二話 街
大体このくらいの文章量でこれからいくと思います。最初は多めになっちゃうのさ。
ヒロインの座は渡さない! たとえケロケロしたとしても私は決して諦めない!
「はいはい、大人しく馬車で待っててよ。電車は大分待つしミノさんの薬の用意もあるから」
私たちの乗った馬車……ミノさんが引っ張ったからミノ車? まぁいいや、なんと街に着いたのでした。はぁ、本当に大変だったよ。あの後も三回ケロケロタイムがあって見かねたガーちゃんが酔い止めをくれたんだけど……ガーちゃんの意地悪。苦くて涙がでたよ。でもでも男の子って好きな女の子に意地悪するのが趣味って聞いたし……でへへ~。
「お嬢は平気そうだな」
「はれ? ミノさんもガーちゃんと一緒に行ったんじゃなかったの?」
ミノさんが牛になったまま馬車に寄りかかってた。今さらだけど私の乗ってる馬車は人を乗せるタイプじゃなくて荷物を乗せるタイプね。荷物の運搬のついでに私たちも街に運んでもらったんだよ。
「お嬢を残して行けるかよ。それにガー公は何度か街に来てるみたいだしな。道案内の必要も無いからまぁ留守番だ」
荷物の受け渡しとか良いのかな?
「まだ余裕があるから気にすんな。それより本当にそのブツを持ってくのか?」
ブツ? あっ、もしかして私の武器の事? お父さんからぶんどった愛用のポチ丸を見てるし。
「ポチ丸は私の武器だもん。お父さんの形見だし」
「……まだ生きてるよな。普通は餞別って言うんだぞ」
ほお~。せんべつか~。
「それがでかすぎて普通の馬車は使えなかったんだがな」
「ポチ丸ってガーちゃんサイズだもんね。ガーちゃんってちっちゃくて可愛いよね!」
村のなかでもちっちゃくてみんなのアイドル? でもガーちゃんは私のだもんね。
「ガー公はまだ成長期前だからな。これから一気にでかくなるぞ」
え? ガーちゃんがミノさんみたいになるの?
「いや、流石に俺みたいなサイズにはならんだろう。だが……」
よかった~。ガーちゃんが筋肉お化けにならなくて。ガーちゃんは今のままが一番だからね。
「……はぁ。お嬢はあれだな……もう少し常識を知った方がいいな」
むぅ~。なんでお母さんとおんなじことを言うのかなぁ。私だって勉強してるんですからね!
ミノさんと色んな話をして私の馬車酔い……ミノ車酔い? が良くなった所でガーちゃんがやっと帰ってきたの。でもガーちゃん……なんで女の子を連れてきてるの? 誘拐は犯罪なんだよ? 思わず馬車から飛び降りちゃうよ。
「誘拐じゃねぇよ! ミノさんの薬を買ってる時に会ったんだけど欲しい薬が無くて困ってるんだって。だからミノさんの薬のついでに作ろうかと思ってね」
「申し訳ありません。材料は有るのですが調合できる人が今は居なくて困ってたんです」
ぬぬっ! 清楚な黒髪に巫女服だと!?
「ひゃあ!」
くんくん。こ、これは! 美少女の匂い! 髪から漂う素敵なかほり!
「やめんか変態」
次の瞬間、ガーちゃんのお仕置き棒が私の脳天に落とされていた。
「がっ!」
いったーい! 鉄製の金棒は流石に痛いよー。トゲトゲしてるし。
「えええ!?」
ああー、巫女ちゃんがビックリしてる。その顔もグッド!
「気にしないで、この変態は頑丈だから。あと女の子が好きな変態だから気を付けてね」
ぶーぶー! 女の子が好きなんじゃないの! 可愛いものが好きなの!
「ひどいよガーちゃん! 私は変態じゃないよ!」
「はいはい、じゃあ用意するから……馬車で待つ?」
無視された! ガーちゃんの意地悪ー! スケベー! 乳好きー!
「……あの」
「その変態は無視していいから、あっ、材料もらえる?」
「はい、あの……この方は?」
「あー、運び屋のグリゲフだ。見た目の通りミノタウルスだな」
……え?
「ええ!? ミノさん、名前ミノさんじゃなかったの!?」
だって小さい頃からみんなミノさんって!
「んなわけあるか。なんか定着しちまったからそのままにしておいただけだ」
「はわー、はっ! し、失礼しました。その、初めてお目にかかったものですから」
「はっはっは。懐かしい反応だな。まぁ切りかかる訳でもないなら構わんさ」
切りかかる?
