発掘現場
御口リョオは本沢教授たちとともに
鳥沢村の発掘現場に泊まり込んでいた。
突然の火山噴火。
危ないとは聞いてはいたが。
高台にあるため溶岩の心配はないが
火山灰がここにも降り注いでいる。
弥生も火山噴火の取材のため徹夜。
火山噴火がよほど怖いのか
顔色は青い。
カメラマンの空口もいる。
リョオは教授とともに発掘現場の見回りに出ていた。
深夜。
炎龍山は真っ赤な溶岩を吐き出し
暗闇の中に不気味に浮かび上がっている。
「これじゃ、またいつ発掘が再開できるか
わからないな」本沢が残念そうに。
「火山学者の先生にきいても
要領を得ませんし」リョオ。
何でも地下深くのマントル内にある
プルーム内の核物質の量によるとか
その核分裂が-----メルトダウンが-----
おさまらない限り-----
という事らしい。
地震波による探査では。
遠くで妙な鳴き声のような音が響いた。
二人ともギョッとしたような表情で
お互い顔を見合わせた。
「火山が噴火すると-----
あんな音が出るのかね」
本沢が幾分ぎこちなく。
「さあ、専門外ですので」リョオ。
妙な鳴き声のような音は二度三度。
さらに空へ向け、光の帯が-----伸びていく。
二人とも真っ青。
弥生の話を聞いた後では無理もない。
そのような事
あるはずがないのは分かっていても-----。
「まさか先生」リョオ。
「そんな馬鹿な。
まさか君-----怪獣なんて」本沢。苦笑い。
「そうですね」リョオも笑った。
その時。
助手の一人の身月が慌てて駆け寄って来た。
「先生。大変です。
カイジュウです。
カイジュウ」
二人が振り返る。
「カイジュウ?」
「出ました。
やっぱり。
今テレビで」
助手も弥生の話は聞いている。
しかし。
「テレビで。
〇〇カメラか何かじゃないのか」本沢。
「いえ、違います」
二人はテレビのあるプレハブへ。
テレビには。
「ガイグか」本沢。
「そっくりですか。
あの化石に。
それに洞窟の絵にも」リョオ。
「こっちは」本沢。
「ザイドですか」身月。
「そのようだ」
「どうしましょう」身月もどうしていいのかわからない。
近くの村の駐在所の巡査や
村役場の職員も慌てて発掘現場へ。
彼らは皆、この恐竜の化石を見て知っている。
弥生も駆け付けて来た。
青い顔で言葉もない。
「先生。
どうしましょう」
全員、わけがわからない。
「化石の恐竜とテレビに出ていた奴。
そっくりで。
我々もどうしたらいいのかj。
一応、私の上司には報告しておいたのですが」巡査も。
「いえ、我々も今テレビを見て、
驚いているしだいで。
全く寝耳に水で」本沢も。
「化石の恐竜が生き返って暴れ出したとか」
「そんな-----。
化石はそのままありますよ。
それに大きさが。
向こうの方がはるかに大きいですよ」
「ですが-----。
何せ怪獣ですし-----巨大化して。
あっ、いえ。
そうですね。
そんな事。
こっちは小さいですか。
気が付きませんでした。
動揺して。
それに化石はそのままですか」
怪獣たるモノ。
テレビや映画では“何でもあり”だが
そんな事あるわけないか。
「まさか先生。
あの化石の恐竜。
奴の子供か何かで
取り返しに来たとかで」巡査。
「それじゃあ先生。
ここへ来るのでは」助手の身月。
「じゃあ。早く親に返さないと大変なことに」巡査。
今度はあのマンガのあのパターンか。
あり得る-----か。
となると今後の展開は-----
あの化石の怪獣が生き返って。
いや、死体を取り返しにのパターンかな。
マサカ。
現実に出現した怪獣と
マンガの怪獣は違うんだ。
現実に怪獣が出て来ているのに-----
何か現実感が-----とぼしいのは-----
なぜだろう。
本沢もリョオも顔を見合わせた。
「それは-----ないでしょう。
あの化石はどう考えても
死んでから数百万年は経っていますし」リョオ。
「ですが相手は怪獣でしょう。
百万年やそこらは生きる奴がいるかも」職員。
「それは-----ありますか。
いや、マサカ。
そんな事」リョオは慌てて否定した。
「それについては-----江戸時代にも
もっと前にも何度も出て来ているようですし-----
それならばその時に
取り返しているでしょうし」ぶつぶつと。
「なるほど」
しかし怪獣だから-----一抹の。
「それで駐在さん。
上司へ連絡したと言っていましたが。
ここの化石の事を」本沢。
「はい。上司の方も一応調べに来るとは
いていましたが。
それが県警本部へ上がって。
それから-----。
国へ伝わるには数か月-----
くらいは必要かと」巡査。自信はない。
「そんな。
その頃にはあのガイグは-----」職員。
「とおの昔に退治されて
それこそ昔話になっていますか」本沢。
テレビの報道番組が
自衛隊の出動を告げていた。
“ガイグ”は名古屋方面に迫っているとのこと。
もう一頭の“ザイド”は地下に潜ったまま。
「どうしましょう」リョオ。
「どうするって」本沢。
「私は行ってみようかと」弥生。
すでに火山取材に来ていた
他の新聞社の者たちは
怪獣の取材に出発したらしい。
彼らとは取材場所が離れていたため
ここからではわからなかったが。
本社からそのような連絡も入っていた。
弥生は本沢たちをマークするように
言われているらしい。
しかし。
「怪獣をかね」本沢。
「はい」弥生。
「先生。私も。
あの生物の何らかの痕跡を
発見できるかもしれませんし」リョオ。
「それは-----あるか」
この化石も気になる。
「ここをこのままにしておくのは
心配だが。
私も行こう」
自動車は出発した。