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第二十二話 移動要塞商会

「ガルラ国警備隊隊長ベジランである!

 この領地は我らガルラ国のものであり、汝らは不当な占拠を行っている!

 代表者は速やかに出頭し、この地を明け渡すべし。

 なお、人員の安全は保証するが、物資は全てガルラ国が撤収する!」


「無茶苦茶言ってるなぁ」


「まぁ、今までアクワンのせいで手を付けられなかった森が手に入るのは、ガルラ王からすれば垂涎ものでしょう」


「せっかくここまで発展したから水場も整備したし、しばらくは森として生きていけるだろうけど……

 いずれは砂漠に戻るだろうな……」


「仕方ありません。プラントはゲイツ様が管理していただきますから、我らと共に移動します」


「同じガルラの民として恥ずかしいのだ……」


「それにしても、数だけはそれなりに揃えてるな」


「予定通りダミーの門の前に布陣してますね」


「では、予定通り、逃げるとしよう」


 カンタ、タンタが引く馬車が走り出し、その後ろにトレーラー群が付いて行く。

 わざとらしく拵えた門とは反対方向に作った隠し扉から砂漠へと走り出す。

 トレーラーは居住用モジュール4台、研究モジュール1台、工業モジュール1台、農畜産モジュール2台、多目的モジュール4台。計12台が2台づつ6列に並んでいる。

 研究車に積まれたプラントの膨大な蓄電性能を利用して電力を中心にして稼働している。

 プラントを生産ではなく蓄電や演算中心で運用しているのは俺ぐらいだろう。


「まずは北西のフッコの地を目指す」


 暗黒大陸を抜けて王国に入るルートはいくらなんでも危険度が高いということで、大陸を反時計回りにぐるっと迂回して最終目的地となってしまったベレスタン山に入る。

 まともな登山道は大陸の南東からしか入らない。

 まさか徒歩で向かうわけにも行かないために、わざわざ大陸を一周するルートを取ることになってしまった。

 

「今頃ガルラの兵たちは無人の森に叫び続けているんだろうね」


「そのうち皆殺しを前提に攻め込んで……怒り狂うでしょうね」


「ガルラ国とは敵対関係になっちゃいましたが、まぁもう砂漠に用は無いでしょう」


「商会は大丈夫なのか?」


「ええ、主要なメンバーは乗せた上で売却しました」


「さすがに手回しが早い」


「これからの発展に期待していますよ」


「……本音は、聞かないでもわかるか……」


 うまくいくはずがない。

 あの不毛な地であれだけ巨大な商会網を作れたのはマーチの手腕と、マーチが認めた実力者たちがいてこそだ。それをごっそり引き抜いておいて……きっといい値段で売り抜けたんだろう……


「怖い怖い」


「おっと、砂漠を抜けた先に厄介な集団がいますよ」


「ん? なんだあの首が長いやつは?」


「キラーングの群れではないか」


「あの数は……厄介だな」


 四本脚で首が長く、太い角が顔を隠すように生えているトカゲみたいな生物。

 大きさは5mほどか、かなり大きい、そして、その巨体でドスドスと走っている速度はかなり早い。


「追われているものがいますね、どうしますか? 

 迂回すれば無視できますよ」


 追われているのは小さな馬車、残念ながらキラーングの方が早い、追いつかれるのは時間の問題だ。


「ああ、卵泥棒か……自業自得ですね」


「危険だろうが、あの卵の魅力に勝てないんですよね……」


「旨いのか?」


「そりゃーもう。最高ですよゲイツ殿、ついでにあんな見た目ですが、キラーングの肉は旨いですよ」


 ポポの目が光っている。


「よっしゃ、やるぞ!」


「りょーかいしました! 総員戦闘配置!」


 トレーラーの上部には固定砲台が置かれている。


「準備完了です!」


「攻撃開始!!」


 俺の号令と同時に静かに銃弾がキラーングの群れに打ち込まれる。

 数体がバタバタと倒れ、他のキラーングがこちらに方向を変えて走ってくる。


「ロカ、ジルバ! 出るぞ! ポポ、あの馬車は確保しとけよ」


「アイアイサー!」


 走行しているトレーラーの上部から向かってくるキラーングに斬りかかる。

 首を振り回し迎撃してくる。

 なるほどあの角の生えた頭自体が強力な鈍器の様になっているのか……


「だが、相手が悪かったな!」


 鍛え抜かれた首を断たれる可能性を失念していたキラーングの首と胴体は永遠にお別れすることになる。


 そのまま着地して迫りくるキラーング達と対峙する。


「今夜の焼き肉パーティの主役になってくれよ……キラーングさんたちよぉ!」





「おーい、こっちは終わったぞー……まだかぁ?」


「ゲイツが早すぎるのじゃ!」


「も、もう少し!!」


「ポポぉ! 手ぇ出すなよー!」


「わかってまーす! 先輩方頑張ってくださーい!」


 今は最後に残った2頭とロカ、ジルバが戦っている。

 倒された肉達はすでに解体されて、食事の準備は整っている。

 例の卵を乗せた馬車も確保している。

 トレーラーを円陣に並べて連結すると、簡易的な砦に早変わりする。

 その内部で二人の戦いを酒のつまみに皆が楽しんでいる状態だ。


「な、なんなんだあんたらは?」


 保護した卵商人の二人、フォクシの民の二人がロカとジルバの戦いや俺らの装備に呆れている。


「ああ、卵商人だっけ? あの卵全部買うよ。お疲れさん」


「あ、それは毎度……って、あの二人死ぬぞ!?」


「いやー、あれにやられたら、後で死ぬほどしごきますよ」


「せ、先輩!! 早く倒しましょう!」


「わかったのだジルバ! ロカの本気を見るのだ!」


 程なくして、ようやく動けなくなったキラーングの急所に二人の攻撃が決まった。


「あーあ、もうズタボロじゃねぇか……お前らの飯はコイツラの肉な」


「はぁはぁ……普通……こいつらの、皮は簡単に斬れないのじゃ……」


「ぜぇぜぇ……致命傷受けるまで、暴れ続けるし……厄介極まりない……」


「ロカはもっと身体をしなやかに使え、どうにも決めるって時に固くなるんだよ……

 ジルバは逆、もっと真ん中に芯を持て。決める時に浮つく」


「……わかったのだ……」「はい……返す言葉もない」


「素直でよろしい。よし、じゃあそれを踏まえて動きを意識するために軽く相手してやるよ!」


「なっ……!!」「い、いや、その酒は良いのですかゲイツ殿……」


「んー? 酒のんで相手して良いのか?」


「いや! いやいやいや! 酒の前の軽い運動だな、あー楽しみだなー!」


「た、楽しみですねー先輩ー!!」


 マーチが卵商人と商談している。

 命を助けたとはいえ、あまり買い叩いてやるなよとは言っておいたけど、商人たちの顔を見るに、ほんの少し手心を加えた程度だな……命があれば、また稼げるさ……


「久々に奇跡の卵を使えるとは、気合が入ります!」


 ポポと料理人が燃えている。


「楽しみにしてるぞ、さて、ロカ、ジルバもう休憩は済んだよな?」


「ひっ……お手柔らかに……」「せ、先輩、頑張りましょう!」


 周囲の盛り上がりを受けながら、軽く二人の相手をする。

 軽く汗を流したら、お楽しみの肉と卵料理だ!

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