五話 到着
息抜き用の小説なのですが人気の無さに苦笑です。
「起きて、マリー」
んあ? くんくん。えへ~、ガーちゃニウムだ~! ガーちゃんニウムとは、ほんの少し違うんだよ? 完全に目が覚めるまでの極短時間のみガーちゃニウムに変化するの。いわば二度寝的な幸せの時間なの。
「学園都市に着いたから起きて。試験受けなくていいの?」
「はげっ! え、え? あれ、もう着いたの?」
いつの間に出発したの? 全然覚えてないよ。ん? くんくん。あれ? 私の手がガーちゃんの匂い……ははーん。もしやガーちゃん、私をよばったな? イヤーン、ガーちゃんのけだもの~!
「よばった? 呼ぶの古語か?」
ガーちゃんが、首をかしげてる。髪の毛がさらさらしてるね。
「夜這いの過去形だよ?」
「せい!」
ガーちゃんの肘が! わき腹に! ぐふっ!
こうして無事に? 私達は天使養成学校『アンク』がある学園都市に到着しました。まだ肋骨が痛いです。ここは『天使』の本部も置かれている大都市なのです。なんか長い名前の組織だけど省略しまーす。だってまずは試験だし。
人が沢山いるけどスラムも有るっていうなかなかすごい所なんだって。おお? 歓楽街? とかもあるんだ。ガーちゃんが遊び人にならないように気を付けないと!
うん、駅前にある観光案内を見てるのです。だってここホームが幾つもあって駅から出るだけでも大変だったんだから。あっ、それとね? なんと! 『天使』を目指してるとおぼしき人を何人も発見したのです!
みんな可愛い女の子でした。うへへ。これは楽しみですな~! 早く学校へ行くのです! しゅちにくりーん!
「ごつい人も沢山いたけどマリーの目には入ってないか……あっ、看板が出てる。試験場、学校への道順か……」
ポチ丸の箱を運んでると周りの視線が痛いの。取り合えずおんぶして運んでるけど……こうなると箱が邪魔だよ。ポチ丸、背中に吊るしたいなぁ。
「バスが出てるね。よし、歩くよ」
「なんで!? そこはバスでしょ!? 楽しようよガーちゃん」
なんか勝手に動く車で沢山乗れる。それがバス! へへん、私だって勉強したんだから。
「じゃあ走るか。付いてこれないと迷子になって試験どころじゃないかもね?」
はぅ! ガーちゃんが笑顔! ものすごくキラキラな笑顔を振り撒いてる!?
「あっ、人にぶつかんなよ? まぁぶつかったら逮捕からの拘禁、やっぱり試験は無理だね」
くっ、なんて素敵な笑顔なの!? 闇のガーちゃんは素敵すぎるよ!
「まぁ冗談だけどさ。だってマリーはすぐに乗り物酔いするからバスはちょっとね」
「うう~、馬車より揺れるのかなぁ?」
「途中で停めてもらうってのが出来ないみたいだし……」
「おおっと、お嬢ちゃんにお坊ちゃん、ここクレイドルは初めてだな?」
うひゃあ! 何この人、いきなり声かけてきて、なんか馴れ馴れしいけど……うさんくさいな~。見た目が。
「おっと、なぁに俺はこの時期に出没する道案内係みたいなもんだ」
身長は私と同じくらいだけどお腹がボールみたいに出っ張ってるおデブさんだ。白いシャツのボタンが肉圧ですごい引っ張られてるよ。今にも弾け飛びそう。それに……アフロヘアー? に黒の色眼鏡を掛けたちょび髭のおじさん。これは……変態だね! ポチ丸で成敗しなきゃ。
「まてまて! 確かに怪しい格好なのは自覚しているが怪しい奴ではないぞ!」
「怪しい奴は自分を怪しくないって言うって村で習ったもん。ポチ丸ケースアタックで粉砕?」
一撃で決めてやるー。振りかぶって~!
「待った! 暴力反対! お前さんたちは試験でアンクに行きたいんだろ? 案内するだけだから箱を下ろせって」
む~、こういうときは……問答無用?
「マリー、多分この人本当に案内の人だよ。見た目が怪しいけど」
「おう、これでも白のシャツに黒のズボンだから真っ当な格好なんだぞ? 礼服って奴なんだぞ? おっさんだって色々あるんだぞ?」
アフロと黒眼鏡はいいのかな? うぅ~。すりつぶしたい。
「お、おい、随分と物騒なお嬢ちゃんだな。いくらなんでもこんなに人がいる所で騙したりなんかしないって」
むむっ、確かにすごく見られてる。うわ~、人がいっぱい。
「マリー、多分この人……いや、まぁいいや。えーと案内をお願い出来ますか?」
なぬ!?
「おっ、坊っちゃん……勿論でさぁ、おっと、あっしはジャック、けちな男でござんす」
「ガーちゃん!? こんな変な人を信用するの? 村でも変な人には着いていかないようにって習ったでしょ!」
私がしっかりしないと! ガーちゃんの貞操は私が守る!
