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初恋パイルドライバー  作者: サーモン横山
3/5

三話 日常

 駅のイメージはヨーロッパの観光地にあるおしゃれ駅です。日本の駅ってダンジョンだし。


 お肉ってロマンだよね。あの肉汁と油のハーモニー。皮がパリッとしてて中がジューシーで……あぁ肉汁の海に沈みたい。


「浮かんでくるなよ? ずっと沈んどけ」


「ガーちゃんのイケズ! でもそこがいい!」


 今は肉汁パーリーが終わって馬車に向かってるところなの。これからミノさんの荷下ろしを手伝う事になってて石畳の道をトコトコ歩いています。人がいっぱいで村とは匂いが違うね! 女の子も多いし。


「すげぇな。このやり取りを毎日なのかよ。……これなら」


「毎日やったら離婚間違いなしだからね! 適度が一番だよ」


 そうだよ? 私だってガーちゃんに嫌われない様に抑えてるし。ほんとはもっとガーちゃんと一緒に居たいのに。遊びたいのに~。可愛い女の子探しに行きたいな~。口にするとガーちゃんが怒るからな~。


「なにぃ!? これでか!」


「これでもマシな方なんだよね。大変だったよ……調教するの」


「ガーちゃんのえっち! 調教じゃなくてお勉強だよ!」


 えへへ~、ガーちゃんがずっと側にいてムチを振って色々教えてくれたの。朝から晩まで色々お話したけど……中身は覚えてないや。


「なぁガー公……」


「いいんだよミノさん。どのみち学校に行ったら別々になるから。どう転んでもね……ククク」


 ダークガーちゃんだ! 今ふざけるとガチで怒るから大人しくしてないと。


「ガー公……お前まだ子供なのにこんなに闇を背負いやがって」


 格好いいよね~。闇のガーちゃん参上! とか。


「お嬢はたしか十五才……か」


「病気でもそれに効く薬は無いよ」


 フゥー! 冷めてるガーちゃんも可愛いなぁ! どうしていつまでもお姉ちゃんって呼んでくれないのかなぁ?


「おいガー公。流石に往来で武器は抜くんじゃねぇぞ? いや、気持ちは痛いくらい分かるが」


 衛兵さんとかってすごくめんどいってオババが言ってたよね。なんかしつこく追ってくるって。


「衛兵より一般人の心配しようか。それに……今問題を起こせば試験どころじゃなくなるね」


 へ? あれ? ガーちゃんが怒ってる? なんで?


「すげぇな。自覚なしかよ……流石はあの親父の娘ってとこか」


「ババアの子孫だからね」


「ガー公もそうじゃねぇか」


「……違います。僕は拾われた子供なのです。キャベツ畑で収穫された赤ちゃんなのです」


 ガーちゃんの目が闇に染まってる!


「ガーちゃん! そうだったの!?」


 知らなかった。ガーちゃんがキャベツだったなんて。だから可愛いのかな? マゴーズの中でも特に可愛いからなぁ、ガーちゃんって。


「いや、無理があるだろ。まぁその気持ちもよく分かる。あの人の子孫って……キツイよなぁ」


 あれ? なんで二人して空を見上げてるの? なんか飛んでる?


「ミノさん、行こうか」


「ああ」


 え、なに、どうしたの? 男同士で何を分かりあってるの? 


「私も混ぜてよ~」


「うっさい」


 ガーちゃんがご機嫌ななめ。でもいつもの事だもん。気にしてなんかいられないもん。


「ガーちゃんはお供なんだよ? 私を甘やかすのが仕事なんだよ?」


「違う。それは絶対に違うぞ」


 ミノさんは黙ってて! これは私とガーちゃんの……あががが!


「マリー。僕は言ったよね。旅の途中ではお供だ天使だ言わないようにって」


 ガーちゃん痛い! これマジで痛い!


「お仕置きガントレットによるアイアンクロー。アホで頑丈なマリー用だよ? もっと味わって欲しいな」


 痛い痛い! それにガーちゃん笑顔! すごい笑顔だよ! 見上げてるガーちゃんの笑顔でどんぶり二杯あがががが!


「うわぁ。お嬢が悶えてやがる」


「あだだだだ! ガーちゃんいたいー!」


 頭が動かないよ! ガーちゃん許して~!


「そうかそうか。効果は抜群だね」


 ガーちゃん笑顔~! 天使の笑顔が! がはっ!


