表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/20

第12話

 巻物は光り輝いたが、それからすぐに光は薄れていった。

 そして、巻物を見ると、『神の涙を捧げよ』という文字は消え、代わりに『炎と風よ、交われ』と書いてあった。

 なんだ? 

 どういう意味だ?

 とりあえず俺は池からあがった。

 

「ご主人様、どうでしたか?」


「巻物の謎は解けたが、また謎解きだ」


「『炎と風よ、交われ』? なんでしょうね、これ?」


「さっぱり分からん。話は変わるが、あの氷の塊はドラゴンが氷づけになったものだった」


「そうなのですか」


「見たことがないほど巨大なドラゴンだ。そのドラゴンの目から流れているものを巻物にかけるとこの文字が出てきた。ということはあれが本物の始祖竜なんだろうか?」


「分かりませんが、その可能性はありますね」


「魔族の神がこんなところで氷づけか」


 魔族たちが近寄らない場所で氷づけになっていたら、そりゃどこにいったか分からなくなるだろう。

 どうして氷づけにされているのだろう。

 何があったのか。

 パルメーナはこのことを知っているのだろうか。

 俺はパルメーナがこのことを知っていて、ここに連れてきたような気がした。

 巻物の謎を解かせようとしたのだろうと思った。

 あくまで勘なのだが、そう思わずにはいられなかった。

 勘であって確たる証拠があるわけでもないのだが。


「まさかこんなところに神様がいるなんて、わたくしも意外です」


「神様なら拝んでいかなくていいのか?」


「わたくしは神様のことが嫌いなので」


「そっか」


 おそらく子供の頃、魔王軍に売られ、散々苦労してきたのだろう。神に感謝したりすがったりする気にはなれないのだろうな。


 水を十分に汲んでから、俺たちは泉をあとにした。


 

 帰り道を歩きながら。


「俺さ、強くなりたい」


「唐突にどうされたんですか?」


「いや、いつも思ってることだけど強くなりたいなあって思って」


「それはレベルを上げたいということですか?」


「まあ、そういうことになるな」


「では、炎の塔で残っている冒険者を狩るというのはいかがでしょう?」


「エスリー、お前にだから正直に話すが俺は人間を直接殺したことはないし、なるべく殺したくはない」


「やはり、人間に対する仲間意識が残っていると?」


 心配そうに俺を見るエスリー。


「いや、俺は単に罪悪感にかられたくないというか……。とにかく人に直接手は下したくない」


「そうですか」


「そうなるとモンスターか魔族と戦うしかないわけだが、魔王様の部下の俺がモンスターや魔族を倒すわけにもいかないしな」


 レベルを上げるためには経験値というものが必要だ。だが、その経験値は相手を殺さないと手に入らないことになっている。

 強くなるためには相手が死ぬまで戦う必要があるのだ。

 

「困りましたね」


「ああ」


 そんな話をしていた時。

 突然、足元が爆発した。


「うわあああ!」

 

「きゃあああ!」


 爆発で上がった土煙で視界が遮られる。


「エスリー、大丈夫か?」


「はい、ご主人様」


 お互いの無事を確認したところで。


「よう」


 聞き覚えのある声がした。

 

「お前は!」


 土煙の中から姿を現したのは、あの青い騎士だった。


「今度こそ巻物を頂戴するぜ」


 また、こいつか。

 こんなところで待ち構えていたというのか。

 

「お前には渡さない!」


「渡さないって言うなら力ずくだ!」


 青い騎士は猛スピードで接近してくる。

 

「ご主人様!」


 エスリーが前に出ると騎士めがけて閃光を放つ。

 だが。


 騎士はすばやく飛び退いて避けてしまった。


「同じ技を2回も受けるか!」


「きゃっ!」


 エスリーを蹴飛ばし、一気に俺に迫った。

 切り結ぶ俺と騎士。

 俺は相手の剣圧に完全に押されている。

 吹っ飛ばされそうなのを足で地面にしがみついていた。

 

「ご主人様!」


 エスリーがなにか呪文を唱えると、俺の体が急激に熱くなってきた。力がみなぎってくる。どうやら、筋力強化の呪文らしい。青い騎士と俺の力が拮抗する。


「ちっ、余計な真似を」


 だが、剣の技術では俺が劣っている。

 どんどん厳しい態勢に追い込まれていく。

 なんとかしなければ。

 剣と剣のぶつかり合う音が激しさを増す。

 手がしびれてくる。

 感覚がなくなってくる。


「食らいやがれ!」


 俺の剣が吹き飛ばされた。

 同時に喉元に切っ先が突きつけられる。


「終わりだ。さっさと巻物をよこせ」


「ご主人様!」


「おっと、動くなよ、お嬢さん。変な呪文を唱えるのもなしだぜ」


 その時。急激に霧が濃くなってきた。


「ん? なんだ?」

 

 青い騎士もその異変に気づいたらしい。 

 カキーン。

 鋭い音ともに突然真っ二つに折れる青い騎士の剣。


「な、なにしやがった!? てめえ!」


 俺が何かしたのだと思ったようだが、何が起こったのか俺にも分からない。

 やがて霧がはれてくると、そこに。


 白い巨大なドラゴンが姿を現した。


「ここにモンスターがいるなんて聞いてないぜ」


 前ぶれなく、青い騎士は弾きとばされる。


「ぐああ!」


 しかし、すぐに態勢を立て直すと白いドラゴンに向かっていく騎士。


「俺の剣をへし折りやがったのはてめえか、このドラゴン野郎!」 


 だが。


「ぐおお!?」


 青い騎士は白いドラゴンに十分接近する前に再び吹き飛ばされる。


「くそ!!」


 青い騎士もさすがに何度もよく分からない力に翻弄されて不利と見たのか、逃げ出した。


 青い騎士が見えなくなると、白い竜はゆっくりと俺たちの方に近づいてきて。


「我らが聖地によくぞ戻った、復讐の子よ」


 ドラゴンはそう言ったのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