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第二十五話 猛攻

「か、身体が軽いのだ!!」


 ロカがピョンピョンと飛び跳ねながらついてくる。


「あんまり気を高めて動くなよ、馴れていないと身体に負担をかけてクタクタになるぞ」


「わかったのだ。初めて知って夢中になりすぎないようにするのだ!」


 どーもロカの言葉選びに悪意を感じる。


「……ゲイツ様、このあたりでよろしいのでは?」


「ああ、そうだな。やり方は同じだ。向き合って座るぞ。

 ロカ、周囲の警戒は頼むぞ」


「わかったのだ!」


「もっとエッチなことしてもいいですよ?」


「いや、エッチなことなんてしねーよ!」


 ロカのときと同じ状態になる。

 ジルバはジルバでいい女なんだよなぁ……

 俺は邪念を頑張って捨てて同じように気を流していく。


「……どうだ?」


「……わずかに……? なにか、違和感……?」


 なんだよ、やっぱりロカがおかしいだけじゃないか!


「ジルバは鈍感なのか? ロカはすぐに感じたぞ?」


「ロカは黙ってろ、お前が凄いんだ」


「集中します先輩は静かにしてください」


 ジルバはちょっと怒っている?

 ロカに負けるのは悔しいんだろう。

 少しわかりやすいようにメリハリを付けて気を流していく。


「……トントンと、ああ、わかってきました……なるほど……なる、ほど……」


「まずは気をきちんと認識して、強弱を感じ取って、自分の気をはっきりと認識……ジルバ?」


「……大丈夫、です。もう少し、もう少しではっきりぃいい!!」


 ビクッとジルバの身体が跳ねた。

 俺は急いで気を抑える。


「大丈夫か!?」


「ら、大丈夫です……あとちょっとだったんですけど……急に、感覚が強くなって……」


「ああ、きっかけを掴み欠けてるんだな、ジルバも天才肌だな。

 あるとき突然理解するタイプもいるんだ」


「もう、大丈夫です。もう一度お願いします。次は途中でやめないでください!」


「いや、無理しなくても……」


「嫌です! お願いします!」


「無理って判断したら止めるからな」


 俺は再び気を操作する。


「あっ、さっきよりはっきりとゲイツ様のを感じる……

 私のもっ! ……もうちょっと、あとちょっとで、ゲイツ様、もう少し……強くっ!」


「……わざとじゃないよな?」


「何を言っているんですかっ! もう少しで、もう少しなんです!

 もっと、強くっ!」


 俺は考えることを辞めて、気の操作に集中する。

 ジルバの顔が上気して、息が荒くなり、肌もうっすらと朱が指して、握る手が熱くなり強く握ってきても、ただただ気の動きに集中する。


「わ、わかって来ましたよ……ゲイツ様の脈打っている……

 私の中で激しく……私も、私ももっと……」


 俺は冷静にジルバの気を観察する。

 確かに掴んでいる。凄いな。二人共天才だ。

 数ヶ月はかかると思っていたのだが……

 この世界の人間が凄いのか?


「ゲイツ様、私も動かせます!」


「ああ、ちゃんと出来てるぞ」


 俺は手を離す。


「自分自身で気を感じて、そして少しだけ操作する。

 さっきも言ったが、馴れてないうちから絶対に無理するなよ。

 反動で動けなくなるぞ」


「魔力とは違う流れなんですね」


「魔力と気は別物だ。混ぜて使おうとしたやつもいたが、だめだったな」


 魔力による身体強化と、気による身体強化は同時にはかからない。

 効果は気のほうが高くなるが、消耗も大きい。

 

「しかし、二人共凄いな。

 正直こんなに早くこの段階を終えるとは思わなかった……」


「ロカは天才なのだ」


「先輩には負けられませんから……」


 二人共ほんとうに嬉しそうだ。

 俺も、まともな方法で会得していたら、そんな感じになっていただろう……


「これからは、気の操作を磨き続けることと、どのくらい操作するとどれくらい消耗するのかを、知っていく。さじ加減を間違えれば、戦闘途中で力尽きるなんてことも起きる。

 絶対に無理せずに、確実な範囲で操作をすること」


「わかったのだ」


「わかりました」


「認識しながら動くだけでもはじめは結構疲れるもんだ」


「上げられるってことは下げられるのか?」


「ああ、それ言い忘れてた。馴れないうちはやるなよ!」


 ばたーん。


 ロカがぶっ倒れた。

 俺が話す前に試しやがったな!


「馬鹿野郎!」


 すぐに駆け寄って確かめる。


「やばい!」


 ロカは天才だ。

 気を完璧に消失させていた。

 時間がない、俺はロカの口を無理やり開け、口を重ね、ぶつけるように気を含んだ空気を送り込む。

 びくんっとロカの身体が跳ねる。

 無理やり目を開けてその目に気が回ることを確認する。

 直ぐに瞳に光が戻る。


「……な、何が……起きたのだ……」


「すまん……俺のミスだ……悪かった……」


「先輩に……何が……!?」


「気は命みたいなものだって言ったろ、極限まで絞ると、死ねるんだよ。

 もちろんきちんと操作に慣れていれば、これを利用して仮死状態を装ったり、気配を消すのに使えたりするが、蛇口の開け締めも上手く出来ない状態で行って、完全に閉じるとこうなる。

 すまん、はじめに話さなければいけない内容だった……」


「ゲイツが謝ることじゃないのだ、ロカが馬鹿だったのだ」


「先輩……」


「ロカ、立てるか? 直ぐに処置したからまず大丈夫だと思うが……」


「処置……あっ……」


「……そうでした……ゲイツ様、そんな危険なことを伝えなかったのを悪いと思うなら、ちょっと目をつぶってください」


「いや、ほんとに悪いとっ!」


 目をつぶったら、ジルバに唇を奪われた。


「先輩には負けませんからっ」


「な、な、な、な、な、何を言っているのだジルバは!

 い、命の現場で仕方がなくだな!」


「はぁ……恐ろしい弟子たちを持っちまったな……」


「責任は取ってくださいね」


「じ、ジルバも調子に乗り過ぎだぞ、いいのだぞゲイツ、ジルバは放っておくのだ……

 わ、私は、その、げ、ゲイツについていくと決めておるのだし……その……」


「はぁ、全く。色々ありすぎて疲れた。

 腹も減ったし、戻るぞ弟子共」


「わかったのだ!」


「今はそういうことにしておきます!」


 この日から、二人の弟子は、手強い相手になっていくことになる。

 俺、攻められると、よえーんだな……





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