「ちっ、しぶとい野郎だ」


 ハードボイルドガーちゃんだね! いだだだ! どんどん痛くなってる~!


「おい、やり過ぎじゃねぇのか?」


 そうだよガーちゃん。女の子には優しぐがががが!


「めり込む~!」


 こめかみと頭に激痛が~! 尖った物が刺さってく~!


「くそっ。まだ改良しないと駄目なのか」


「いや、十分だろこれ」




 このあとガーちゃんは解放してくれたけど、遠巻きに見てた衛兵さんが来て囲まれました。でもガーちゃんがなんか紙を見せたら蜘蛛の子を散らすように去っていったの。ガーちゃんすご~い。


 そういえば蜘蛛の赤ちゃんのあのワラワラ感ってすごいよね。初めて庭で見たときは思わず剣で叩き潰しちゃったよ。ポチ丸の掃除……大変だった……ような、そうでもなかったような?


 そんな訳で今は馬車に積んであった荷物を運んでます。ただで乗せてもらったから当然なのです! えっへん。私って立派だね!


 ガションガション!


「うひぃ! やってます! やってますから~!」


 私を監視するガーちゃんがゴツーイ手袋をにぎにぎしてるの。私の背後で。それにしてもあれは痛かったな~。今までのガーちゃんグッズのなかでも最高峰だよ。でもそこまでして私をいじめるガーちゃんっていじらしくて可愛いなぁ。必死に私を愛してる? きゃー! ガーちゃんイケズ~!


 ガシャガシャガシャガシャガシャ!


「やべっ! 運んでます! もりもり運んでますから!」


 ガーちゃんのダークなオーラを後ろからベシベシ感じるよ!? これは危険! 早く終わらせないとガーちゃん本気で怒る~。


「お嬢……」


 あっミノさん。どうしたの? 届け先の人と話してたのに。置く場所変えるのかな?


「ミノさ~ん、これは何処に置くの~?」


 私が抱えてるのは樽だから……お酒屋さんかな?


「……ああ、いや、この倉庫にでいいんだ。樽が置いてあるからその隣に置いてくれ」


「あいあいさ~」


 よいせ、よいせ。樽って独特な匂いがするよね。ガーちゃんが手袋貸してくれたからささくれが刺さる心配もないし。あっ普通の手袋ね? ガーちゃん特製のゴツーイ手袋じゃないリボンがついた可愛い奴。ふへへ~。ガーちゃんの手作りなんだよ~。


「よいせ~。あっここだね、どっせいっと」


 樽って脆いから優しく下ろさないと駄目なんだよ? 横の衝撃にはそこそこ強いけど縦方向には激弱なの。お父さん、あの時は泣いてたなぁ。




「なぁガー公。俺でも樽は転がして運ぶぞ?」


「僕だってそうだよ。ミノさん……考えたら敗けだよ?」


 ガショガショ。


「ガーちゃん? なんか元気ない? 膝枕する? 私が寝る方で」


 ガーちゃんっていい匂いがするんだよね。美少年の匂いってお母さんは興奮してたけど。たとえお母さんでもガーちゃんは渡さないよ?


「やらないよ! なんで僕がする方なんだよ! それに変態的な事を人前で言うな! アホマリ!」


 ガーちゃん照れてる~。顔が赤~い。でもさ~?


「お父さんは錠剤洗浄って言ってたよ?」


「違うよ! それを言うなら常在戦場だよ! 錠剤洗浄ってなんなんだよ!」


 ほえ~。ガーちゃん地団駄踏んでる~。女の子の服とかスカートとか似合いそうだなぁ。あっ鼻血出そう。似合うパンツを想像したら……。


 ガショガショガショガショ!


「ふーふー!」


「落ち着けガー公! 荷物はあと少しだ。終わってから好きなだけしばいてくれ」


 あー、あと箱が二つぐらいだっけ? 


