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第十四話 小さな村

 砂漠ムカデは見た目は気持ち悪いが快適な旅を与えてくれる。

 見た目ほど力が弱く、好物は野菜で体の割に小さな口でハムハムと野菜にかぶりつく姿は、ギャップが有り可愛いとも思えなくもない。

 砂上でもその多脚を生かして結構な速度で進むことができ、砂丘もスルスルと超えていく。

 途中何度か砂漠の魔物に襲われたが、調子を取り戻したジルバ、ロカだけでも充分に対応できた。

 今倒したのは砂這い、簡単に言えばゴキブリ。

 砂漠の掃除屋とも呼ばれる。

 固い背中の甲羅とカサカサと素早い動き、油断すると集団に飛びつかれて跡形もなく処分される。

 基本的には雑魚だが、数が多すぎると厄介になる。


「あのサイズの砂這いなら十分対応できるな」


「ゲイツみたいに首を落とせない……」


「魔物相手には少し長物使ったほうが良いだろうな」


「槍なら少し使える」


「そうか、今度買おう、槍も多少なら扱えるから教えてやれる」


「騙されちゃダメだぞジルバ、ゲイツの多少扱えるは達人を超えるし、指導は鬼を凌駕する……」


「先輩……苦労したんだな……」


「ああ、おかげで打ち身に効く薬の調合は名人級になった……」


「何こそこそ話してんだ? 剥ぎ取ったら進むぞー」


「「はーい」」


 幾度かの魔物との遭遇戦はあったが、俺が出るまでもなく二人が対応してくれた。

 ジルバは元々の能力が高い、単純な戦闘だけではなく魔法での撹乱、補助も出来るので、非常に戦闘の幅が広がった。どうにもマーチはそこらへんまで考えて俺にジルバを買わせた節が有るな……

 ついでにジルバはすでに奴隷から開放した。

 負けたまま裏切ったりはしない、と確信しているし、別に離れるなら好きに生きればいい。

 ロカはある程度俺が仕込んでいるからそこらの魔物なら問題なく相手ができる。

 身体のしなやかなバネを使った戦い方が、薙刀という得物と出会って開花した感じだ。

 細剣もかなりいい感じになってきているので、大型の魔物、対人共に成長している。

 ま、まだまだだから二人共鍛えねぇとな。俺の稽古相手になってくれることを楽しみにしている。


 暫く進むと、砂漠の中に濃い色の道がずーっと続いている場所に当たった。


「ここは雨季になると大河になる。そして、村などはこの道沿いに作られるのがほとんどだ。

 場合によっては地下から水が得られるからな」


「ロカの村は生命の大樹から水を得ている!」


「先輩、あんまりそれ外で言わないほうが良いっすよ、襲われますよ?」


「ロカの村は戦士が多い!」


「遠距離から打たれ続けたらいずれ倒れますよ……」


「ぬぐっ……わかったのだ、気をつけるのだ……」


 なんだかんだいいコンビになっている。


「……急ぐぞ、もう始まっている」


 目的の村から戦いの音がする。

 ムカデちゃんを急がせると、村の周囲はなんとも頼りがいのない柵で覆われており、門も細い鉄格子を組み合わせた粗末なもの、そこに砂跳ねがビョンビョンと体当たりをしている。

 門の前では村人が必死に戦っているが、周りの壁まで手が足りていないし、貧相な装備で自分たちを守るので手一杯といった感じだ。


「俺が引きつけるから、村人を村の中に避難させて手当とかしてやってくれ!

 こいつには傷一つつけるなよ?」


「わかったのだ」


「了解!」


 俺は虫たちの中に飛び降りる。


「【おら、かかってこい(ヘイトスピーチ)!!】 相手してやるよ」


 敵の嫌悪感を激しく刺激する気をぶつけて敵の注意を自分に向ける技、副作用は戦闘後も嫌われるので対人戦での多様は辞めたほうが良い。

 砂跳ねたちもビクリと一斉にこちらを向いて飛びかかってくる。

 とりあえず適当に相手をする。

 あまり強いダメージを与えるとまた村の方へ襲って行ってしまう可能性がある。

 二人がムカデに村人を回収して村に入ったことを確認して、先に塩袋を回収する。


「殺してからだとエグみが強くなるんだよな……」


 鮮度が命だ。

 全て回収した後は一刀のもとに首を落として倒していく。

 腹部分の肉は良い食料になるし、後肢はいい素材になる。

 そこに傷をつけずに倒す一番いい方法が首を落とすことだ。

 虫たちは生命力が強いから、身体とかにダメージを与えて死んだと思わせて、死んだふりでダメージを回復させて急に襲いかかってきたりするから、首をはねて確実に殺すか、魔石を抜いてしまうに限る。


「ゲイツ加勢するって……もう終わってるのか……」


「村人は無事だぞ、骨折した人は出てしまっていたが、死者や重症はなしだ!」


「おお、それなら良かった。

 さて、コレを運ぶか……」


 幸先の良いお金の元を村に運び込んで、直ぐに解体していく。

 砂漠の暑さは直ぐに食べ物を悪くする。


「村長的な人はいるかい? 依頼を受けてきたんだが……」


「おお、すまない。助かった……」


 なんともそれっぽいじーさんが現れた。あごひげ真っ白で肌の黒さとあまりにくっきり分かれていて笑いそうになってしまった。


「もしかしてコレが依頼の魔物かい? それなら楽でいいんだが」


「いや、こいつらはたまたま現れただけで、依頼したいのは近くに巣食っている砂這いですじゃ」


「砂這いかぁ……アイツら数が多い割に金にならなくてなぁ……」


「そうなんじゃよ……受けてもらえんかね?」


「いや、まぁいいや、うちの若いのの修行代わりに受けよう。

 巣は近いのか?」


「ああ、運が悪いことにその砂丘を越えた先で商隊が倒れて、そこに巣食ったみたいでな」


「なるほど……なら早いほうが良いなロカ、ジルバさっさと終わらせるぞ」


「わかったのだ!」


「了解した」


「すまんなぁ……」


「村長、そいつらの肉全部やるから、俺らが帰ったらうまい飯食わせてくれ」


「い、いいのか!?」


「魔石と脚、それに塩が貰えればそれでいい、肉は村で食ってくれ」


「ありがたい、わかった。わしらもうでを振るおう!」


「よっしゃ、それじゃあ出発だ。あとムカデの世話よろしくな」


「任せておいてくれ。頼んだぞ」


 生憎の砂這い退治になったが、まぁ巣食うほどなら甲羅の数で金になるだろ……

 俺たち3人は徒歩で砂這いの巣に向かうのであった。

 


 

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