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殺し屋の過ち学  作者: ニムゲ総長
1章/とびきり不幸なラッキーガール
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1. プロローグ/とびきり不幸なアンラッキーガール

四葉のクローバーを見つけるために、三つ葉のクローバーを踏みにじってはいけない。

幸せはそんな風に探すものじゃない。

 雲ひとつない春の空に半分の月が妖しく光る。その光が暗い夜道を、わずかに照らす。

 無機質なコンクリートブロックに囲われた細道、羽虫が光を求めて集まる淡い街灯、もう春が近いというのに、冬の気配を纏った肌寒いが、狭い路地を吹き枯らす。


 そんな路地を額に汗を光らせた少女が、どこへ向かっているのか。何か恐ろしいものでも見たのか、逃げるようにひた走る。


 膝が少し隠れるくらいまでに調整された紺色のチェックのスカートに白いYシャツ、深緑色のカーディガンを羽織った少女は長い髪を振り乱す。学校指定の紺色のかばんを持った手もほんのりと赤くなり、息も絶え絶えといった様子で大きく口を開けて、冷たい春の空気を少しでも多く肺に入れるように呼吸をしている。


 その後ろからは、サングラスに今流行の黒いマスクをした、体格の良い男がカーキのコートにフードをかぶり少女を追う。

手から見える長い長い刃物が月光を反射させ、暗い路地をちらちらと照らす。


 二人の距離はどんどん距離は縮まっていく。

もうすぐ後ろまで来たと思ったときに、恐怖からか疲れからか、少女の足がもつれその場で大きく転倒し、大きく鞄が前方に投げ出される。弾みで、携帯電話が少女のポケットから地面に落ちる。

細い腕を伸ばし、それを手に取りボタンを押して、どこかへ電話をかける。

震えながら、携帯を耳元にやり、相手が出るのを祈りながら待つ。


「もしもし、もしもし、お母さん、お母さん!!!」


 無慈悲なコール音の最中にも関わらず、母親を呼び続ける少女。

もう時間が無いことを察しているのか。つながっていないことがわかっているのも関わらず、泣きながら声を出し続ける。


 そのすぐ後ろで少女の様子を見ていた男が、黒いマスクの下で赤い口を開いて笑みを浮かべ、ゆっくりと腕を高く振り上げる。

 そして、一瞬にして振り向いた少女の胸元目掛け、腕を振り下ろす。


 少女の悲鳴が路地の壁に反射し、闇を切り裂く。しかし、その声を聞く人間は目の前の男だけであった。闇に光る血液が少女の制服をや体、髪の毛を赤く染め上げ、光を失った瞳は、空に映った月だけを鏡の様に映しこむ。


 「はいはい、もしもし、ユキちゃん。どうしたの」


つながった携帯電話から、暢気そうな母親の声が聞こえる。

声の奥からは、つけているテレビの音や、夕食の準備だろう何かを焼いている音が聞こえる。


 「おかあさ、・・・・・・」


 最後の力を振り絞り、声を出そうとするも、

母親を呼ぶ前にする前に、少女の首筋に刃物が突き刺さる。

 大粒の涙をこぼし、顔をゆがめ、恐怖でいっぱいの表情を浮かべながら、手を空に掲げて、何かを掴もうして、少女の体は動かなくなり、心臓を止めた。右手に持っていた携帯電話は、力を失った掌から胸元へと滑り落ちた。


 「もう、ユキちゃんったら。なんでもないなら切るわよ。早く帰って来なさい」


 聞く相手がいない、母親の声が虚しく闇夜に木霊する。

それを見届けた男は、少女の死体を抱えて闇の中へ消えていく。

残されたのは、少女が抱えていえた鞄に携帯電話、そして、赤く染まった血溜まりだけだった。

 こんにちは、このたびは「殺し屋の過学」第一話を見ていただきありがとうございます。GW中にふと、この物語が頭に浮かび、ようやくGWぎりぎりに完成させることができました。自分としては、悪くないできだと思いますが、読者の皆様から見ればまだまだかもしれません。

 本作品はプロローグからエピローグまで完成しておりますので、引き続きご覧頂き、エピローグでお会いできれば幸いです。


 また、少ないながらも各話に伏線を置いているので、どこでそれが回収されるかを楽しみにして詠んでいくと、より話が楽しめると思います。


 それでは皆様、エピローグでお会いできることを楽しみにしています。

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