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鏡の中の隠り世  作者: ゆう
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第一話

ゆうです。一気にかいて一気に投稿していきますのでなにとぞよろしくお願いします

第一話


また、あの夢だ。

成人式当日。 はっと目を覚まし時間を見ると午前0時。

ああ、またあの夢を見たのか…と。

朝の5時にホテルの着付けに行かなくてはいけないと早く寝たのが仇になった。

自分の晴れ姿の為にと今まで努力した。その努力がすべて無駄になりそうな勢いで嫌な夢を見た。

いつもこの夢を見て起きるときは何か良く無い事が起きている。

はぁ・・・とため息をついて自室から出るとリビングに向かい、

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、コクッと大きい一口を飲み干した。

もう今こんな感じじゃ寝付けないだろうなぁ…と思いながらペットボトルを持ちながら自室に戻り布団に入り、

あの夢の事を思い出す。

あの声は、あの言葉は、間違いなく私に言っている。

いつからか見始めた夢…

何が原因で、何が始まりだったのか、

夢の中の私はなぜあんなに重い気分なのだろう。

「私誰かに恨まれることしたかなぁ…」

自分が見る夢について悩み、考えるが「良く分かんないなぁ…」とつぶやいて

そのことを考えながらまぶたを閉じるとぽつぽつと眠りについた。



「起きなさい!」

強いその声と同時に頬をペチペチ叩かれた。

「あんた今日成人式でしょ!遅れるわよ!!!!」

お母さんにそう強く起こされ、

(あ、今日は成人式の日だった)

