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大怪獣 V ガイグ  作者: 維己起邦
2/18

南北大学


 東京都。

 南北大学。

 古生物学研究室。

 「先生。早速ですが」

 ニュース配信サイト。

 インターネットニュース徳東の記者虹起にじき弥生は

取材のためカメラマンの空口そらぐちとともに

ここを訪れていた。

 古生物学において

新しい方法論が開発されたという情報を得たためだ。

 「先生が考えられた新しい方法というのは

具体的にどのようなものなのでしょうか」弥生。

 そう聞かれた古生物研究室教授の本沢は

気難しそうな表情もそのままに口を開いた。

 まあ大学の先生というのは皆講義のプロだ。

 だからこの場合

“重い口”を開くという表現は当てはまらない。

 しゃべる、しゃべる。

 特に自らの業績を

世の中に知ってもらえるとなればなおさらだ。

 気難しい人も多いが-----それはそれなりにだ。

 マスコミさん-----いつでも来て

-----という人も多い。

 「いや、大したことはないよ。

 現在行われている古生物学の技法に、

化学分析の技法を導入しただけの事だよ。

 物理分析のね。

 今までの古生物学はただ単に

骨の化石を掘り出して

それに肉付けして

それを年代順に分類していくだけのものだったしね。

 そこに最新科学を導入した。

 私はその点門外漢もんがいかんでよくわからないんだが-----

詳しくは御口みぐち准教授に聞いてくれ」

 本沢は御口リョオへと目を向けた。

 御口はちょうど新しく導入された機器で

化石の分析をしているところだった。

 弥生は本沢と御口のもとへ。

 「御口君。

こちらインターネットニュース徳東の-----エー」

 「虹起です」

 空口も名乗った。

 「そう、虹起さんと空口さん。

 取材で来られた。

 この機器について説明してあげてくれ」

 御口は顔をあげた。

 「アー。例の。

 昨日お話のあった」

 「そう」

 御口は説明をはじめた。

 「何からはじめますか。

 そうそう。

 まず-----エー。

 化石がどのようにしてできるか

ご存知ですか」

 「家、私は」

 弥生は気まずそうに。

 そのくらいの下調べはしておくのだった。

 御口はニコリと。

 「化石というのは一般的に」

  まあ諸説あるが。

 「大昔の生き物が死んで

その上に泥や砂が覆いかぶさり、

土中に含まれた水の中の鉱物などが

骨の隙間などにしみ込み-----

その後骨などが微生物などに

分解されてできた化合物と結合して固められ

石化してできたと考えられています」御口。

 まあ、あまり微生物の活動が

活発でない状態に置かれた方がいいのか。

 微生物によって分解される前に-----

原形をとどめた状態で-----

〇〇によって固まるということだろう。

 それにはいったい何年かかるのか。

 どのくらいの年月

原形をとどめていなければならないのか。

 今後の研究課題だ。

 骨は何年くらいもつのか。

 肉はミイラ化でもしなければ-----か。

 土の中では分解速度はどうなるのだろうか。

 深さによっても違うのか。

 どのような土砂で埋められたのか。

 例えば火山灰等で埋められればどうなるのか。 

 どういう微生物の排泄物と

どういう鉱物なりなんなりが化合すれば

-----化石化するのか-----

調べてみなければ。

 その微生物は

地下何メートルくらいに存在しているのだろうか。

 ある特定の微生物が関与しているならば

その微生物にとり理想的な環境とは

どういうものなのか。 

 これをどう説明するか。

 「-----」弥生。

 急に言われても。

 「私どもはその過程を。

 微生物に分解されて化石となる過程を

物理分析の技法で調べられないものかと考えました。

 普通、生物の身体は骨にしても肉にしても

全て微生物が分解して何も残らないものです。

 それがどういう条件でなら。

 さらにどういう過程を経て

残るのかを調べたんですよ。

 その結果。

 生物の身体が微生物に分解される過程で

ある特定の微生物の排泄物とケイ素酸等が反応固化し

それが化石として残っているのではないかと

仮定したわけです。

 つまり土中の鉱物等を固化させることのできる

排泄物をつくれる微生物がポイントですか。

 それを化学的に分析して

どのような構造になっているかを」

 「なるほど。

 微生物に分解される過程で

土中の成分と化学反応を起こして化石に。

 ですが骨しか残らないのでしょ」弥生。

 「いえ、大部分は-----そうですが」御口はニヤリと。 

 「たまにといいますか

まれに内臓や皮膚も残ります。

 土の層が皮膚の形に

へこんでいるといった方がいいですか。

 そうですね。先生」 

 御口リョオは本沢に。

 「そう、骨はカルシウムが多く含まれているので

残りやすいんだよ。

 だからカルシウムも大きく関係しているということだ」本沢も。

 「そういうことですか」弥生。

 「そこで私のやっている物理分析が出てくるわけです。

 微生物によって分解されたのなら

目に見えない形で

土の中に骨以外の皮膚や内臓の痕跡が

残っていないかと考えたわけです。

 土の中にもともとあった成分と結合した形でね。

 もちろんそれ以上分解されない形でね。

 例えば心臓が肺が肝臓が微生物に分解された場合、

