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第三十八話 湿地帯の村

「今日も雨だな……」


「はい……」


「ジメジメしてるな」


「はい……」


「トレーラー水陸両用なんだな……」


「はい……」


「暇だな……」


「それは同意できません……」


 最近は司令室でマーチと話している時間が増えてしまった。

 ロカとジルバが仕切る隊員とうちの隊員が大体の魔物を対応してしまっているからだ。


「弟子や部下の成長は嬉しいが……俺、あんまりこういう立場好きじゃねーんだよね」


「ゲイツ様、こちらの書類お願いします」


「マーチに任せるって言ってるじゃないか」


「駄目です。最終的な意思決定はゲイツ様にお願いします。

 これは譲れません」


「……マーチって頑固だよな」


「はい、頑固です」


 人も増えて、以前よりも俺の判断が必要な案件が増えてしまった。


「……内政官が欲しい。マーチを補佐する……」


「ようやくわかってくれましたか?」


「いや、わかってはいるんだが、教育とかには時間がかかるし、即戦力となると……」


「そうなんですよね、ポポやアンツたちも本当によく頑張ってくれています、勉強中の方々も少しづつ……でも……」


「人不足は未だ解決せず、と」


「この湿地帯も小規模集落が多いですから、また人さらいを……」


「物騒な物言いだなマーチ、相談して同行者を得るだけだ」


 湿地で足場も悪く、鬱蒼とした密林も多いために、進むスピードは上がらない。

 小型から中型の魔物も数多く、戦いのたびに停止しなければいけない。

 しかし、戦闘訓練としてはかなり役に立つ実践訓練となる。

 兵士候補生にはかなりの装備も配給されており、けが人は出てしまうが、死人は出ていない。


「おお、このトカゲみたいなのの玉子上手いな、肉もいけるいける。

 ちょっと変わった風味が癖になるな」


「香辛料もいくつか見つけたので回収して栽培始めてます。

 果実類も同様です」


「食料は安定供給できないとな、生命線だからな」


 食堂車両は基本日替わりのおかずとメイン食材、副菜を自由に取れるようになっている。

 肉体労働派はとにかく腹持ちが良くて、肉が人気だ。

 頭脳労働派はバランスの良い食事を心がけている。

 自由なメニューとは行かないが、毎日安心して満腹を感じられる事自体が貴重なので、みんな最高ですよ! と絶賛している。

 夜は常識的な量ならつまみも酒も飲める。


「この点は、早いとこ何とかしないとなぁ……」


「なかなか対外的な取引がないと……」


 もう一つの問題点は、給料問題だ。

 今の所、寝る場所と食事、様々な施設を使えるだけで給与代わりになっているが、いずれは有料サービスを金で受けるようにして行かないといけないだろう。

 街などに行った時に無一文なのが現状だ。

 お金の動いていない共産社会になっている。


「まぁ資源さえ有れば何でも作れるからこその制度ですね」


「ほんとに凄いよな、まぁプラントはそれだけの価値があるからな」


「しかし、遺跡の装置と組み合わせるとこんなことになるとは思いもよりませんでした……」


「キカイ達もリプログラミング設備でも有れば使えるんだけどな、たぶんその機械王はその設備を保有してるぞ」


「キカイ達にそんな謎があったとは……それが使えれば人材不足が解決するのに……」


「残念ながら機械王を倒してもその設備は使えない気がする……」


「俺も詳しくないが、リプログラミング設備はセキュリティが最上級で、ハッキングするならこのレベルの施設が5箇所ぐらいは必要……だったとなんかで読んだ……はず……」


 なにかの小説だから不確かかも知れないけど、重要施設で大変なことぐらいは知っている。

 各企業の最重要懸案だもんなベースプログラミングの変更って……


「マーチ様、集落がありますが寄りますよね」


「ええ、それでは、普通の商人になりましょうかゲイツ様」


「ああ、普通に騒げるから喜んで」


『ロカ、ジルバ、アンツ商会の仕事だ司令室へ来てくれ』


 俺、マーチ、ロカ、ジルバ、ポポ、アンツ基本的に人と合う時はこのメンバーで向かっている。

 トレーラー群をステルスモードで待機させ、カンタとタンタに引かせた馬車で村へと近づいていく。


「何者だ!?」


「行商をしているものです。いくつかお役に立てるものもあると思います。

 食料から生活雑貨まで幅広く揃えておりますよ」


「おお、ありがたい……失礼した通ってください」


 村を守るピープ族の衛兵が馬車を通してくれる。

 村を囲うように設置された壁はなんとも頼りない、鉄パイプと木の板を組み合わせているような粗末な作り……

 村の中に入ると、トタン板で作られた家から人々が顔を出してこちらを覗いてくる。

 この湿地帯の家は、床部分が高くなっており、梯子や階段で居住エリアに上がる作りが多い。

 大雨が続くと水面が上がってくることもあるからそういった作りになっている。

 村の一画では稲が揺れている。この地域の人々の主食は魚と米だ。

 小型の魔物が食卓に上がることも多い。


「さぁさぁ、上質の塩漬け肉、干し肉、物々交換にも応じますよ、移動商会の自慢の道具も是非見ていってください」


 マーチが調子よく口上を述べる。

 物々交換がいいと聞いて人々が集まってくる。

 そしてその価格に驚く。


「この値段でいいのか? それに、こんなに高く引き取ってくれるのか?」


「魔物の肉は我らが長、勇者ゲイツ殿が無双の戦いで多く手に入っています」


「ははは、ども……」


 集まった人々の種はピープ族が多いが、多種族に渡る。

 数名のご婦人がわかりやすいアピールをしてロカやジルバの不況を買っていた。

 とにかく、俺達はまぁまぁ歓迎されて商売を始めるのであった。


今後は毎週火曜日夜20時にお会いしましょう!

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