と思いだし、私はベッドからのそのそと崩れる様に起きると枕元に置いてあるミネラルウォーターを一口二口のどに流し込むと

洗面台に行き、顔を洗って歯磨きをして前日に言われていた前開きワンピースを着てお母さんの待つ車に乗り込んだ。


ギリギリ準備会場につき、さっさとしろと言わんばかりに席に通され、ヘアメイクをしようとしていた時に私の手に持っている携帯が鳴った。

「ユリちゃん、今電話できる?? とってもいい話があるの!!」

そういってメールを送ってきた相手はミツキ。

ミツキとは10年来の仲で彼女は私と同じ成人式には来られないと言っていた。

そんな彼女がこんな朝早く連絡してきたことの意味は多分起きて暇だから送ってきたのだろう。

くだらない事かなぁ・・なんて一人で自己完結をしてあしらうように

「おはよう。いきなりどうしたの??」

と少しそっけなかったかなと思いながら彼女に返信をした。

すると思いのほか早くミツキからの返信は早くて

「おはよう!!!これは電話で言わなきゃ私は気が済まないの、だから準備してるだろうし終わったら電話して!」

そう彼女から返ってきたので、思ったよりも大事かな…なんて思いながら

「妊娠でもしたの??」

冗談半分で彼女に返したメール。

これは少し、いや大分嫌味なメールを返したな…なんて心の中で笑っていると

やはり彼女からのレスポンスは早く

「違うわ!!!ユリちゃん私がモテないの知っていてわざとそうゆう風に言っているでしょ、今も彼氏いないのに何で妊娠するんだバカ!!!」

と予想どうりの返信が返ってきた。

彼女は、まったくモテない。

可愛くてとても女の子らしいのに、なぜか男の方が引いてしまう事が多い。

高校の時に彼女に紹介した男友達も何故か「あの子は駄目だ」と言っていた。

後々男友達に何故か聞いてみたら

「俺ら男どもが触って良い女の子じゃない」

そう言っていたが、私には良く分からなかった。

自分たちが高校生だった時を思い出しながらそんなこともあったねぇ…。

なんてそんなことを考えてるうちにあっという間に着付けが終わった。

最初の段階では2時間と言われていたのに結局かかった時間は1時間。

朝5時なので余計早く終わったのだろうな。

早くミツキに電話しなきゃ…と思いながらも母に迎え来てとメールを送り

すぐに母と合流すると自分の一生に一度晴れ着の着ずらさに苦戦しながら車に乗り込んだ。

そしてミツキに電話を掛ける。

1コール2コールしてすぐミツキの元気な声が耳に入った。

「もしもしー!!ユリちゃん!!聞いて!良い事!」

電話が通じて開口一番に元気な声が聞こえて、

朝のテンションには少しきついが、私もそれにこたえる。

「どうしたの。朝早くに。何か大変な事でもあったの?」

「大変なこと!えっとね、あー、でもわるいことじゃないの!」

「なにさ、早く教えてよ。」

中々教えてくれないミツキ。 早くしろ言わんばかりにミツキをせかす私。

「実はね…私のおばあちゃんが赤梅に居るじゃない?」

「うん。でもミツキは今日は違うところで成人式でしょ?」

「えっとね~それがおばあちゃんが、赤梅の成人式、はがきを取り寄せてくれたの!!!!」

ミツキの言葉に驚きながら私は嬉しさを隠せずに

「本当に?!嬉しい!」

そういって二人で喜んでいると

電話の向こう側に居るミツキから困った声がした。

「あぁ~もう。この時間コンビニのATMやってないの?!」

若干苛立ちを覚えているその声にどうしたのと問いかけると7時半から予約しているヘアメイク代の料金が

銀行から下せないのだという。

何のためのATMなんだ?と思いながらそれを母に言うと

じゃあ立て替えてあげると言ってまた帰って居た道を戻り、ミツキの所に向かった。

大体5分ちょっとの所で戻ったのでミツキに会うのに時間はかからなかった。

駅のロータリーで待ち合わせをしていると、満面の笑みで手を振りながら走ってこっちに来る。

寒い寒いと言いながら彼女は車に近づいて助手席に乗っている私を見るなり

「あれ、いつもと顔が違う…」

なんてとぼけたように言う。

「そりゃそうでしょ…5時から準備したわ…」

眠い目こすったんだから!と言わんばかりに欠伸をする。

そんな話をしながら彼女の行く美容院に着いて

彼女のヘアメイクに2時間かかったのは言うまでもない。


待たされて不機嫌な私。私よりも早起きをして眠いと言っている母。髪の毛をセットしてもらって上機嫌なミツキ。

はぁ…とため息をつきながら煙草の箱を見ると半分くらい無くなった残りの煙草が顔を出した。

朝買ったんだけどなぁ…。そう思いながらカチッとカプセルを潰しライターで火をつける。

たまったため息と肺に入った紫煙を口から吐き出した。

そんな自分の中でのもやもや煙い思いをかき消すように自分の好きな音楽が流れた。

「ユリちゃん、待たせてごめんね。これ聞いて機嫌直してよお。」

そういったミツキにこりゃまたやられたと言わんばかりにふっと笑ってもう怒ってないよと微笑みかける、

自分の好きな歌に乗ってるうちに赤梅に着くと彼女の祖母の家に送り届け、また迎えに来るからと伝えると、

私は母とやっと家に着くなと笑った。


家に着き携帯の充電をしながら彼女の連絡を待っていたが、そんな長く時間はかからなかったみたいで30分ですぐに連絡がきた。

自分の煙草と携帯、成人式の招待状を着物のセットで付いてきたカバンに入れる。

やっと成人式の時間か…と思いながらまだ眠いと言っている自分の目はまつ毛エクステの上からしたマスカラが塗ってあるのでぱちくりぱちくり目を瞬きさせて睡魔を誤魔化した。

