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第二十一話 遺跡荒らし

 カンタとタンタが二頭で馬車を引くことで速度は随分と上がる。

 二匹は物足りなそうにしている。

 重いものを引くのが好きらしい。

 こいつらとも随分と仲良くなった。可愛い奴らだ。


「そろそろキカイが出ますから気をつけてくださいね」


「あの黒雲の下が暗黒地帯か……」


「周囲にも船はたくさん落ちてますから、キカイもいますが……」


「ゲイツ殿、あの影からなにか来る」


「ああ、6つ脚ですね。基本的なキカイです。

 力はとんでもなく強いですが、遠距離攻撃がないので、魔法で一方的に倒せます。

 数によりますが」


「ロカの出番はないのか?」


「あ? 何言ってるんんだ、あれぐらい倒せなくてこれから戦えるか、ポポ、魔法は禁止だ。

 カンタとタンタを任せたぞ」


 こちらを見つけると6つ脚は、機械の体から6本の脚でガチャガチャと音を立てながら向かってくる。

 そして、こちらの間合いに入ると前腕二本を振り払ってくる。


「当たらないのだ!」


「遅い!」


 ロカもジルバも軽々とその腕を避けて身体に斬りつける。


 ガキンっ!


「いったいのだ!」


「こいつ、固い!」


「見ればわかるだろ、馬鹿か?」


「ば、馬鹿じゃないのだ! 馬鹿っていうやつが馬鹿なのじゃ!」


「ふ……関節を狙えば……って、どこも覆われてるじゃないか!」


「ど、どこも固い、刃がかけるのだ!」


「全く……」


 俺が前に出ると6つ脚の腕が迫る。

 観察すると、確かに肘部分に当たる場所はよく守られていて狙いにくい、ただ、その起始部には隙がある。

 

「よく見ろ、狙う場所はここだろ」


 腕の付け根の装甲板の隙間に刃を滑らせてねじる。

 バチバチと火花が起きて、黒煙が上がり腕がだらりと垂れ下がる。

 コツを教えれば二人はきちんと対応する。

 あっという間に6つ脚の手足を破壊してくれる。


「ゲイツ様天板を外してもらえますか?」


「ああ、よっと」


「な、なんで普通に斬ってるのだ!?」


「いや、俺は斬れるけどまだお前らは出来ないだろ?」


「先輩、頑張りましょう……」


「そうだな……」


 なるほど、内部には様々な装置が生きている。

 ポポはささっと回線を何本か切断すると6つ脚の機能が完全に停止する。


「これを早くやらないと、再起動されて大変なんですよ……お、状態のいいパーツがあるな……」


 これはポポに任せておこう。

 

「ちょっと武器の相性もあるかもな……打撃系武器のほうが相性が良さそうだなキカイ達は……」


「武器のせいにしたくはないのだ……」


「良い心がけだ、ただ、効率のいい戦いも大事だからな。

 魔法に頼ると数で圧されるかも知れないからな、出来れば二人が普通に勝てるのが一番いい」


 その後、対キカイ用武器はスパイクハンマーになった。

 重量でキカイの外装を破り、スパイクの先から強力な電撃を浴びせる。

 先端の重量を上手く利用して使う必要があるので、ロカもジルバも始めは苦労したが、すぐに体全体で扱うコツを掴んでいる。

 高確率で基盤が壊れてパーツが使えなくなるので、ポポのためにある程度は俺がキカイを狩ることになる。


「いやいや、マーチ様がゲイツ様についてくはずです!

 こんな大漁はめったにありませんよ!」


 結局何箇所か宇宙船を回って古代遺産を回収した。

 工具やら加工機械なども回収できたので、ポポはとても上機嫌だ。


「カンタとタンタも大物を引けて機嫌がいいのだ!」


 ロカが外から声をかけてくる。

 確かに後ろの荷物エリアは今回の成果でぎっちりだ。

 暗黒地帯の外縁部を適当に探索するだけで、あっという間に素材は集まる。

 さらには襲ってくるキカイたちも素材へと変わってもらった。


「随分と大きくなったなー」


 拠点の森の一角を切り取った作業場では現在大量の車が作られている。

 結論から言うと、巨大な移動拠点はいろいろと小回りが効かなすぎるので、トレーラーくらいの大きさの車を複数台用意して移動商隊を作ることにした。


「大丈夫、カンタとタンタはずっと俺たちを引いてもらうからな」


 電気で動く車に自分たちの仕事を取られるのかと思ったのか、カンタとタンタが身体を擦り寄せてくる。コイツラはああいう車よりもずっと応用力が有るし、いろんな場所に行くのに車は普通、街の中で貴族が使うものだから、目立ちすぎる。

 人が集まる場所へは今まで通りカンタとタンタに馬車を引いてもらって移動する。

 拠点運用も最小限の人員で行うつもりで、あまり大量の人を雇うつもりはない。

 機密漏洩にも気をはらなければいけない。

 そちらの指揮はマーチに任せている。

 マーチはすっかり俺についていくつもりで、商会は部下任せにしてきたらしい。


「ゲイツ殿が不在時にまとめ役が必要でしょう? 私以上の人員はいないと思いますよ」


 そう言われてしまうと、返す言葉がない。

 マーチほど有能な人材はそうはいない。

 結局財布もマーチに管理してもらうことになった……

 きちんと稼げば好き放題出来るお小遣いは貰えるが、組織運用となると……任せることにした。


「旦那! 例の鉱石が手に入りましたよ!」


「おお、見せてくれ」


 俺自身も少し武器や防具を見直したいので、新しい魔物の魔石や、魔力を多く含む鉱石なんかを集め始めた。

 物によってはすごい値段だが、今はキカイ狩りで収入は安定している。

 魔力の結晶である魔石、それに魔力の影響で変化した鉱石は魔装具の進化に欠かせない。

 我が愛用の魔装具に吸収させて……ようやく馴れた鎧と大剣になった。

 

「質の差はまだまだだな……」


 オリハルコンやらアダマンタイト、四獣の魔石など、苦労はしたが以前の武具はなかなかの逸品になった。

 おかげでこの世界に来る時にも一命をとりとめたほどだ。

 今回も、ゆっくりと鍛えていこう。


「やっぱり男は武具を愛するのだな」


「ロカも新しい装備は調子良さそうだな」


「私も随分と良いものを頂きました」


「衛兵たちも、それなりに装備が整ってきましたね」


「はぁ……結局軍勢みたいになっちまってるじゃねーか……」


「人だけじゃなく、魔獣からも皆を守らねばいけませんからね。

 しかし、このトレーラーという考え方は良いですな。

 即席の砦にもなりますし、動物に引かせても有りかも知れませんね」


「普通はこんな勢いで金属加工は出来ませんからね……我々以外には不可能でしょう」


「ゲイツ様の知識……想像以上ですね」


「それとマーチ様、ガルラ王の周りが少し騒がしくなっています……」


「……商会もここのところなりふり構わず素材を集めましたからね、少し早いですが、最終準備を行いましょう」


「なぁ、一応俺がトップなんだから報告はしてくれよー……」


 ポポとマーチの会話で大体は理解できたが……

 はぁ、もう少しのんびりしたいもんだが、どうやらそうも行かないみたいだ。


 



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