「箱~箱~ふんふんふ~」


 終わったらガーちゃんを愛でるんだ~。抱き締めてガーちゃんニウムの補充なのだー! なんか最近は安心よりもドキドキするんだよね。ガーちゃんニウムが変異したのかな? よく眠れるようになるんだけど。




「……なんつーか掴み所がないな。……箱を重ねて運ぶのかよ。お嬢はミノタウルスの中でも普通に生きていけそうだな」


「もらってくれるの?」


「やめろその期待に満ちた目は。まぁ何処にも行き場が無ければ引き取るが……多分ガー公から離れんぞ?」


「もらってよ。そして適当な牛と結婚させて放牧……いや、危険すぎる……どこか無人島にでも放り込むか」


「押し付けんなよ? 見た目は美人……なんだがなぁ」


「乳が無いなら話にならないよ」


「お前も残念な美形だな」


「これからだよ! これからミノさんみたいな男になるんだよ! ムキムキのゴツゴツになるんだ!」


「……頑張れよ」


「むきー! なにその憐れみの瞳! 見てろよ、あと……五年? くらいしたら見違える程のムキムキマッスルになってるんだからな!」


「ああ、待ってるぜ」


「なにその気のない返事! 尻尾の毛をむしってやる!」


「ちょっ! やめろ!」


 ガションガション! ガショガション!




 はぁ~。いいなぁ。ガーちゃん遊んでる。でも村だといつも浮いてるから楽しそうで良かった。いつも怒ってるからみんな怖がってるんだよね。同年代の男の子達はガーちゃんと()()からなぁ。


 ガーちゃんを幸せに出来るのは私だけだよ。だから……スカート履いてくれないかなぁ。似合うはずなんだよね。ガーちゃんの髪はシルバーだからどんな色でも映えそうだし。黙っていれば女の子だもんねガーちゃん。


 髪も伸ばせばいいのに。丸刈りは村のみんなで止めたから妥協案でボブまでなんだよね。私みたいにポニーテールにならないかなぁ? リノばあばに頼んだら毛生え薬とか作ってくれるかな。


 同じヘアースタイルにしたら姉妹に見えるかな? ぐふっ、燃えるわ~! なんとしても挑戦しないと! もちろんパンツもお揃いだよ! ガーちゃんは……白と青のしましまパンツかなぁ? 私のパンツだとおっきいから……


「くっ、アホを放置しすぎたか。妄想が垂れ流しになってる」


「ガー公……お前ホントに大変だな」


「あっ、荷物運び終わったよ~」


 これで馬車には私達の荷物だけだね。ミノさんは……尻尾はふさふさだね。ガーちゃんからなんとか守ったんだ。ガーちゃんって子供っぽい所があるからね。そこも可愛いんだけど。


 それにしても……荷物、結構少なかった? 村の経済活動ってひっぱくしてこんきゅうしてたりするのかなぁ。


「無理に難しい言葉を使わなくてもいいんだぞ? お嬢。それに村の主力は薬とか、かさ張らない物だから割と潤ってるぞ? 飯に困った事、一度もないだろ?」


「……あるよ? ガーちゃん考案の野菜オンリーのご飯とか」


 やっぱり肉汁を欲しがるんだよ! 若い体は!


「ミノさんが言ってるのは食べるものが全く無い状態を言ってるんだよ。うちの村はかなり裕福って教えたろ。他の場所に住む人は食べるものが手に入らない事もあるんだからな? これからは発言に気を付けろよ? 何気ない言葉で傷付く人だっているんだから」


「ガーちゃん……私より友達居ないのにそういうの詳しいよね。なんで?」


 いつも一人でいるガーちゃんはどこでそういうの知ったんだろう?


「常識ってやつだからね? 村で教えてくれたの……覚えてるわけ無いよな……」


 ため息は幸せが逃げていくんだよガーちゃん! 


「なにはともあれ、これで馬車には二人の荷物だけだ。駅まで送るか。まだ少し時間はあるが多分混むから早めに行って荷物を運ばんとな」


「混むの?」


 天使学校に行く人が乗ってるのかな? 三人でテコテコ歩いて駅まで歩いてるけど……それっぽい人はまだ見てないな~。あっ、ミノさんは馬車を二足歩行でリヤカーみたいに引っ張ってるの。でも背中の筋肉がなんか……キモい。ガーちゃんの背中と大違いなの。


 ミノさんが道路を歩いて私達は歩道をゆったり歩いてるんだけど結構細かいんだよね、馬車のルールって。歩道側を走る馬車には速度制限があるんだよ? 急ぐ馬車は歩道から遠くを走るんだって。ミノさんも一応馬と同じ扱いみたい。