その微生物の排泄物ですか。

 その成分から器官を特定できないか。 

 皮膚の色や

うろこなのか羽根なのかどうなのかも

分解過程においてでてくる排泄物を-----

どういう形で土中の鉱物等と結合し

化石の中に残っているのかわかりませんが-----

調べることにより特定できないかとね。

 それに軟骨のつき方が分かれば

恐竜が実際どのような姿勢だったかも

わかりますしね。

 実際、今の恐竜の復元標本を見ると

おかしなモノもありますよ。

 四足歩行恐竜でね。

 普通四足歩行の場合

前足の付け根の位置の方が

後ろ足のそれよりも高い位置にあるのでしょう。

 それが後ろ足の骨盤の位置の方が

非常に高いものもある。 

 鳥盤目か龍盤目かは知らないが-----

前足の構造も歩くためというよりも

つかむためにあるのではという形のものまでいる。

 例えば〇〇〇とか△△△とか。

 あれはどうなっているのか」

 「それは-----」よくわからない。

 「恐竜の色も鱗か羽根が生えていたかどうかも

わかるわけですか」

 「それに恐竜が変温か恒温かも。

 その違いはご存知のように

体温調節機能にありますが

人の場合、体温が下がってくると

熱を発生させて体温の低下を防ぐ機能があります。

 それに必要な酵素なり何なりの有無で

判断しようというモノです。

 ただしそういう痕跡が残っていればの話ですがね。

 数千万年ですから」御口は-----。

 痕跡も何もかも完全に分解されて-----

というケースがほとんどだ。

 「それと熱の発生に我々と同じような酵素を

使っていればの話しですし」

 「恒温か変温かもですか」

 「はい。もしこの考え方が正しければです。

 しかし研究は-----ちょに就いたばかりで

まだそこまでは。

 わからない事も多いですし。

 微生物関係の先生にも御協力いただいて

地道にやっていく必要があります。

 ですが-----今までの古生物学は化石の骨ですか

それに注目していただけです。

 まあ足跡というモノもありますが。

 しかしこの方法が確立すれば

骨の周囲の土から肉の部分の痕跡を見つけて

さらに詳しい分析ができるようにもなるかも知れません」

 「骨よりも骨の周囲の土にポイントが。

 それでこの装置は」弥生。

 「これは。

 まだ研究段階なのですが-----

医用に使うCTスキャンを改良したものなのですが。

 医用では人に使うために

X線を人体に影響に出ない範囲で使っています。

 しかしこれは-----。

 X線を照射することにより

化石内部に含まれた生物の分解された痕跡から

二次X線が出てきます。

 原子の種類によってそれぞれ特有のX線のスペクトルが。

 それを解析することにより

内臓や皮膚の痕跡を発見しようというものです。

 蛍光けいこうX線スペクトル検査と

CTスキャンを組み合わせたようなものですが。

 ですがX線を照てても全ての原子から

二次X線が外部へ出てくるわけではありませんので。

 特に原子量の低い原子からは

波長の長い光しか出て来ませんし。

 それでは周りの物質を透過して

表面まで出て来れませんので

計測できませんし。

 ですから相当エネルギーの高い

X線を照てる必要があります。

 放射光とCTスキャンを組み合わせれば-----もっと-----」

 「たいしたものですね」弥生。

 「いえ。

 しかし岩石にもともとあった

成分との関係もありますし。

 どのような微生物に分解されたかとか-----

もこれからの研究課題ですし。

 それにこの装置の場合

解像度がそれほどよくはないので。

 大雑把に調べて。

 あとは-----。

 土の部分を崩さないように取り出して-----

骨の周囲の土をです-----

輪切りにして蛍光X線スペクトル検査で

さらに詳しく調べる必要もあります。

 このCTが完成する以前は

この方法でやっていたのですが-----

それが基礎データ集めにもなりましたし

-----まあいいですか。

 これは。

 それに今もその方法に頼っていますし。

 他にも。どうして骨は化石として残りやすく

肉や皮膚は残りにくいのかも調べる必要もあります。

 当然といえば当然なのですが

それを調べるのも科学ですし。

微生物の関係で」

 「-----」弥生。

 よくわからないらしい。

 その時。

 助手の一人が研究室に入って来た。

 「先生。

 自動車クルマの準備ができました」

 本沢が振り返る。

 「虹起さん。

 私はこれから少し用事があるので」本沢。

 だいぶ時間もたっている。

 「どこかへお出かけですか」弥生。

 「いや、少し」

 「それは-----お忙しいところを

お時間をいただきまして。

 では私どもはこれで。

 ですがまたお伺いさせていただいても

よろしいでしょうか」弥生。

 「それはもちろんですよ。

 あなたなら大歓迎だ」本沢。

 「それでどちらへですか。

 例の鳥沢とりさわ村で発見されたとかいう

化石の調査ですか」

 「よくご存じで」

 別に隠す必要もない。

 「はい。私どももこれからそちらに取材に

行くつもりでしたので」弥生。

 「それで-----私たちの取材に」御口。

 「では一緒に行きますか」本沢が。

 「よろしければ-----ぜひ」

 弥生が即座に答えた。

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