「ジャックさん、マリーは無視して行きましょう。バスですか? やっぱり」
「あ、ああ、一応バスがお薦めだぞ? 歩くとかなり遠いからな。今からだと間違いなく夜になっちまう。もう日が暮れ始めているからな」
あれ、本当だ。電車で寝てたから分かんなかった。そういえばお腹減ったな~。
「連れが馬車に酔うけどバスは初めてなので、その辺は?」
「バスも揺れるが馬車よりは全然揺れないぞ? 立ったままなら多分いけるんじゃないか?」
は? 立ったまま乗るの? お行儀悪くない?
「馬車とはまるで違うからなぁ。それと空腹で乗ると流石に誰でも酔うからな? そこの道を入ると屋台通りだ。腹ごなししてから出発ってのがお薦めだな」
ふ~ん。なんか普通? 見た目は怪しい人なのに。
「これから混む時間だから早めに行って適当に買ってバス停で待つ、って感じでどうてすかい? お嬢ちゃん」
むむむ~。
「お肉はありますか?」
「かっははは! 勿論あるともさ、あっ、でも食い過ぎても酔うからな?」
こうして初めての学園都市クレイドル観光は屋台ツアーになったのでした。もうなんかすごかった。村より広い場所が全部屋台で、肉とかスープとかサラダとか、も~何でもあったの!
ガーちゃんはすました顔をしてたけどあれは興奮してる顔だね。私も焼鳥と焼き豚と焼き牛でよだれが……じゅるり。とりあえず怪しいおっちゃんのジャックさんのおすすめ、肉の串焼きとパン、中に野菜が挟んであってソースがたっぷりなんだけど見た目は丸い形のサンドイッチで軽食です。
いただきまーす。
肉! 肉! にーくーー! あまりの美味しさにガーちゃんの分を強奪しました。脛を蹴られましたが後悔はしていない! パリパリの皮に甘辛ソースがもう止まらん! これはダメ。魔性のソースだよ!
「いやー、お嬢ちゃんはよく食うねぇ」
「軽食なのに……気持ちは分かるけどさ。おかわりは無しだからね」
ええー!? あと十本はいけるのに!
「いくなボケ。これからバスに乗るんだよ。学校に入れたら毎日来れるから……来れますよね?」
「おう、でも学食も普通に旨いぞ。まぁ休みの日の楽しみってとこだな。学生もここの常連って奴だ」
ふお~! 私、頑張る! 肉の為に!
「そっか、訓練とか色々あるよね」
「学園は入学こそ厳しいが一度入ると半強制的に一人前になるまで鍛えられるからみんな休みを楽しみにしてるんだよ」
へ~。さすが天使妖精学校だね。
「……入学、試験はそんなに難しいのですか?」
よそいきガーちゃんは礼儀正しいのだ! そんなガーちゃんも素敵だけどね。
「なんたって命がけの職だしなー、それに『天使』の名は重い。半端な鍛え方じゃすぐに死んじまう。それを見るための試験だから、毎年怪我人がすごくてな」
「怪我って骨折とか?」
「お嬢ちゃんの基準はなかなかきついな。でもそんなとこだ。まぁ、流石に学生コースは一般コースに比べると優しいけどな」
「学生コース?」
なにそれ? ガーちゃんも知らないみたい。
「……まさか、知らないのか?」
ジャックさんがお口にソースを付けて驚いてる。ちょび髭って大変そう。
「年齢で、というか実績というか、普通のハンターから天使になる方が一般コースだ」
「普通の人が天使になれるの?」
魔物を狩るだけなら確かに天使になる必要はないよね。
「いや、そんな簡単じゃないからな? 天使になると優遇されるからそこらのチンピラも試験に来るが……大抵はボコボコにされて二度と来ないな」
「優遇……ですか?」
「ああ、国からも援助がある。その分きっちり仕事があるけどな。基本的に断れないから毎回命がけって奴だな。一応実力に合った仕事が回ってくるが」
ほえ~。天使の仕事中ってそんなんなんだ~。とりあえず魔物に突撃~、じゃないんだね。
「学生コースは子供のうちから育てるから化け物揃いって話だ。少しの才能なんて消し飛ぶって……ああ、いや、そこまでのはそうそう居ないから怖がらなくても……」
「可愛い女の子がたくさんいるって聞いたのですがそれは本当ですか?」
「お嬢ちゃん、急にどうしたよ、いや、確かに沢山いるけどな? ありゃ見た目重視、天使のイメージで多く採用してるけど並みの男よりは遥かに強いぞ? 訓練は甘くねぇからな」
「おっぱいは?」
「……は?」
くっ、ガーちゃんめ! そこに食いつくなんて!
「おっぱいが大きい女の子は居るのですか?」
「……あー、うん、いろんなサイズが居ると思うぞ?」
「よしっ!」
良くなーい! ガーちゃん! そこに正座!
「……随分と変わったペアに当たっちまったな、こりゃ」
むっ! ガーちゃんに余計な事を教えたおじさんも正座です! 膝の上にポチ丸の刑なのです!
ぼちぼち書きますのでのんびりとお待ち下さい。あとタイトルを変えました。