ミツキを迎えに行き、そのまま会場に着くとやはりいろんな人がいて、みんな女の子はかわいらしく着物を身にまとっていた。

「うわぁ~…人がいっぱい…」

人がたくさんいるのに圧倒されているミツキを横目に私は知っている子たちに声をかけられ話ながら会場に入る。

「うちらって小学校ごとに席付くの…?」

人混みが苦手なミツキは今にも帰りたいと言わんばかりの顔をしながら私に聞いてきた。

「いや、確か中学校ごとだった気がする」

「クラスごとにとかじゃないよね…」

昔中学校でいじめを受けていた彼女は嫌だ嫌だと言って私のそばを離れようとはしない。

「大丈夫でしょ。流石に…。私も中学校は友達いないし。」

小中高と一緒だったミツキ。

中学校の時、私はミツキを助けてあげる事は出来なく、高校になってまともに話をするようになった。

私の知らないところで泣いていたと思うと今でも胸が痛い。

「ユリじゃん―!久しぶり!元気?」

みんなにそうやって私は話しかけられるが、彼女に話しかけてくる友達は少ない。

「同窓会来るの?」

隣の友達に話しかけられミツキを気にしていると、その子はミツキの存在に気づき

「あー…えっとミツキ…ちゃん…?だっけ」

と言って私にした問いと同じ事をミツキにも聞いた。

「えっと…高校の同窓会なら行くよぉ。」

そういって話をしながら私の顔を見た。

人懐っこいミツキの筈なのに中学校の時にあったことがよほど辛かったのが詰まりながら話をする。

「ええ~残念、ユリは来る??」

ミツキはあたかもおマケの様な感じで私に笑いかけるとそういった。

「んー。私も高校かなぁ…中学校って今でも仲のいい子ってミツキくらいだし、ミツキが高校の行くならそっちに流れるかなぁ…」

そういってあしらう。

面倒。そう言ってしまいたいが我慢しながら式が始まるのもすぐだと自分に言い聞かせた。

「一緒に来たらいいのに~」

私が来ない事を残念そうに彼女はつぶやいた。

何か言っている彼女をシカトしながら式は始まった。

つまんないなぁと思っているのも束の間、式自体はすぐに終わった。

「これにて式典は終了いたします。なお、この後小学校ごとに分かれて小学生の時に埋めたタイムカプセルを皆さんに受け取ってもらいます」

小学生の時のタイムカプセル…。そんなのやったっけ…? 私は覚えておらず、人だかりのできる行列にミツキと並んだ。

受付の人の仕事が早いのか、順番はすぐに回ってきてタイムカプセルを受け取りそのまま会場を出ると成人式では浮きまくりの私服姿の見慣れた顔がそろっていた。


「お!!ユリ!ミツキ!!」

私たちを呼んで大きく手を振るのはショウタ。

「ひ、久しぶりだね!」

そういってにこにこと笑いかけてくるのはユウキ。

彼らは小学校、高校と一緒になった男友達だ。

ショウタの方は親の単身赴任で海外へ行ったが、3年で帰ってきたので私とミツキが行っていた高校を受験した。

ユウキは中学受験をして高校受験をしなくていいはずだったのに、ショウタが戻ってくると聞いてわざわざ違う高校を受験したんだそうな。

なのでみんな小学校高校は一緒だが、この2人と中学校は一緒ではないのだ。

高校に入ってからは偶然3年間クラスも一緒。 ずっと仲良し4人組だったのだ。

同窓会はこの4人でやろうと話をしていた。

でもこの2人は成人式には来ないと言っていた。

中学校には縁は無い!と言っていたのでミツキと二人で行こうか、と大分前に話をしたのを覚えている。

なのになんで来たのだろう…・?

「ショウタ君! ユウキ君も! どうしたの??来ないって言っていたから会えると思ってなかったよ~」

ミツキはそういって2人にニコニコしながら話をすると、彼らは

「一生に一度の晴れ姿でどれだけ変わるか見てみてえなって話してたんだよ、なぁ、ユウキ。」

そういってじろじろと私たちをなめる様に見ているショウタが答え、それに続いてユウキが

「ああ。 一番旬な時期を見納めとかなきゃ気が済まなかったよ」

笑いながらそう答えた

「旬な時期って…これから旬なんだよ!」

そんな悪態をつく私。

「そうは見えねえけどな。このへんのしわとか…」

そんなことを言っているショウタの顔に一発お見舞いをくれて

今日はどこ行く?と二人に問いかける。

「今日はどこも混んでそうだし、おうちでご飯食べよお」

鍋がいいかなと答えるユウキにじゃぁキムチにしようと言ってくるショウタ。

鍋なのはいいんだが肝心な場所はどこにするのだろう…?

「ねぇ、ミツキ、どこでやるの?」

そういって問いかける私にミツキはうーん、と悩みながら、

「ユリちゃんの家でいいんじゃないかなぁ・・?」

恐る恐る答えたミツキに便乗した二人がいいね!!と親指を立てて答える。

私の意見はなしかい。

うなだれる私に向かってミツキがごめんねと言いたそうな顔をしてでも楽しそうにニコニコしながら私に近寄ってくると

楽しみだね。と笑った。





スーパーに寄り、鍋の具材、適当な酒、お菓子などを買っていかにもこれから宴会しますと言わんばかりの量のものを買って私の家に向かった。

家に着くと、私とミツキで鍋の準備をして男どもは先に飲み始めていた。

後ろでワイワイやっている声に耳を澄ませながら

「あいつらあんなに飲んで平気なのかね…」

私はため息をつきながらそういうとミツキが笑いながら

「ふふふ。にぎやかの久しぶりだからうれしい」

そういっていつもの笑みで私にそういった。

私の言ってることはそうじゃないんだけどなぁ…



「鍋マダー?」


「「「「え?」」」」


4人のうちだれの声でもない少し甲高い声がした。

その声を聴くと同時に私たちの空間が止まるような、一瞬にして空気が凍るような空気になった。


「おいおい、家族のだれか帰ってきたんじゃねえのか?」

ごまかすように笑っているショウタ。顔は笑っているが目が笑えていない。

「誰の声…?」

ミツキが心配そうに…でも少しおびえた顔で私たちを見た。

ぐつぐつと鍋が煮えたぎる音が静寂を支配する。

「…ここって心霊スポット?」

ユウキが笑いながら言った。

彼が笑っているのはたぶんお酒のせいだろう、

「気にしなくていいんじゃない?きっと空耳だよ…」

得体の知れない声も空耳だと言い聞かせた。


「飯まだか。」

ユウキが言った。

「うん。もう食べれるから食べようか。」

耳から離れない声、得体のしれない声、それは私が夢で聞いていたあの声といっしょだった。きっと夢のことが一日頭から離れないせいだと、自分の中で言い聞かせた。

机の上になべを持っていき、おわんと箸を持って

「食べよ食べよ。 今日は久しぶりにみんなで集まったんだから。」

そういって声が聞こえたことをかき消すように私はみんなに笑いかけた。



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