「ミノさんって美味しいの?」
「んなわけあるか! そんな純粋な目で見んな!」
ミノさんがギョッとしてるけど……牛だしね。
「ミノタウルスは食用ではありませんよ? 一度戦になれば無類の強さを誇る一族で、どこかに一族で移住した為に今は滅多に会うことはない、そう聞き及んでおりましたから」
そっかー、食べられないんだ。ずっと疑問だったんだよね。
「おお、よく知ってるな。戦に嫌気が差してな、みんなで田舎に引っ込んだんだよ。まぁ何人かは外で暴れてるがな」
へー。みんな優しいから戦いとは無縁だと思ってたよ。
「普段は温厚、というのは本当なのですね! はぁーまさか本物に出会えるなんて。では変身も本当なのですか!」
巫女ちゃんが興奮してる! 白いほっぺが赤く染まって……くはっ! 色っぽーい!
「あー、人化なら出来るがここでは無理だぞ? 服が無いからな。あとお嬢、鼻血出てる」
「ふえ? ふん!」
鼻血なんて久しぶりだなぁ。この前ガーちゃんの膝を顔面に食らってからだから……二週間ぶり?
「はわわわ! 大変です! すぐに冷やさないと」
「あっ、大丈夫だよ? 出しきったから」
「その男らしい対処法はどうなんだ。取り合えず拭け」
えーとハンカチはここだっけ。ふきふきっと。
「なんか盛り上がってる?」
「ガーちゃん! 今までどこにいたの?」
「いや、薬の調合だって。馬車に居たに決まってるだろ」
「あのねミノさんって美味しくないんだって!」
「……どんな会話してたのさ? まぁいいや、はい真白さん、お薬。分量は分かる?」
ガーちゃんが馬車の上から巫女ちゃんに怪しい紙の薬包を渡してる。なんだか裏取引みたいに見えるよね。
「はい、ありがとうございます。本当に助かりました」
「こっちも助かったからお互い様だよ。ミノさんの薬に少し材料を拝借したからね」
「おっ、そういうことか」
「そういうこと。ミノさんの薬はもう少し掛かるから待っててよ」
「あっ、ガーちゃん」
また馬車の中に引っ込んじゃった。もう! 照れ屋さんなんだから。
「あっ」
巫女ちゃんも困ってるのに。伸ばした白い手がおいてけぼりだよ。
「ガー公はいつもあんなもんだ。早く薬を持って帰るといい。それとありがとうな、俺の薬にお前さんの材料が使われてるんだろ?」
「いえいえ! こちらこそ材料が有っても調合出来なければ意味がありませんので本当に助かりました」
ガーちゃんは器用だからね、なんでもござれだよ?
「はい、あの……あの方に感謝を伝えてもらえませんか?」
「うん! 任せて。私がガーちゃんを抱き締めて感謝を伝えておくよ」
ついでに巫女ちゃんも抱いていいよね!
「ふぇぇぇ!? そ、そこまでやらなくてもだ、大丈夫ですから!」
安心して。ガーちゃんも満更でもないはず!
「おう、伝えておくから安心しな。帰りは気を付けてな」
「はい、ありがとうございました」
あああ~! 巫女ちゃんが足早に去っていく~!
「いや、薬を必要としてんだ。急いでるに決まってるだろ」
「だってあんなに可愛い娘なんだよ? せめて一緒にお風呂でも……」
「黙れ変態」
「んがっ!」
いたたたた! また折檻なの? そんなにガーちゃんは私のことが好きなの? も~仕方ないな~。
「ちっ、金棒すらノーダメージか」
はぁぁ、ガーちゃんはダークでも可愛いなぁ。
「お、おう、ガー公、調合が終わったのか?」
「うん、あとはしばらく時間が経てば完成だね。今夜にでも飲んでよ? 一回分しかないけど多分それでも平気だと思うから」
「お、おう、本当に出来るんだな。村では全然噂にすらなってなかったのに」
「ガーちゃんはすごいんだから! だって私のお供だからね!」
なんでも出来て当然なのです。えっへん。
「こいつの戯言はほっといて、まぁあえて隠してたからね。リノばあ様の仕事を奪いそうだし」
「……そうだな。みんなガー公に流れるな」
「でしょ? 面倒だし……っと電車はまだ平気だからご飯にしようよ、まだ混む前だし」
ご飯! そういえばお腹空っぽだ。
「おっ、そうだな~おすすめの店があるぞ」
ミノさんおすすめの店か~。
「お肉?」
「やめろ! そんな目で俺を見るな!」
ミノさんがおろおろしてる。なんで?
「そんなときは目潰しだよ」
ガーちゃんの鬼畜~! 結構痛いんだからね、あれ。そんなこんなで私たちは街を楽しむのであった。お肉~!
「お嬢……なんでこの街に来たのか忘れてないか?」
「いつもの事だよ」
「ガー公……お前苦労してんな」
「……いつもの事だよ」
もうひとつのお話も同時に書いてます。そっちが主力でこっちは息抜きですね。印象はかなり違うのでどうなんでしょう。