「魔物を防ぐ結界は限りがあるからね。馬車はどうしても必要になるからルールがあるのは当然だよ」


「電車の通る所だけでかつかつ、なんだっけ?」


 お勉強したからね、これくらい楽勝だよ。


「村の幼児ですら知ってる常識だからな? まぁ合ってるからいいけど。こういう大きな街から村とかに通じる道は基本的に魔物が出るから……」


「馬車で轢き殺すんだね!」


 お馬さんは強いからね。


「……くそっ、否定できないのがこんなにも悔しいなんて……」


「いや、普通に逃げたりするからな? 来るときは面倒だから弾き飛ばしたが」


 ミノさんに立ち向かう魔物さん達は命知らずだと思うよ。弱っちいのに闘志満々なんだよね村の近くに出る魔物って。


「……俺が運び屋なのはその弱っちい魔物対策なんだがなぁ。普通の馬だとそもそもあの道に入ろうとしないし」


「村の子供はあれが当然だから……でも狩りに行く子供はまず居ないけどね。そこのアンポンタン以外は」


 だって魔物さんは剣を当てると死んじゃうんだよ? よわよわなんだよ? 訓練にもなんないんだよ? お父さんを襲う方がまだ手応えがあるんだよ?


「……そうか。実技でごり押しする気なんだな? 筆記は捨てて」


「……さすがに落とされると思いたい」




 あっ、駅が見えてきた! うわー。人がすごーい! ポチ丸で薙ぎ払いたくなっちゃうね。あのワラワラは。


「やめろよ? っ! いや、多すぎない!? なんであんなに人が溢れてるの!?」


 駅前の商店が見えないくらい人が駅に殺到してるの。鍋一杯の豆みたい。ぎゅうぎゅうに詰めてる感じ。まだ駅までそこそこあるのに道路も人で埋まってきたし。


「……んん? おお! そうだそうだ、なんでも有名な『天使』の子供が試験に行くとかで親も同伴って噂が流れていたな。……ガセじゃなかったのか」


 ほえ~。有名な『天使』か~。みんなその人を見に集まったのかな? 誰だろう?


「ん? お嬢なら突撃するかと思ったが……随分と落ち着いてるな」


「マリーが憧れる天使はもう引退してるからね。マリーの楽しみは天使を目指す可愛い女の子、なんだよ? ……誰かこいつを逮捕してくんないかなぁー」


 現役の『天使』ってあんまり可愛く無いんだよ。プンプン! ゴツいおっさんとか、ケバいオバサンとか。やっぱり美少女でなきゃね! ぐふふ。美少女の汗だくの姿……たまら~ん!


「ミノさんちょっと衛兵呼んできて」


「……ああ、俺も呼びたくてたまらんよ」


 はぁはぁはぁ、ダメ。これ以上は鼻血が出ちゃう。……それにしてもすごい人だなぁ。まだ電車の来る時間でも無いのに。駅に入れないよねこれ。


「どうしよう。やっぱり薙ぎ払う?」


 鞘に入れたままなら大丈夫! きっと。


「大丈夫なわけあるか! これは……人が居なくなるまで待つ……なんて無理だよね。お目当ての物が駅にあるから」


「荷物を乗せる必要もあるから搬入用の入り口に行くしかないなこりゃ」


「え~! ポチ丸のデビューが……」


「一般人相手にデビューすんな! 荷物用の入り口って……どの辺?」


「ああ、駅の横にあるんだが……せっかく真正面から駅を見せてやろうと思ったのにこれじゃ落ち着かねぇな」


 たしか観光客が写真をとる人気スポットだっけ? 駅で撮影か~。……盗撮? パンチラ? 


「駅の横……ここから行ける? 道を逸れないと進めなくなりそうだね」


「大通りにまで人が溢れてきたか。次の交差点で曲がれば行けるだろう。物流を止めるほど、ここの衛兵達は馬鹿じゃねぇからな」


 ローアングルサイトアップ……あの人混みならバレないよね。女の子も、うようよいるし。これはチャンス!


「ミノさん。その変態を馬車に投げ入れてくれる?」


「あいよ」


 うひゃあ! なにするのー! 私の……うっ、この揺れ……。


「さて駅まで行くか」


「そだね。あっ、運転は乱暴でお願い。黙らせるから」


「あいよ」


 ぎゃー! ミノさんがわざと揺らしてる~。ガーちゃんはやっぱり意地悪だ~!


 でもそんなガーちゃんも好き! たまらんね!


「もっと揺すろうよミノさん」


「ガー公……いや、たしかにお嬢はアレだけどよ」


 ぐふふ。うえっ。ガーちゃんったら照れ屋ざーん。げぶ!



 今んとこ一人称視点ですが、そろそろ地の文を入れたいっす。なんかぺらぺら?

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