表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/82

第十七話 こてんぱん

 村は翌朝早朝に引き上げ街へと戻る。

 予定通り素材をマーチに卸してようやく落ち着ける銭を手に入れた。

 これは無駄遣いしないようにせねば……

 それとなく酒の情報はマーチの耳に入れておく、あの酒を扱える規模の商会はマーチのところぐらいだろう。例の水筒の酒が残り滓と知って、建築資材などを積んで慌ただしく出かけていった。


「さて、車が出来たら一度帰るんだけど、もう少し掛かりそうだな……

 よし、二人共、準備して闘技場へ行くぞ!」


「闘技場ですか?」


「何をするのだ?」


「飛び入り参加も歓迎らしいから、修行がてら金稼ぐぞ」


「うーん、難しいと思いますよ……」


「良いのだ! 行くぞ! ロカは優勝するぞ!」


 ジルバの発言が正しいことは直ぐに分かる。

 出場を断られてしまった。


「お二人の戦いを見て、挑む人なんていませんよ……

 魔物じゃ相手になりませんし……」


 闘技場なんて名前がついているが、中身は日銭のない荒くれ者がその日のメシ代を稼ぎに来る場所となっている。

 闘技場の王とかがいる感じではないらしい……


「残念だ……」


「なんならお三方の鍛錬なんかに使ってもいいですぜ、見るものはみたいでしょうし!」


「な、何を言っているのだ! 今は休みなのだ!」


「そ、そうですよ! 残念だなぁ! さ、さ、ゲイツ様、武器屋にでも行きましょう!」


「ああ、あそこなら広くていいな!

 いいのかすまんな、ありがたく使わせてもらう!

 さ、行くぞお前ら!」


「……ゆるさんのじゃ……」


「貴方、背中に気をつけるのよ……」


「ひっ……」


 受付の人を脅してる不届き者の首根っこを掴んで闘技場の控室へと向かう。


「とりあえず、二人のそれぞれの武器を軽く見てやる。

 俺の使い方を見て学ぶように」


「……見えないから学べないのですが……」


「大丈夫だ、そのうち慣れる。そうじゃなきゃ一方的に殴られるだけだぞ?」


「慣れる前に身体が壊れるのじゃ……」


「まぁ、叩かれることも修行だ! 頑丈になっていくぞ!」


「仕方がありません、先輩! ここは協力して出来る限り殴られないように戦いましょう!」


「ああ、ジルバ共に闘おう!」


「いいぞいいぞ、二人は協力して戦えるよにならないとな」


 薙刀、槍、短剣、細剣、一通りの武器を抱えて闘技場に出る。

 まだ客はまばらだが、ようやく出てきた俺たちに適当に声をかけてくれる。


「おお、旦那! 今日も良いもの見せてくれよー!」


「ジルバちゃーん、成長してさらに可愛くなったよー!」


「ロカちゃーん! 俺はガルラでも君みたいな子が好きだよー!」


「なにやらすっかり有名になってるな……」


「それはこの間盛り上がりましたし、酒屋の一件もありますからね……」


「ガルラでも、とはなんだでもとは! 失礼なのだ!」


「まあいい女だって言われてるんだから良いじゃないか」


「うん? そうなのか? バカにされてるんじゃないのか?」


「まぁガルラにとって綺麗とか女性的に言われるのは良いことではないかも知れませんけど、別に馬鹿にはされていないと思いますよ」


「そうか、ま、まぁ、戦いでも魅せればいいのだ!」


 私はしょっちゅう綺麗って言われていますけど、というニュアンスもあったけど、ロカはそういうところは気にしない。女同士の争いには顔を突っ込むのは馬鹿のすることだ。


「さ、とっととかかってこい。まずはこれからだ」


 薙刀を手に取る。

 真剣の薙刀は、一言に言って凶悪だ。

 斬る、突く、払ういつどこを狙われるかわからず構えも変わり非常に相手をしづらい。

 頭から手先、足元までどこでも攻撃が飛んでくる。

 長距離から一気に間合いを詰めることも出来るし、深い懐で敵の攻撃の外から一方的に攻め続けることが可能だ。

 力よりも技と速度を利用した立ち回りは隙がない。

 

「ほれ、いつまでもそこにいても始まらないぞ、二人共かかってこい」


 ロカは下段に薙刀を構え、ジルバは槍を中段に構えて距離をとっている。

 俺の挑発にも軽く引っ掛けてくるだけで本格的には攻めて来ない……


「……浅知恵だな」


 直ぐに目的を看破する。こいつら時間稼ぎをしている。

 下段に構えて軽く引っ掛けてやり、戻す刃を上段に構える。

 俺の前に突然空間が空いたように間合いが変化し、少しの迷いが二人に生まれる。

 すり足と呼ばれる歩法で動く気配もなく一気に間合いを詰める。

 相手からすれば、突然俺が滑ったように見えるだろう。

 慌てて攻撃をしてくるが、遅い。

 

 ゴ、ゴン。


「ぬぐわあああぁぁぁ痛いのじゃ!」


「だ、だから言ったじゃないですか! 怒らせるだけだって!」


「ほれ立て」


 ベチーン。


「立つ、立つのじゃ! だから太ももは辞めるのじゃ!」


「な、なんで私まで……」


「作戦に乗ったら同罪だ、ちゃんと攻めてくるのか?」


 俺は話しながらも容赦なく薙刀を左右上下に振り分けて二人を打ちのめす。


「いだい、いだいのじゃ! ええい! 守るなんて性に合わんのじゃ!!

 せ、せめて一太刀!」


「ほれ、考えて打て、こんな感じで絡め取られるぞ」


 ぽーんとロカの薙刀が宙を舞う。

 無防備な腹に柄を打ち込む。


「武器を離すな、早く拾ってこい。最速でだ」


「ウェ……わ、わかったのじゃ……」


 ジルバの槍は中々の物だ。

 基本の突き、払いは様になっている。


「ほれほれ、どんどん早くなるぞー」


「くっ、いだっ、ちょ、早っ、いだ、いだい痛い!

 先輩早く! 痛い痛い!」


 ベチーンべチーンと肉を叩く音が闘技場に響く。


「ジルバ、助太刀するのだ!」


 ひゅんひゅんと薙刀が風を切って迫ってくる。

 二人が息を合わせて落ち着いて攻撃してくれば、ここまで一方的に叩かれることは無くなってくる。


「段々目がなれてきたか? そろそろギア上げてくぞ」


「嫌じゃ!」


「嫌だじゃないぞっと」


 立ち止まって相手をしていたが、移動と出入りを使って相手をする。

 これによって攻撃の後を狙われたり、攻撃の入を潰したりと戦術が広がる。

 一時期落ち着いていたベチーンベチーン、ゴンゴンという音が闘技場に増えていく。

 観客は痛そうな顔をしている者もいれば、なぜか興奮しているやつもいる。



 俺たちの鍛錬は段々と人気の見世物になっていった。

次の投稿は7時間後、AM7:00

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