトルが異なると考えられているかららしいが、ポポに言わせれば、科学で魔法にアプローチも魔法で科学にアプローチするのもどっちも楽しく奥が深くて本当に幸せらしい。

 そこらへんは、正直理解できないが、充実しているのなら何よりだ。

 たまに質問攻めで平気で徹夜とかするのにつきあわされるのには困ってしまうが……


 そんなこんなで、小さな村を吸収しながら緩やかに湿地帯を進んでいる商隊に、久しぶりにまとまった魔物との戦闘が起こったのは、土砂降りの雨の日だった。


「なんか来てるよな?」


「ゲイツ様、右前方南西の海岸線とジャングルの当たりで大規模な戦闘が起きています」


「画面出ます」


「うっわ……」


 モニターに映し出されたのは、悲惨な映像だった。

 気分を悪くして退席する人もでる。

 地面は一面の血の海、大量の人と魔物の死体……


「人食いと愚連隊と魔物……と見ないかっこした奴らだな……」


「帝国兵ですね……」


 人食いは魔物を無視して人間に襲いかかり、愚連隊は魔物と人食いを相手にして、帝国兵は他の勢力全てを攻撃している。もう、めちゃくちゃだ……

 魔物は首長竜、甲殻カニ、泥這い、などなどの群れだ……


「このまま行けば、帝国兵が残るな……」


「介入しますか……いや……ん? 海の方から……」


 進む速度を落として戦況を伺っていると、界面が盛り上がって巨大な首長竜が現れた。

 そしてその背後には大量の首長竜が着いてきている。


「長命種ですね……かなり大きな群れです。

 まずいな……大量の血の匂いで引き寄せられたんでしょうが、もう少し進むとこの地でも有数の街であるホーシツの街があります……」


 帝国兵がその姿を見て撤退を決めた。

 愚連隊達も蜘蛛の子を散らすように逃げ出し始め、背後から人食い族と魔物に襲われている。


「あいつら……ホーシツになすりつけるつもりだ!」


 帝国兵は、首長竜たちを街にぶつけてその隙に逃げ出すつもりらしい。


「仕方ねぇ、ホーシツに借りを作るぞ、人食い族と魔物は殲滅する。

 全員に戦闘配置着くように、外に打って出るのは俺たち3人でやる。

 奴らとホーシツの間に布陣する。援護しろ」


「わかりました」


『商隊に次ぐ、第一級戦闘配置、隣接戦はゲイツ、ロカ、ジルバ3名が受け持つ。

 各自、所定の場所に着くように、非戦闘員はシェルターへ退避』


 街をあの血の海にするのをただ見ているわけには行かない……


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― 新着の感想 ―
[一言] 俺はちょっと時間が出来たからさわりだけでも取りあえず読んどくかと思いこの小説を開いた・・・ そしたら読み終わってたんだ。 何を言っているのか(ry とても僕好みの作品でした! 続きも期待…
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