途切れ途切れの記憶の中で。
『___僕は、君を本気で愛しいてる!』
・・・ふと、こんな言葉が僕の中で蘇るからだ!
『___この言葉を、僕は誰に言っていたのだろう?』
どんな場所で、どんな時に、なによりも誰に向かって、、、。
・・・途切れ途切れに蘇る僕の記憶。
▽
___僕は、5年前に事故に遭い生死を彷徨ったんだ!
僕を診てくれた医者から両親に、、、?
もう意識が戻る事がないとまで言われたらしい。
・・・そんな僕が、意識を取り戻したんだよ。
___僕が目を開けると?
誰一人、僕の知っている人はいなかったんだ!
・・・だけど?
何故か? そこに居る人達は、みんな僕の事をよく知っている!
『___ほ、本当に、目を覚ましたのね! 廉人!』
『___お兄ちゃん! 目を覚ましたの? 真苗、嬉しい!』
『・・・えぇ!? あなた達は、誰ですか?』
『___何を言ってるの? お母さんよ!』
『・・・お、お母さん?』
『___ひょっとして、覚えてないの?』
『・・・あぁ! 何も覚えてないんです!』
『___そ、そんな、』
『___お兄ちゃん!』
___僕が永い眠りから目を覚ますと?
僕の目の前には、、、見知らぬ人たちが傍に居たんだ!
彼らは、僕の事を“息子”だと言い、“お兄ちゃん”と言う。
でも? 僕はこの人達と会った事もないし! 知らないんだよ!
【___一体!? 僕の身に何が起きているんだ!?】
▼
___僕が目を覚ました、次の日。
また、見知らぬ女性が僕に会いに来たんだ。
『___廉人! 廉人が目を覚ましたと、廉人のお母さんから私に電話が
あって! 直ぐに、貴方に会いに来たのよ!』
『・・・・・・』
『___廉人のお母さんから聞いてるわ! 家族の事も覚えてないなら?
私の事なんか、全く覚えてないわよね! それでも、私は貴方が目を覚ま
してくれて嬉しいの! ずっと、目を覚まさないんじゃないかと思ってたから。』
『・・・えぇ!? 僕は、もう目を覚まさないはずだったのか?』
『___貴方を診てくれた医師は、そう言ったらしいわ!』
『___君は? それを聞いていないの?』
『・・・まだ、私達! “籍を入れてないのよ!” 婚約はしてたんだけどね!
私と貴方は、結婚する予定だったのよ! 結婚式の日取りも決まっていたしね!』
『・・・僕が事故に遭わなければ、結婚式も挙げれたという事か!』
『___でも、こうやって! 廉人が目を覚ましたんだから! これから
ゆっくり、時間をかけて今までの時間を取り戻せばいいわ!』
『___そんなの嫌だね! 僕は一度、“死んだんだよ!” これからは新しい
僕の人生を歩んで行くんだ!』
『・・・・・・廉人、』
『___もう、僕の事はほっておいてくれ!』
『・・・廉人の言う、新しい人生の中に、もう私はいないの?』
『___あぁ! いないよ!』
『・・・・・・』
___彼女は、僕の性格が今までの僕と違い過ぎてびっくりしていたようだ!
・・・僕の家族からも。
『___本当に、俺たちの息子なのか? あまりにも今までの廉人と違い過ぎる
だろう! まるで、“別人だよ!”』
『___あんなの! お兄ちゃんじゃない!』
『・・・ちょっと待って! 廉人は、記憶喪失なのよ! わたし達の事が分から
なくても仕方がないのよ! ゆっくり元に戻ればいいじゃない?』
*
___僕の母親は、僕の恋人だった彼女にもこんな風に言ったらしい。
『___ねえ、木葉ちゃん! 廉人は、事故の後遺症で記憶喪失になっている
のよ! 医師には、、、もう一生! 記憶が戻らないかもしれないと言われて!
・・・木葉ちゃんには幸せになってほしいの! 例え、相手が廉人じゃなくても
他の男性と幸せな結婚を、、、。』
『___お母さん! 私は廉人さんしか、愛せないんです! 例え、彼の記憶が
戻らなくても! 私には、廉人さんしか、、、。』
『・・・木葉ちゃん! 本当にごめんなさいね!』
『___いいんです、お母さん!』
『___廉人には、早く記憶が戻ってもらわないとね!』
『・・・そうですね。』
*
___僕を診てくれた医師には?
はっきりと僕に、こう言ったんだ!
『___事故のせいで、廉人君! 君の記憶が断片的に抜け落ちている!
そのせいで! 君の元の性格と今の君の性格は随分と変わってしまったらしい!
正直言うと? この先、君の記憶が元に戻る保証はないよ! それでも頑張って
リハビリをして、記憶を戻していこう!』
『___先生、記憶が元に戻らないなら、僕は別の誰も知らない街に行っても
いいよね! ココは、嫌いだ! 僕の知らない人達が毎日のように僕のお見舞い
に来るからね!』
『・・・廉人君、まあいいだろう! 健康面には何の問題もないしね! もう何時
でも退院していいよ!』
『___じゃあ、今から退院するよ!』
『___家族の人たちには? 何も言わないのかい?』
『___あぁ! 少しでも記憶が戻ってみんなの事が分かったら! 僕から連絡する
と先生の方から伝えてくれないかな?』
『___あぁ、分かった!』
『___じゃあ!』
『・・・・・・』
___僕は、こうして! 退院した。
僕の事を誰も知らない場所から再スタートしたかったからだ!
・・・たまにね?
思い出すんだ! 昔の記憶...。
・・・いつか? すべての僕の記憶が戻る時まで。
僕は今を頑張って生きようと思う。
___この知らない土地で。
最後までお読みいただきありがとうございます。